晴れた海は美しい。

わかころも

別れと出会い。

今日は何もやる気が起きない。

てか、起こせないな。

だって彼女との3年間の想い出が一瞬で崩れたんだ。

いつだっけ、だけど言ったよね。

「私、君が好き。この気持ちはずっと変わらないよ」

で今は何だ?

他の男と2年前から交際?

ふざけるのも大概にしろよ。

涙と鼻水の交差。

「俺の3年間返してくれよぉ」

心のそこからどん底気分を味わった。

昨日まで見せてくれたあの笑顔は偽物だったのか。

いや違う。確かに本物だった。

だけどやっぱり忘れられないよ。

こんな出来事があったのに彼女を想ってしまう自分。

涙がとまらない。

「大丈夫?」

目は涙で霞んであまり見えないが、声は聞こえる。

誰だろう。

「どんまいだね。私と一緒だね」

優しい声。

「え、誰ですか、、?」

「こんなときでもそこからなんだ」

「おもしろいね君」

なんにも面白くねえよ。

なんて心に思いつつ、次の言葉を待った。

「私ね、晴っていうの。君と同じ高校だよ」

俺は一年生だけど聞いたことない名前。二年生か三年生か。

「なんで知ってるんですかぁ」

掠れた声で喋る。

「そりゃね。ラブラブしてるから嫌でも視界に入ってくるよ」

「うう、掘り返さないでくれ」

「先輩なんだから敬語にしなよ?」

「てかさ。ここで何やってんの?」

確か浮気がわかった直後、

どうでもよくなって、闇雲にどっかに歩きだしてたんだ。

でどこやねん。ここ。

あたりを見渡すとゴミ出しの網がある。

「もしかして君、ゴミ収集車に回収されようとしてた?」

晴となのる先輩。爆笑している。

「耳赤いよ?やっぱり面白いね」

「わざとじゃないし...」

「ちょっとついてきて」

どこにいくのだ。今そんな余裕はないのに。

戸惑っていると

「はやく!冷えてきちゃう」

晴に言われるまま自転車にライドした。

どこにいくのかと思いながらペダルを漕いでいると、海に向かっている。

俺の住んでいる地域は非常に海が近いため、数分でつく。

「ついたよ、海」

「ああ、うん。だけどなんで?」

「まぁ、見てて」

「浮気されておつかれー!!!」

え、声でか。しかも何しとるん。もう抗う気力は残ってないからまあいいや。

「ほら君もやってみなよ、めっちゃスッキリするよ」

え、あ俺?もうどうでもいいからここでぶちまけよ。

「この女、めっちゃからかってきてうざいんですけど!!!」

めっちゃ声量出てたわ。今。

「私なのね、元カノさんにはいいの?」

言葉が出ない。

「ほんとに仲良かったんだね、だけどいつまでもひきずってたらだめだよ?」

「言いたいこといいなよ」

声がやっぱり落ち着く。もう言おう。

「ほんとに好きだったよ!!!!!」

「だけどもう大嫌い!!!!」

生きてきた中で一番声出てたかも。

けどスッキリした。

「そんなでいいの?」

また晴が追い打ちをかけてくる。

「もういいよ、スッキリしたから」

ささやかにきこえる波の音。月の反射でキラキラとひかる水面。

とても綺麗だった。

「海っていいよね」

「うん、海はいいよな」

「晴さん、また話したいです」

新たな小さな1本の種が心の隙間に芽生え始めていた。





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晴れた海は美しい。 わかころも @Masudadesu2525

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