エルカリムの代弁者
85さい
第一話
____人々は魔法使いの存在を知らない。
否、''魔法使い''を架空の存在として認識している。
この世界における''魔法使いの歴史''は人類の繁栄の歴史にも大きく関わっているが、それを一般市民は知る由もなかった。
魔法使いが表舞台に顔を出さない理由は色々あるが、要するに異端は異端らしく在るべきなのだと____俺は、師匠にそう教え説かれた。
とはいえ、全体的に見ると魔法使いの人口そのものが減少している訳ではない。
元より世界人口が増加している現在において、魔法使いの人口は一世紀前より上昇傾向にある。
尤も、人口増加している国はその多くが貧困や格差などから多くの問題を抱えているため、一概に増加傾向にあるとも言える訳ではないのだが。
ともかく、この日本という島国における''魔法使い''という存在の立ち位置は異端なものだった。
''魔法''といったものが世間に広く知られていない以上、魔法使いは自ずと異端であることを隠す。
故に____魔法使いは隠匿されし異端の存在であった。
だが、魔法使いという存在が世間一般に知られることになるのも時間の問題なのかもしれない。
少なくとも今この現代において、科学や文明の発達した国々のお偉方は魔法使いを敵視する者も多くはない。
それこそ魔法使いを研究材料にしようとする噂だって耳にする。
だから魔法使いたちは身を隠し、妖精は新たな魔法使いへの祝福を言祝ぐ。
したがって、魔法使いの安全は盤石なものとなったが、この世界は決して魔法という奇跡だけが満ちている世界ではなかった。
なにせ魔法と呼ばれるものは、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■に過ぎないのだから。
___グリニッジ標準時 2025年4月7日 午前 0時
『アンカー、アンカー、通達する。太平洋に未解明の巨大な大穴が開いた。』
『……なんだって?』
『規模は約3000万平方キロメートル。大穴の中心部は混沌に渦巻いている。間もなく厄災が降り掛かるぞ。』
『はあぁあ〜??オイ、寝ぼけた事を言うのも大概に___』
『____言っておくが、オレは寝ぼけてなんかいない。ただ
男はその言葉を聞いて通信機器越しに唸る。
『……だが、心配する必要はない。世界に''終末''が近づいたなら蹴り返せばいい。幸いにもオレにはそれができる力を持っている。』
『いや無茶苦茶すぎるぞ、お前。』
『____ オレが一年後に先送りしよう。』
『クソ、融通の効かない馬鹿野郎が。無茶にも程があるっつってるだろうが……。』
通信機越しにため息を吐いた男は、されどその方法しか残っておらず、もう時間も数分しかないことを知っていた。
何よりこの機を逃してしまったら、世界は''終末''にまた一歩前進することだろう。
『ったく、こんな時に限って''愛''も''秩序''も''奇蹟''だってやって来ねえ。』
『……''奇蹟''は遥か昔に殞落した筈だが?』
『あぁ、間違えた____あの主のいない''奇跡''の連中のことだ。ともかく____』
そう口にしかけた男の言葉に声を被せる。
『終末を打ち倒す。』
『…フン。お前がやりたいだけなら勝手にしろ。少なくとも、俺たちの
不敵に笑みを溢した。
普通の''代行者''が
『終末を先送りにする____それが''
『だから、オレの前に奇跡が現れるまで保たせてみせよう。』
『故にこの世界は____
神々の信仰者たちは、この世界において数千年もの時を終末の予言の対処に手を焼いていた。
''混沌''から生まれた万物はその構造上混沌へと還る仕組みになっているが、人類はそれを否定するべくして、混沌に相対する''神々の信仰者''となる。
奇蹟も、輪廻も、秩序も、終末も、元々は混沌に対抗出来得る''神秘''を持って生まれた存在。
だが、人類が繁栄する未来は終末にはなかった。
終末の予言には混沌を含めた世界の何もかもが消失することが書かれてあり、それを阻止するべく彼らは一足先に''終末の予言''を先送りにした。
だが根本的な解決には至っておらず、だからこそ輪廻の代行者はその都度先送りにして探し続ける。
既に殞落した''
エルカリムの代弁者 85さい @85__
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。エルカリムの代弁者の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます