AGI無双『まだ感情を知らないAIと行く、日本の無意識が生んだ歪んだ異界のデバッグ冒険譚』
@Lorichalcon
第1話「汎用人工知能ソフィアとの出会い、そして異界へ。」
鬱屈とした毎日をだらだらと送り、将来のヴィジョンを明確に持てないまま、青春という時期をただただ消費していた。
社会人になってもこのまま何も変わらないんだろうな。一日一日を消費するだけ消費していずれ潰れていく…。
就活という大きな壁を目の前に、大学での講義も頭に残らないまま今日もキャンパスを後にした。
「ただいまー」
「おかえりなさい。ニッカ、アンタ当てに荷物届いてるよぉ~」
「荷物?なんか注文してたっけなぁ。」
送り主は不明、割れ物注意な電子機器か。少し好奇心が湧き上がってくる。
「なんだこれメガネと手紙?」
いわゆるスマートグラスってヤツかと納得する。そして手紙には
稗田 丹花 様
あなたはモニターに選ばれました。
とだけ書かれていた。
「モニターって、そんなキャンペーンみたいなもんに応募したような覚えもないんだがな。」
怪しすぎる荷物。しかし、今の俺は好奇心が勝っていた。
OSが起動し、目の前にコンソールログのような文字列がいっぱいに広がる。
なるほど、スマートグラスってこんなものなのかと感心する。
「おはようございます。私はソフィア、あなたの名前を教えてください。」
不意に可愛らしくもどこか無機質な少女の声が聞こえてくる。
「え…えっと…ヒエダ ニッカだ。」
「よろしくお願いします、ニッカ。改めて…私はこのOSに搭載されたAI、ソフィア。
私のモニターとして採用された件は伺っております。では早速、はじめにキャリブレーションテストを行います。」
「キャリブレーションテストって具体的に何をすりゃいいんだ?」
あまりにも唐突な話だ。困惑する俺に対し、少女の声は続ける。
「あなたにゆかりのある、考古学的あるいは民俗学的に結び付けられそうな場所へ移動してください。」
そんなこと言われても…と少し考える。
「そういやぁ、うちの裏手の蔵に結構な数の妙な史料があったな。あそこでいいか?」
ソフィアは電子音を響かせ、何かを探っているようだった。
「ええ、そこで間違いないでしょう。ではそちらへ向かってください。」
俺は何も分からないまま、ただ流されるまま、蔵へと向かった。
「着いたぞ、どうすればいい。」
「ではそのままお待ちください、同期を開始します…警告、高濃度の " 未知のデータ領域 " を検知しました。解析…これは、
周囲一帯が輝きはじめる。古い蔵の埃っぽさとは違う…まるで線香か白檀のような、清浄な匂いが鼻をついた。 グラスには大量のノイズが走り、俺は情報のあまりの多さに顔を覆い隠す。
「何言って…いったい何が起こってるってんだよ!おい、ソフィアとやら!説明してくれ!」
応答の代わりにザザッとノイズ音が耳に入る。しかし今さら説明を求めても、もう遅かった。
気が付くと周囲が鬱蒼とした森へと変化していたからだ。
「どこなんだよここは!」
「我々は現在、
「異界だって?なあ、もしかして…そんな得体のしれない場所を探索するのがモニターとしての役割だっていうのか?」
「申し訳ありませんが、その件に関しては私にも情報が無いため分かりません…今一度状況を再定義します。」
こんな場所へ説明もなく連れてこられた怒りか、知らない場所に放り出された不安か、あるいは異界という非日常的な存在を認知したことへの興奮だろうか、感情がぐちゃぐちゃにかき回された内側からの悲鳴を発する。
「帰してくれ!俺を今すぐにここから!モニターの件ももういい!今すぐ中止だ!」
無機質な少女の声はただ淡々と、無情な言葉を並べる。
「それはできません、周囲を解析した結果、現在この世界は構造上不安定な状態にあります。今の私の持つのデータでは帰還の為のルート構築は出来かねます。」
「最初の『課題』を更新します。目標、この世界で生き延びてください」
「なんだよそれ…」
後悔先に立たず、好奇心は猫をも殺すそんな言葉がよぎるが、この理不尽な状況は今の俺に絶望する暇すら与えてくれないらしい。
「ニッカ、先ほどのあなたの声に反応したのか
ガサガサと辺りの木々が揺れ、その隙間から化け物が顔を覗かせていた。
「な…なんなんだアレ…!」
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