極道転生 その男外道につき

泳鯉登門

蛇足にて候

張り出し 外道の徒花

 よし、乱れていない。穏やかだ。

 向こうでも、こっちでも、初めてのことだ。

​ ほぼ全方位から、槍だの弓だのが飛んでくる。おいおい、誰だ? 投斧まで飛んでくるぞ。

 ほら、そこ。俺にばかり集中してると、マヌケだねぇ。仲間の弓矢に当たって死んじまった。

​ 左から四本並んで俺に突き出して来た槍。

 俺は左手で、少し先に出ていた槍の刃の根元を掴み、大きく円を描くよう引き寄せ回す。その勢いで他の槍が弾け飛んだ。

​ さらに槍を引き寄せ、右側から剣で斬りつけて来たやつの胸に、槍を刺す。

 槍を持ったままの敵兵を、腕を交差させ顔面に右掌底。よし、首折った。

​ 左手に持っている槍を引き続き使い、左に重心を動かす。

 先ほど首を折った兵の、鎧の首元の隙間を握り、一回転。兵の亡骸を使い、全方位から押し寄せる兵を吹き飛ばした。

​ まだ、終わらないぜ。さて、もう一周と洒落込みますか。

​ 左手に持っている槍を脇に挟み、そのままくるっと回り、一瞬の停止。

 俺を中心に、円状に兵が倒れる。

​ …………刹那の静寂。

​ 空を見上げる。あぁ、良い天気だな。

​「日本晴れかぁ」

​ その刹那の静寂が気に入らないか。取り返さんと、さらに強く砂ぼこりをまき散らし、さらに濃く血肉の匂いをまき散らし、怒号と罵声を張り上げ、敵が波打って押し寄せる。

​ 俺は、いたずらを思いついた悪ガキのように口角を上げ、呟く。

​「ぎゃ〜ぎゃ〜煩いね。サカリですか? コノヤロウ」

​ また走り出す。

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