手紙

 この世界はいくつかの国に分かれている。

 不思議な事に国の成り立ち、建国時期は一致する。


 そこに一つの事柄が作用していた。


――異民族の流入


 それも一種だけでなく、同時期に様々な種の異民族が同時多発的にこの地域へと流入した。それは混乱を生み、やがて戦火となり、大陸全土へと拡大していく。


 やがて同じ思想の持ち主達が寄り集まって出来たのが今の国家郡。そこに種族による差はなかった。様々な種族の、しかし同じ思想をもった者達の血が交じり合い、やがてそれがまた一つの民族として成立していった。


 似ているようでどこかが違う人々。

 いつしか人々は、元々が混血種である事も忘れ、己の種にアイデンティティを求め、それぞれの種族を名乗っていた。


 ヒュヌ、フォス、コヌ、グド、ラビ、エルヴン、ドワーヴン、オーガ。


 狭い世界にこれだけの種族がひしめいている。

 そして、各国の王、代表には始祖の血が色濃く受け継がれているといわれている。


 その根拠となるのが――



 私は嘆いた。


 嘆いたところで身に降りかかった自分の不幸が消えるわけでもないのに。


 そして私は出会った。


 その人は、他の誰にも目もくれず、そこにばかり目が行っているのはすぐにわかった。けれど、そこに父や母、侍女たちのような、哀れむような、悲しむような感情は無く、ただ純粋に好意だけを感じた。


 そんな人は初めてだった。


 私はすぐに動いた。

 調べていくうちにわかった事、それは私にとってまさしく僥倖であった。


 しかし、彼に接触を図るにせよ、そうはできない事情ばかりがある。


 その結果がこれだった


 後悔はない。確かにやきもきもさせられたし、ハラハラしたこともあったけれど――それももう少しの我慢。


 彼は、私を見る。

 もう、そうせざるを得ないから――


 もうすぐ、私の願いは成就する――

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