転生聖女〜現代日本に転生したら、勇者と魔王も同じクラスだったのでクラス替えお願いします

水谷なっぱ

00.物語の終わり

「魔王リオン!! 追い詰めたぞ!!」


 勇者ルイが怒鳴った。

 ここは魔王城の最上階。私……聖女エミリアはルイの斜め後ろで白魔法の障壁を展開していた。

 途中まで一緒だった仲間たち、黒魔法使いケントは魔王の配下のサキュバスを、格闘家アイリは炎の魔族をそれぞれ足止めしてくれている。


「こしゃくな人間が風情が……我が魔王城で頭が高い!!」


 魔王の指先が揺れて、障壁が波打つ。

 ルイが退魔の剣を魔王に向けた。


「ふん、エミリアの魔法がこれくらいで破られるものか! 俺はお前を倒して、そのお礼に教会からエミリアをもらうんだ!!!」

「は? 何それ、聞いてないけど!?」

「そのようなことは我が許さぬ。エミリアちゃんは私の妻にするのだ!!」

「エミリアちゃん!? それも初耳ですけど!! い、嫌だ! 私は魔王退治が終わったらシスター・リリアと……私を拾って育ててくれたママの所に帰って悠々自適な年金生活するって決めてるの! もう冒険も戦いもウンザリ。毎日風呂に入って三食ちゃんと食べて、ルイのストーカーも、魔王の盗撮もない平和な生活をするんだから!!」


 ルイと魔王はそろってきょとんと私を見つめた。

 えー、何その「初耳ですけど?」みたいな顔!

 私のセリフだよ!!


「……勝ったほうがエミリアを妻として迎える。それでいいな、陰険魔王!」

「ああ、望むところだ、脳筋勇者!!」

「よくないけど!!??」


 二人の激しい戦いが始まる。

 いっそのこと共倒れしてくれないかなーなんて思ったから、バチが当たったんだ、きっと。

 ルイの剣が魔王の喉元に迫る。


「これで、しまいだ!」

「ふふ、この程度でトドメとは、舐められたものだ」


 魔王はルイを見ていなかった。

 見ていたのは――私。


「えっ、なに……」

隔離世かくりよへ、共にまいろうではないか、聖女よ」

「エミリア!!」


 最期に見たのは、ルイの焦った顔と、魔王リオンの笑顔だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る