怪異ラブコメ
@sink2525
第1話 私は恋に落ちる
コンコンと鳴り響く靴音とともにに息が漏れた。張り付くような息遣いが校舎に響く。
明け方の校舎。生徒たちが登校するにはまだ早い時間。そんな中一人の中学生――花山美咲は廊下を歩いていた。
おぼつかない足取りで前に進んでいく。
誰かを好きにならなきゃいけない。私には残された時間が少ない。一刻も早く見つけなきゃいけない。運命の人を見つけないと。
心臓に手を当て歩く。
ドンドン鳴り響いていて速くなっている鼓動は現実を知らせている。
分かっているわ。別にこのまま終わるつもりなんてない。
朝日で照らされた甲には深く長い傷がある。また増えている。いったい、このまま過ごし続けたらどれほどの傷が増えていしまうのだろうか。
私にも分からない。分からないことが多い。
そもそもの話、私には恋なんてできるのだろうか。美咲はガラスに映る自分を見て考えた。
思考を巡らし今の状況をやんわりと理解する。
普通とは何か。私にとっての当たり前は、みんなにとっては違う。そんなことくらい分かってるよ。
分かってる。
分かっているんだ。
頬を濡らし視界が歪んでいく。
どうして私なんだろう。どうしてこうも辛いことばかり降り注ぐ人生なの? きっとそうよね。
私しか知らないから、こんな話をしたって誰も理解なんてできないよね。私だけが傷つけばいいんだよね。
誰かに相談したとしても意味なんてない。ましてや馬鹿にされるだけ。
痛みに耐えるように制服を握りしめる。じんわりと広がっていくあの痛み。
心を傷つけては心臓をえぐるような感覚が広がっていく。
耐えようとしても声が漏れてしまう。
「痛い――」
明け方の校舎に響く悲鳴は誰にも聞こえることはない。
怪異――思い焦がれる心臓
怪異ラブコメ @sink2525
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