爆乳美女1000人、救ってみせる。異世界帰りの俺が!
鏡銀鉢
第1話 異世界帰りの俺、爆乳ゴーレムメイドと地球無双を始める
「五年ぶりの我が家だぜぇ♪」
ゲームのポスターが貼られた白い壁紙に緑色の絨毯。
小学生の頃から愛用している学習机の隣に並ぶパソコンデスク。
どれもこれも、異世界へ行った直後と埃の位置まで変わらないままだ。
「だけど俺自身は……」
スマホのインカメラで、スリーピーススーツの上に乗った顔を確認すると、肌はむしろ若返っている。
「ハイヒューマンを超えたら老化しないからな。赤ちゃん顔負けだぜ」
白い歯を見せてキメ顔を光らせる。
「私と同じ、永久のぴちぴちプルンでございますね」
無感動な声。画面の端に、えらいクール美人が映った。
「クロエ?」
「はい、クロエです」
振り返ると、そこにはプラチナよりなお美しい、輝く白銀色のショートヘアから横髪だけを伸ばしたヒロインカットのメイドさんが立っていた。
顔立ちはAI美少女のような2・5次元フェイスで、俺好みの無表情系ヒロイン然とした半眼の冷たい眼差しは見つめるだけで胸がドキドキしてくる。
胸と言えば、彼女のソレはスイカを二つ横に並べたようなサイズであり、メイド服の乳袋が今にもハチ切れそうだ。一日中でも視界に入れておきたいね。
「なんでいるんだ?」
右目で爆乳を、左目で彼女の瞳を見つめながら尋ねた。
「何故いないとお思いで? 私のマスターは創造主である黒瀬蓮司様、ただお一人様でございますれば、蓮司様の行くところならたとえ火の中、水の中、そして地球や天界、最近気になるあの子のスカートの中でもお供するのが役目です」
「最後のはお前の願望だよな?」
「はい。そして私のスカートの中は黒のストリングパンティ&ストッキングwithガーターベルトでございます」
ばさり「なるほど確かに。でも普通こういう時って地球に帰ったら全ての能力を失ってひと夏の不思議な体験を胸に少年は大人になるもんじゃないのか?」
光魔法を使うと異世界同様、スカートの中が最適の光量に満たされた。
魔力は満タン。黒のオリハルコンシルク製のパンツの光沢も満点だ。浮き上がった腰骨の上に引っかかるヒモが、ムチっとお肉に食い込んでいるのがエロい。
「そんな20年前の懐古主義アニメみたいな展開流行りませんよ。今のトレンドは異世界帰りの俺は地球で無双しちゃうんだぜでございます」
「およ? なんでこっちの流行知っているんだよ?」
頭上から降り注ぐ声に首を傾げながら、俺は絶景を楽しむ。白い肌と黒い布地のコントラストが素晴らしい。
「三分前からWiFi電波に繋いでいるからです。現在、100テラバイトほどのテキストデータと無料動画にアクセス済みでございます」
スカート越しの声は棒読みでありながら、どこか子供が親に満点のテストを自慢するような響きがあった。実に可愛らしい。
「わお有能♪」
「それに、ワタクシの爆乳を手放せないのは蓮司様では?」
また、ちょっと誇らしげだった。
「わかってるぅ♪」
スカートの中は、クロエの甘い香りでいっぱいだ。視界はガーターベルトとニーソックスの食い込むムチムチの太ももでいっぱい。頭の中はクロエのおっぱいでいっぱい。今は昼間だけど、夜が待ちきれない。いっそこのまま……。
「というよりも、神ですら今の蓮司様から能力を簒奪できません」
「……ハイヒューマン以上だからな」
俺はクロエのスカートから手を離すと、彼女を見上げた。
スラリとした体には、あまりに巨大な二つのふくらみ。その間から、一切の感情を映さない、サファイア色の瞳が冷酷な視線を降らせてくる。
「なので貴方様は【千の技と魔法】【万のスキルとジョブ】【億の武具とアイテム】【兆のレベル】【大陸一つ分の資源】【そして現人神の体と魂】を持ったままでございます。どうしますか? 貴方様がその気なら、地球なんて小一時間で征服できますよ?」
まるで悪魔契約のような甘美な響きと冷酷な声音。
かつて、多くの老若男女が迫られた究極の選択に、俺はうすら笑いを浮かべて立ち上がった。
ぱちん。
「ッ?」
額にデコピンを喰らったクロエは、萌え要素である無表情をぱちくりさせて固まった。
「ばーか。んなことして何の意味があるんだよ。そもそも世界なんて征服したって管理が面倒じゃん。異世界じゃ権力者トレンドの世界征服なんて、こっちの世界じゃネタ扱いだぜ?」
鼻で笑ってから、「【世界征服理由】と【征服したあとどうするの?】で検索してみな」と煽った。
「だいたい俺は勇者様なんだぜ? むしろこの地球を救うべきじゃね?」
背筋を逸らして、自信たっぷりに親指で胸を指してやった。
すると、両手を重ねたクロエは儚げに眉尻を下げた。
「それで……貴方は救われるのですか?」
「……」
彼女の本心と向き合う為に、俺は手を下ろしてサファイア色の瞳を注視した。
「貴方様はもう十分世界に尽くしました。そろそろ、自分の幸せをお考えを……」
それは五年間、俺と苦楽を共にしたからこそ語れる、真に迫った願いがこもっていた。
国に裏切られた時、絶望的な戦力差にうちひしがれた時、彼女はいつだって俺の心身を温めてくれた。だからこその説得力。
――たまらねぇな。
眼差しに、表情に、声音、いや、佇まいの隅々まで、切なる想いが溢れている。
忠臣で、姉で、師匠で、恋人で、一種恋愛感情を超越した、自身の延長感とも言うべきクロエの気持ちに甘えたくなってしまう。
おかげで、惰性で形作られた使命感が煙のように雲散霧消していく。
「やれやれ、ほんとお前は最高のゴーレムだよ」
彼女の不安げな眼差しに、心のコリがほぐれていくようだ。
俺は気の抜けた溜息を吐き出すと、観念したように笑った。
「OK。もう勇者はやめだ」
クロエの半眼を形作るまぶたが、僅かに持ち上がった。
「ていうかこっちでスキルや魔法使ったら大騒ぎだしな。天界で神として暮らすまでの100年間、せいぜい人間ゴッコして遊ぶよ」
「はい」
冷たい無表情に、薄い笑みが灯った。
地球の抱えた社会問題よりも、俺にはこの笑顔を守りたかった。
「ではまず、何を致しますか?」
コロリといつもの無表情&ロボ口調に戻り、クロエはメイド服の胸元を緩め始めた。頬を赤らめながら、いそいそと。それはもういそいそと。
しなやかな両腕を豊麗なバストの下で組んで、寄せて、上げて、黒いブラジャーからハミ出す谷間のIラインが強調されて、喜々としてYラインを刻む。
「いや、五年ぶりの地球だしちょっとテレビゲームしたいかな。新作ゲームの万夫不当4を買ったばかりなんだよぉ♪」
セクシーポーズwithクロエの瞳からハイライトが消えた。
「ナルホド、蓮司サマはワタクシのKカップボディよりもその40GBデータのほうがお好みダト?」ビキビキブヂッ
「おい、ヒロインがしちゃいけない顔」
「ご安心くださいッッ、怒っていませんからッッ。私はAI。感情があるように振舞うだけの悲しきカラクリ自動人形」
クロエの手がスカートを握りしめ、布地に深いしわが刻まれる。
「ただその万夫不当4の何が蓮司様のハートをつかんだのか是非ともご教授願いたいですッッ」
「深刻なエラーだな」
平坦な口調でツッコんでから、俺はリビングに向かった。
うしろから、殺意の波動に目覚めた自称無感動メイドロボが歯ぎしりをしながら背後霊のようについてくる。
あと俺の服の裾を離してくれない。
「そう怒るなよ。これはこれ、お前はお前だろ。それに面白ぇんだぜ。二人プレイもできるし、共同作業しようぜ」
「性の?」
「愛のだよ。あと顔近い」
「二人プレイ……なんと甘美な響きでしょう。さながらそのおテレビおゲーム様は私と蓮司様を繋ぐ愛のリング♥」ぽっ
「そろそろキャラ崩壊で各所からクレームがくるぞ」
階段を下りてリビングにつくと、手の中のスマホが震えた。
「新着ニュースか?」
【万夫不当シリーズ終了のお知らせ 万夫不当4売り上げ不振につき、次回作製作は絶望的】
崩れる膝、そして俺はリビングの絨毯に額から着地した。
「蓮司様ぁああああああ! どうなされたのですか!? 貴方は大邪神の三千世界消滅破を喰らってもサキュバス神と1000ラウンド果てても立っていた男なのに!」
背中を揺すらられると、背後でふたつの大質量物質がどたぽん、どたぱんと雄大に揺れるのを感じられた。
おかげで、俺は息も絶え絶えながらに起き上がれた。
「くっ……確かに初動は良くなかったけどレビューは星5ばかりだぞ……」
俺なんかアニャゾンのレビューに5000文字も書きこんだのに。
俺の苦悩へ応えるように、クロエはまばたきモーションを止めた。
「……検索したところ、どうやらハードが売れていないのが原因のようです」
「なに?」
絨毯の上にあぐらをかく俺に、クロエは正座で淡々と説明を続けてくれた。
「現在、日本は円安の影響で材料費が高騰。結果、最新ハードのゲームステーション5は9万円の高額商品となり売り上げ不振が叫ばれております。万夫不当4はハードと同時発売のローンチタイトルですので」
「決めたよクロエ。俺、チートスキルで日本を円高にするんだ!」
「なんという豆腐の意志……」
クロエのジト目。ただでさえ低い視線の温度が三度は下がった気がする。マゾ男子と俺にはたまらないね。
「だって俺の幸せを追求していいんだろ? じゃあ万夫不当4が売れるのが俺の幸せだ!」
「子供ですか……」
クロエはやや呆れ口調で視線を逸らした。
「こんなのに救われた異世界ってチョロいですね」
「おい聞こえて――」
刹那、クロエが真顔になった。
言葉を呑み込む。何かまずいことをしたかとわが身を振り返ろうとして、俺も表情を固めた。
探知系スキルが一斉に騒ぎ出し、情報が脳内に流れ込んでくる。
鋭く東の方角を睨み据え、
「……来るな」
「ええ」
と、短い言葉で通じ合う。
しばらくすると、地面が微かに揺れた。
テレビをつけると、地震速報が流れる。
太平洋沖でマグニチュード10・8の地震が発生。
その影響で、関東沿岸に高さ70メートルの津波が押し寄せるらしい。これは観測史上最大級だ。
地域住民全体に避難勧告が出されている。
頭が冷えていく。
脳裏に浮かぶのは、かつて海底へと沈み滅んだ街の住民たちの最期だった。
街を埋め尽くす無数の水死体。荒ぶる海の神は冷酷に人の営みの全てを掃討し尽くし生きた証は泡沫の藻屑と散り消える。
何もできなかった、無様な記憶だ。
――見過ごせないよなぁ……俺には救える力があるんだもの……。
石のように重く動かない心で、俺は機械的にクロエの顔を見やった。
「ごめん……やっぱり俺、勇者は卒業できねぇや……」
許しを請う俺に、クロエは漂白されたきった微笑を浮かべた。
「本当にあなたは昔から……意志が弱いですね……」
はかなげに一度視線を伏せる。
普段の冗談めいた声が、真剣な静けさに塗り替わる。
けれど、それはほんの一秒。
顔とまぶたを鋭く上げ、見開かれたサファイア色の瞳には無数の幾何学模様が遥か奥まで多重展開していた。
「クロエシリーズ! ファーストジェネレーション全機出撃! 我がマスターの理想を叶える時です!」
メイド服のスカートと白銀の髪をたなびかせ、彼女の全身から無数の光がほとばしる。
光のラインはグリッド線のように鋭角的に、リビングを駆け巡りながら人型構築していく。
そしてあまりに精巧なメイド服と美少女の姿を描き出すと、ワイヤーフレームにテクスチャが貼られるようにして質量を得ていく。
広いリビングを埋め尽くす、顔も髪型も違う、数十人の爆乳美女美少女メイドたちが一斉にまぶたを開いた。
数十の魅惑的な視線を俺に注ぎながら、彼女たちは一糸乱れぬ動きで忠誠のポーズをキメた。
『アファーマティブ!』
異世界を救うため、共に轡を並べて戦い、背中を預け、それでもなお裏切ることも死ぬことも無かった唯一無二の仲間たち。
底なしの情熱と敬愛に満ちた眼差しと、掛け値なしの魂が織りなす存在感。
胸の奥に湧き上がる無限の万能感を抱えながら、ベランダへと踵を返した。
「じゃあ始めようか。俺らのワンサイドゲームをよ!」
ポートスキルで、俺らはリビングから姿を消した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます