8

side瑞綺


「おい。本当に良いんだな?」


初めてだらけの快感で脳がホワホワしている私の髪を優しく撫でる愁が、らしくない弱い声で言う。


『良い。…愁のが良い』

「…!」


こちらもらしくない返事をし、彼の頬に手を伸ばし求める。


ぐっと持ち上げられた膝。

ゆっくり入ってくる指とは違う太さの、それ。


経験がある、とは言ったものの、違い過ぎる快感に甘い悲鳴が出る。


『っっんあっ…』

「おいっ…締めるな」


逃げる私の腰を掴みながらゆっくりと動く彼を見れるはずもなく、行き来する初めての快感に身を委ねる。


「っはっ…ちょっと、無理かも」

『へ?』


そう言い私に覆い被さってきた彼は、動きを早めた。


ーグチョ


『やぁっ…んっ、しゅっう…』


淫らな音に、自分の声を被せる。


私の手を握り、キスをする彼にこんな時でも安心を得る。


「はっ…あ…瑞綺」

『まっ…て、もう…やっ』


何度も果てそうになる私の名前を呼ぶ声に、ビリビリと刺激が走り頭が真っ白になった。




『ん……』


意識が戻ったときには、私を乱した狼は隣で寝息を立てていた。


!!


数時間前の記憶が蘇り、身体が熱くなる。


『み、水…』


喉が張り付くくらい乾いているのに気付き、床に散らばった服を適当に身に付け、部屋を出る。


壁の時計を見ると21:30。

0時を回るまでには帰らないと。

夜勤であるお母さんは、朝8時にならないと帰って来ない。


水を探しに、入ったことのないキッチンへ向かう。


『未使用って感じだな…』


勿体無いくらい広くて大きいのに何も置いていない。

黒の冷蔵庫を開けると、缶、ペットボトル、瓶が敷き詰められていた。


愁らしいな、と苦笑いをし、水を手に取りリビングは向かう。


ソファに座り、ゴクリと水を流し込んでいると…


ーバタンッ


「瑞綺!………なんだここに居たのか」


半裸の狼が部屋から飛び出して来たことに驚き、口に含んでいた水が口から出る。


『っけほっはぁ…ビビるだろ、もうちょっと静かに開けろよ』


ぐちぐち言い溢れた水を拭く私に近付き、水を奪い取る。


「隣で大人しく寝とけよ。1人で帰ったかと思うだろ」


ゴクリと喉仏を動かす半裸の彼に、ドキドキとしてしまうのは事後だからだろう。


「身体、大丈夫か」

『あ、あぁ。まぁ、たぶん』


曖昧な返事をする私の横に座り、口が緩む彼。


『なんだよ、キモいぞ。顔』

「あ?足りなかったか?」

『勝手に言ってろ』

「顔が赤いぞ。瑞綺、ちゃん?」

『キモい。帰りたいから送ってくれ』

「門限は?」

『無い。けど0時までには帰りたい』

「まだ、余裕じゃねえか」

『仕事は?』

「こんなことしてんだ。終わったに決まってるだろ」


あぁ…流されたくないのに、余裕な彼に流されていく。

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