ナカミ・ウチ
この卵のナカミには、ウチには、あなたは辺り一面にいます。
卵が何の卵なのか。どういった意味での卵なのかは分かりません。それに、あなた。いる――というよりは漂っている。きっとこの言葉が相応しいでしょう。
あなたは
けれどもあなたは、
だって、意思の疎通というのは
もちろん、自身に向かって語りかける、ということだってあるでしょう。
けれどもそれは、
誰かがそんな疑問を浮かべるかもしれません。けれども――その答えは決まっています。さあ、わかりません。そんな風な返事だと。あなたはどういうわけか無意識的に、今、こうしてお話している
ですがここで初めて、問題が発生しました。
あなたの質量に変化があったのです。あなたで満たされていた世界に、あなたのようで、あなたではな無い何かがポコンと現れたのです。
変わりに
あなたは、
するとまた、ポコン!
世界の、あなたたちの質量に変化が現れます。この中にきっとオオカミがいるに違いありません。いったいどのあなたが、こんな恐ろしいことを。
ポコン!ポコン!ポコン!
次々に、新しい何かが現れ、質量を変えていきます。新しい何かはあなたたちよりも一回り、二回り大きいように思われます。それも、新しく生じる都度に大きく。まるで減った分を埋め合わせるためと言わんばかりの大きさです。
ポコン!ポコン!ポコン!
魔女裁判はそれでも続きます。裏切り者は誰だ。ユダは誰だ。そう誰かが叫ぶ都度にポコン!新しい何かが世界を埋めていきます。エネルギーを消費し、質量を揺らがせます。大小(あなたより小さなものは無いのですが)のあなたでは無い何かが世界をひしめいて行きます。
あなたはだんだん、あなたがあなたのままである自信を失います。あなたはいったい、
新しいそれらは次第に輪郭を複雑にしていきました。
ふわふわ漂っていたはずの世界はしっかりと根付いた何かや、その上を飛び回る何か、隣を駆け巡る何か――あらゆる何かを飲み込み、取り込んでゆく。するとしだいにその何かの行動も複雑になっていきます。
魔女裁判もまた、乱雑さを増しています。
何がどう裏切られ、その度合いはいかほどで、どれほどの罰則が相応しいのかと、つらつらと長ったらしい主張が辺り一面からの聞こえてくるかもしれません。
そしてあなたは気が付くのです。
それはきっと、目が覚めたような
あなたは、
あなたは、あなた。
それも
エネルギーを消費し続けたあなたは、
きっと、あなたは魔女裁判で厳しい罰を下されることでしょう。
――いいえ。
罰の下されないあなたは存在しないのかもしれません。けれども、そうして残ったのがいまの卵です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます