6
「なんで泣きそうになってんだ。振ってんのはお前だろ」
『愁悪いんだ!』
子供のように大きな声を出し、俺の胸をグーで殴る
「あぁ、俺が悪い」
『女をそうやって扱うから!』
「あぁ、悔やんでる」
胸をドンドンっと叩く彼女を受け止める。
『歳上しか抱かないくせに!その気も無い高校生に好意を向ける愁が悪いんだ!』
「…お前それどこで」
『どうせ私で面白がって、遊んでポイなんだろ!』
「遊びじゃない」
俯きながら子供のように言葉を吐き続ける。
『春都さんに言った好きは友達に言うのと同じだって!なんでわかんないんだ!』
「友達…?」
『経験豊富で余裕ぶってるくせに!なんでそういうのはわかんないんだよ!』
「わかった。わかったから落ち着け」
ヒートアップしていく彼女の声を落ち着けようと、声をかけるが逆効果だ。
『わかってない!!』
「勘違いして嫉妬した俺が悪かったって!」
珍しく大きな声を出した俺に、やっと瑞綺は顔を上げ目が合う。
「歳上だけだったのは、ガキは面倒だと思っているからで…でも、お前に出会ってから心臓がずっと痛いんだよ」
『そ、それは病院に』
「好きなんて知らないまま、愛情も無いセックスしかしてこなかった」
『一生悔めよ』
わかっている。
過去は変えられない。
彼女にとって俺の過去は毒だ。
普通の恋愛を、なんて叶わない。
ただ、ただ…
「どうしようもないくらいお前に惚れてんだ。それは信じてくれ…」
今の俺は情けない顔をしているんだろう。
『……』
「今日会った女がお前に何を吹き込んだかなんてたかが知れてる。そいつを俺が過去に抱いたのは事実だ」
純粋な彼女にとって、最低最悪な過去。
「酷いことをしてすまなかった」
そう言い、黙ったままこちらを見上げる彼女を抱きしめる。
「次泣かせるようなことしたら、俺を殺せ」
『…は?』
「笑ってて欲しいんだ。俺だけに」
『それは重いな』
「蹴散らすって言っただろ」
『春都さんは無理』
「ちっ」
舌打ちをする俺の体を華奢な腕が押す。
『なあ。私は面倒なの、か?』
「かなりな」
『じゃあさっきなんで、抱くなんて言った』
「抱きたいのは嘘じゃ無い。面倒ってのは俺を乱してくるその沼みたいな性格だ」
『なあ……優しく、してくれる?』
「あ?春都みたいにか?まあ、善処する」
『いや、違うくて……優しくしてくれるなら…抱かれたい』
「!?」
は?
抱かれたい、って…。
数分前俺が何したかわかって言ってんのか。
「おい、待て。それ以上煽るな。いいか?早まるな。今後、お前以外抱く気は無い。だから……」
今日は帰るぞ、と言おうとした俺の胸ぐらを掴み、唇を寄せた彼女。
『お母さん、夜勤なんだ』
そう言った彼女は、俺の唇に噛み付いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます