一話、エリスの力と生い立ち
サテラのゆりかご
ここはサテラのゆりかご。サテラと呼ばれる魔法使いが土地を守っていた事から付けられた名前だ。
「ねぇ、カタリナ、今って何年の何月かな?、あとここはどこ?」
「1573年の八月よー、だから暑いでしょ?、それとここはエルスフィア王国よ」
(八月…私が死んだ時って二月の筈だから、復活するまで六ヶ月も掛かったって事だね…)
エリスはそう考えながら周囲の警戒を怠らない。その理由は…?
『エリスよ、帝国兵となる者ならば絶対になさねばならぬ使命がある、我が子であるお前なら分かるな?』
『国や種族関係なく市民を守る!、でしょ!』
『そうだ、よく言えた、お前ならば私のような立派な帝国兵となれるだろう』
父エフタルとの約束があるからだ。だからこそエリスは誇り高き帝国軍人として他国の市民であるカタリナであっても守る。
「流石は軍人さんね、ここは強い魔物が出るから頼りにしちゃうかも」
「うん、頼りにして?、私が守るから」
「ええ!、と言いたいところだけど、私は冒険者よ?、あなただけじゃなく私も戦うから」
「分かった、なら支援をしてもらえる?」
「了解」
カタリナは話しながら思う。武器がただの枝であっても感じるこの自分を守ってみせると言う自身。この人は相当な鍛錬を積んだ剣士なのだろうと。
「!、カタリナ!、戦闘準備だよ!」
「ええ!」
エリスが何かの気配を感じ戦闘準備に入るように言う。するとエリスが感じた通りに草むらから野党が現れた。
「はん、女二人で武器を構えてどうするつもりだ?」
「俺たちに勝てるつもりかよ!」
「勝てるよ」
「そんな枝一つで勝てるわけねーだろ!、大人しく捕まりな!」
男達が襲いかかって来る。
「エリス!、この人達人売りよ!、女子供を捕まえて売って生計を立てている人達だわ!」
「ふぅん…」
正義感ある少女であるエリスの瞳がカタリナの言葉を聞いてスゥーと細められる。その瞳を見た男達は恐れを感じ動きが鈍る。エリスはその隙を見逃さずまずは一人目に枝を叩き付けた。
「かはっ!?」
「!?」
するとただの枝とは思えない程の威力が出て男は吹き飛んで木に激突し死亡した。
「これは…」
「て、てめぇ!!」
エリスが自身の力に戸惑っていると真横から男が突きを繰り出して来た。エリスはその突きを指で掴むと男を持ち上げて地面に叩き付けて仕留める。
「なるほど…これが私の力ってわけか!」
エリスは逃げ出した男に向けて地面を蹴って飛ぶと回し蹴りを命中させて今度も一撃で倒してみせた。
「…」
カタリナはエリスの力を見てポカンと口を開けている。
「帝国の軍人さんってとんでもなく強いのね…」
「いや…私が変なんだよ…」
「あぁ…やっぱり?」
カタリナはエリスの言葉を聞いて帝国兵全員がこんな力を持っていたら世界征服に繰り出していそうだと思い思い直す。エリスが超常的なのだと。
「それじゃ行きましょうか」
「んー、ちょっと待って?」
エリスはキョロキョロと見渡し。男達が落とした武器達を品定めする。
「これが良いね」
落ちていた剣から比較的質の良い剣を拾ったエリスは死体から腰ベルトを拝借すると腰に巻く。
「…服と下着が欲しいところだね」
今。カタリナから貰った上着だけを着ているエリスは風が吹くのと同時に頬を赤く染める。
「そうね…村に着いたらすぐに服と一緒に買ってあげるわ」
「ごめん…」
「良いわよ、今の戦闘、私は何もしてないしお礼だと思って?」
「ありがと」
エリスはカタリナに感謝しつつ歩き始める。
「そう言えばカタリナはその村の出身なの?」
「ええ、ソバラ村って言うの、そこの出身でそこの冒険者ギルドの所属よ」
「なるほどね」
エリスは再び周囲を警戒しつつ話す。
「エリスは何歳なの?、私は十五歳ね?」
「私も十五歳だよ」
「へー、それなのに歴戦の戦士感があるわね?」
「五歳の頃から剣を握ってて、初めての実戦は八歳だからそう感じるのかも」
ハヴァウト家は大体帝国の高官となる者を輩出して来た名家だ。そのためエリスも名家の名に恥じぬような教育をなされて十五歳にして少佐まで昇格している。ちなみに軍に入隊したのは九歳の事だ。
「本当に歴戦さんじゃないの…」
「あははー、まぁねー」
カタリナはそんな経歴を持つ割には話していると確かに軍人らしさもあるが普通の少女らしさもエリスにはあるなと思う。
「エリスみたいな教育を受けてる人って厳格な人が多いのだと思ってたけどあなたは違うのね?」
「お父様がそう言うの嫌がったの、せっかく女の子に産まれたんだから、男みたいな育ち方はさせん!って言ってたみたいで」
だからこそ軍人としての教育もしつつお嬢様としての教育も同時にエリスにはなされている。その結果育ち方の割にはエリスは女の子らしい喋り方や仕草もする少女に育ったのである。
「なるほどねー、まぁあなたこんなに見た目が良いんだし、あなたのお父様の気持ちは分かるかも」
「ええー?、そう?」
エリスは実際かなりの美少女だ。そのため軍の広報部が何回か求人ポスター用の写真を撮らせてくれと言いに来た。そのポスターのお陰で入隊希望者は爆増した。
「あっ、もうすぐ村に着くわ、まずは急いで服屋に行きましょう」
「うん…」
二人は村に入ると急ぎ服屋に向かう。
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