2.プラチナの仮面と失われた音

2.プラチナの仮面と失われた音


メジャーデビュー後、「トリニティ」は国民的な人気を獲得した。ユウキの才能は爆発し、彼が書く曲は次々とヒットした。三人の私的な会話は完全に消滅した。タクミは、彼が純粋な愛を隠したことによって、ユリオスの才能がさらに激しく燃えていることを悟っていた。


ユウキの曲の構成はより複雑になり、初期の温かさを象徴していたタクミのハーモニカのパートは、意図的でなくとも完全に削られていた。タクミは、自分の音楽的居場所が、ユウキの**「洗練された光」**によって、過去の純粋な楽しさと共に塗りつぶされていることを悟った。彼が愛した「木漏れ日のような音」は、もうどこにもなかった。


ユウキの最新ヒット曲の歌詞が届いた。タイトルは『無償の光』。タクミは悟った。ユウキの才能は、アオイとタクミの隠された愛への敗北の恐怖と、才能の枯渇への病的な不安を源泉に、より切実に、よりドラマチックに燃えているのだと。


スタジオで、アオイがその曲を歌う。ユウキは自信満々に見つめる。


サビのフレーズ。アオイの声に、一瞬だけ切ない熱が宿る。


「言葉にできない愛も、いつか形になると信じて」


アオイは歌いながら、心の中で懸命に自己暗示をかけていた。(この歌は、ユウキの才能が照らす未来の光を信じる歌だ。ユウキの歌だ。でも、私はこの歌を歌うことでしか、究極の自己実現を果たせない。タクミ、あなたへの本当の想いは、この偽りの光の中に永遠に隠すんだ。)彼女の完璧な歌声は、才能と愛を守るための、そしてアーティストとしての業を背負うための、自分自身に対する裏切りの上で成り立っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る