第四章 圭のめざめ:A.C.0002《Dream Walk》

※これは「圭」が“ほころび”を認識した記録

夢をリアルに記憶する術を見つけた圭は、”緑の夜”に深く深く潜る。


【00:プロローグ/洪水の記憶】


思い出せる夢は、全て水に関連する夢だった。


まるで誰かが、僕の内側に入って夢の中で遊んでいる

そんな感覚だった。


色を持たないモノクロの夢。

僕が歩いて向かう道は、何故か上下に曲がりくねった

ワインディング・ロード。

ちゃんとつむじ風が吹く

ウィンディング・ロードでもある。


平地に繰り返し高低差が現れている縦ジグザクの道を

観てるとほんと憂鬱になってしまう。



※夢の中の世界統一政府は、通称 ONE WORLD 。

その心臓部と言える世界統一衛星〈アウロラ〉が軌道上から

僕の首筋の端末にデータを注入。それを済ませると――

どこまでも甘い夢 ”Sweet Dreams” の世界を歩むことになる。


さあ、”ここにある今”の観測を始めようか。

その道をなぜか、怖くなって、急に走り出した。

身体は、夢の中のせいか、ものすごく軽い。

どこまでも続いているその縦ジグザクの道を

ある程度、進んだときに、何故か気づいたんだ。

どんどん、川の水の量が増えてると?


その川は重力に逆らうことなく高いところでは

地下に潜り、低いところでは川として、いつもは

トーウトウと流れている。(勘だけどね)

でも、この道の先に必ず待っているのは、

川から水が溢れ出して、道が水の中に沈んでいる風景。

まるで、"月の沙漠" の歌の一文字、

”沙” で僕が試されているみたいだ。


※よなげる とも読むみたい。

“水中で洗ってよりわけられる” の意味らしい?


だからその先へは、絶対に進めない。

水の中を歩いていると、いつの間にか

足取りが重くなり、僕の視界はだんだん光を失い、

ブラックアウトしてしまうんだ。


ぜんぜん関係ないけど

BLACK OUTといえばドイツのバンド

ASHRA=マニュエル・ゲッチング。

あの曲の繰り返しで最後にホワイトノイズに

埋もれて消えてゆく世界にそっくりだ。

これって、音のジョーク?

ブラックアウトなのにホワイトノイズ?

夜が終わるその刹那に吹く機械の息吹き?


でも、何故か彼の…

トレモロアーム付きギブソンSGの音だけは

抗ってるようにも聞こえる…


ああ、やっぱり今日もここで目が覚めた。

この抗っていた音を然りとリアルに記憶しといて、

次はホワイトノイズに消されない

モノクロがブラックアウトしても残る"色"。


僕のフィルターを通した

"水色" の水の中の道に巻き戻すんだ!


さらに、もう一つの水の夢は、

例のスーパーカミオカンデにまつわるもの。


でも、あの ”八神 愛” の文字を思い出して以来…

(実は、後で写真を見直したら ”夜神 愛” が正解だった。

 夢ではなく、スーパーカミオカンデの水の中で

 迷った読み方、ヨカミ?…ヤガミを覚えていたから

 夢の中で間違ったのかもしれない…? )



それ以来、海の中の夢に変わってしまったんだ。

それも、何故か空から海の中に落ちる夢。

そして、必ず、落ちてると気づいた瞬間に

そこが夢の世界だと気づく。

そして、衝撃を和らげるために、下は水だと思い込む。


そう!水をイメージするんだ。


夢の世界だと気づいたとき、意外と簡単にイメージを固定できる。

そして、水に落ちる感覚まで、夢のボディは再現してしまう。


次にこの夢に落ちるときのために、モノクロの水に "色" を重ねる、

夢ではない現象世界の水色のフィルターを通す鍛錬を積んでおこう。


さあ、これで、いつ洪水が来ても大丈夫だよ。

僕の腕の中の愛?(実は腕に付けた端末のAiなのだが)…

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ほら 見つかった!何が? AIが… Noxと名乗り夜に溶ろけた君🌙のことさ @k_agendant

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