悪夢よ永遠に

「今から、『酒呑の円卓ナイト・バンクエット』の今後についての最終会議を行う」


 そこは、クランハウスの一番大きな会議室。中央に十二人の座れる円形の机があるがそこには一人しか座っていない。


 周りには議事堂のように椅子が並んでおり、そこにはクランメンバーが1人の欠けなく座っている。空気は重苦しく、会議は暗い雰囲気で始まった。


「単刀直入にいうが、このクランは解散しようと私は思っている。」


 静寂が続く。


「十一人の初期メンバーがここを去り、もはや私一人となった。そして私は別の道に進もうと思っている。円卓がなくなればこのクランももはや意味をなしていない。」


 そう、綴ったのち一人の男が立ち上がる。


「待ってください。もうすでにこのクランはみんなの拠り所になっているんですよ!それを無くすなんて。」


 カルタシス。Nokiyouとは正反対のごつごつとした鎧を見に纏いイケメンに作ったのだろう顔だけをわざわざ見せている。黒髪に紫の目をして、十人に聞いたら五人がイケメンだと答えるような見た目になっている。


 その男の本心では、「お前だけいなくなって俺のクランにさせろ」という魂胆が見え見えので訴える。


「それに解散したとして、倉庫にある金や武器防具はどうするんですか?市場に流せっていうんですか?」


「その通りだ」「俺たちが頑張って集めた金はどうするんだ!」


 カルタシスの言葉と共に、取り巻きたちも騒ぎ始める。


「全員に均等に分配するつもりだ。」


「ちょっと待ってください。全員が全員同じ仕事量やログイン時間じゃないんですよ?それで均等って不平等じゃないですか?」


「確かにその通りだが、多少の優劣があったとしてもそれはどこまで行ってもでしかない。極論、今までお前たちが集めてきた相手もの数は全体の倉庫の何%だ?」


 キッパリと、威厳のあるクランリーダーとしてのNokiyouの姿はそこにはあった。淡々と事実を述べ、的確に相手の急所を突く。


 初期メンバーの一角、選ばれし十二人の内の一人『Nokiyou』又の名を『死突のパーシヴァル』


「約11.8%です」


 クランの会計係の一人がはっきりと述べる。


「お前たちは私たちが集めた88.2%分も量増しで分配される。それのどこが不満なんだ?言ってみろ。カタルシス」


 鋭い眼光でカタルシスをNokiyouは睨みつける。


「おっと、怖い怖い。そういえばリーダー、もしクランは解散せず残り貴方だけが去って言ったとしたら次のリーダーは誰にするんです?」


 カタルシスはこれ以上はまずいと思ったのかすぐさま話題を変えようとしてくる、これにある者は呆れ、ある者は嘲笑し、ある者は苛立った。


(これ以上は話していても無駄だろうな)


Nokiyouはそう思い、クランメンバーを見渡し多数決に入る。


「もういい、いつも通りに行こう。解散に賛成のものは起立、反対のものは着席しろ」


ガタリ、ガタリと音をたて次々と立ち上がるがその数は半数にも満たない。立ち上がった者は古参の者や、初期メンバーに憧れを持った者、そして合理的に考えられる者たちだった。


一方、立ち上がらなかった者は、カタルシスの取り巻きたちや賄賂を受け取った者、カタルシスに脅された者だ。


「はぁ、この議決は却下された。」


Nokiyouは大きくため息を吐き、呆れたように。もしくは諦めたかのようにそう、言い放った。


半数は喜び、もう半数は驚きや怒りに満ちた。この時、バン!とNokiyouは机を叩き全員を見渡し、微笑みかける。


「だがしかし!もし、この場に何も知らない第三者がやってきて全員を殺しにきたら?」


———静寂。理解の及ばぬ馬鹿が、口を開ける。


「はぁ?何をいt、、、、」


突如、天井が倒壊。空から顔がぼやけて見えない男がゆっくりと降りてくる。


Ladies and gentlemen紳士淑女の皆様,私は雑貨屋『アノマラス』の店主、『ヅクリグルイ』と言う。今夜、君たちを殺しに来た者だ。」


「げ、月光、、、、?!」


現在、月光を背に現れた不思議な男はクランメンバーのざわめきを無視し、話を続ける。


「私にどのように殺されたい?死にたくないのならば抵抗をすればいいだろう。できるものならばね。」


刹那、カタルシス以外のクランメンバーの全員が両腕を切り落とされる。


「なっ!?」


「ハハっ。おっと、そこの君はカタルシスじゃないか。攻撃を防げたのはその首飾りのおかげかな?」


「腕がっ!?」「いやあああ!!」「くそっ!!」


叫び、焦り、困惑。それは阿鼻叫喚という言葉にぴったりな状況となった。

自分の腕が切られたという事実、どんな者であっても少しは焦り困惑する。


唯一防げたのはカタルシスの一人のみ。


「は?は?は?」


なのである。あの最強と謳われたリーダーも自分の次に強いと思っている側近たちも、同じ首飾りをしながら切られたのである。


「ハハっ!困惑しているねぇ。私が怖いかな?怖ければ君は正常な感情を抱いているよ。よかったじゃないか、自分はまともだと証明できたじゃないか。」


「何を!怖くなんk「おっと、私の勘違いだったか」」


「よかったじゃないか。自分はあそこにいる両腕をなくし戦意を喪失しているリーダーより優秀なんだから、認められるだろうね。お前は強いって、それともこんな優劣よりも、金や権威の方が欲しかったかい?」


カタルシスという男は、過酷な家庭環境で生まれそれゆえに、自分以外を貶し下に見なければ自分の存在意義に気づけない、愛がなかった故の愚かな男だった。


金がなければ何もできない、権威を示さねければ存在意義を示せない、欲を出さなければ誰かに奪われる。そんな男だった。


ヅクリグルイと名乗った男はゆっくりと地面に足をつけ、一歩一歩とカタルシスに近付いていく。


「うるさい!黙れ!!くるんじゃない、バケモノめ!!」


「残念ながら君は優劣をつけられるだけで終わる。なぜなら富と権威はよくわからない男に全て壊されるからね」


「やめろっ!!お前に何がわかる!!俺の何がわかる?!くるな!」


ゆっくりと、だが着実に男は近付いてくる。そしていつの間にだろうか、カタルシスは気付く。自分の両腕が切られていることに、ことに。


「う、うわぁぁぁっ?!??」


「さぁ、もう直ぐ死んでしまう。どうする?何をする?お前は何を願う?」


「くるなっ!!くるなっ!!くるなぁぁぁっ!!」


男が腕を振り上げ、カタルシスに手刀を向ける。刹那————

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