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「なんで泣きそうになってんだ。振ってんのはお前だろ」

『愁悪いんだ!』


子供のように大きな声を出し、俺の胸をグーで殴る


「あぁ、俺が悪い」

『女をそうやって扱うから!』

「あぁ、悔やんでる」


胸をドンドンっと叩く彼女を受け止める。


『歳上しか抱かないくせに!その気も無い高校生に好意を向ける愁が悪いんだ!』

「…お前それどこで」

『どうせ私で面白がって、遊んでポイなんだろ!』

「遊びじゃない」


俯きながら子供のように言葉を吐き続ける。


『春都さんに言った好きは友達に言うのと同じだって!なんでわかんないんだ!』

「友達…?」

『経験豊富で余裕ぶってるくせに!なんでそういうのはわかんないんだよ!』

「わかった。わかったから落ち着け」


ヒートアップしていく彼女の声を落ち着けようと、声をかけるが逆効果だ。


『わかってない!!』

「勘違いして嫉妬した俺が悪かったって!」


珍しく大きな声を出した俺に、やっと瑞綺は顔を上げ目が合う。


「歳上だけだったのは、ガキは面倒だと思っているからで…でも、お前に出会ってから心臓がずっと痛いんだよ」

『そ、それは病院に』

「好きなんて知らないまま、愛情も無いセックスしかしてこなかった」

『一生悔めよ』


わかっている。

過去は変えられない。

彼女にとって俺の過去は毒だ。

普通の恋愛を、なんて叶わない。

ただ、ただ…


「どうしようもないくらいお前に惚れてんだ。それは信じてくれ…」


今の俺は情けない顔をしているんだろう。


『……』

「今日会った女がお前に何を吹き込んだかなんてたかが知れてる。そいつを俺が過去に抱いたのは事実だ」


純粋な彼女にとって、最低最悪な過去。


「酷いことをしてすまなかった」


そう言い、黙ったままこちらを見上げる彼女を抱きしめる。


「次泣かせるようなことしたら、俺を殺せ」

『…は?』

「笑ってて欲しいんだ。俺だけに」

『それは重いな』

「蹴散らすって言っただろ」

『春都さんは無理』

「ちっ」


舌打ちをする俺の体を華奢な腕が押す。


『なあ。私は面倒なの、か?』

「かなりな」

『じゃあさっきなんで、抱くなんて言った』

「抱きたいのは嘘じゃ無い。面倒ってのは俺を乱してくるその沼みたいな性格だ」

『なあ……優しく、してくれる?』

「あ?春都みたいにか?まあ、善処する」

『いや、違うくて……優しくしてくれるなら…抱かれたい』

「!?」


は?

抱かれたい、って…。

数分前俺が何したかわかって言ってんのか。


「おい、待て。それ以上煽るな。いいか?早まるな。今後、お前以外抱く気は無い。だから……」


今日は帰るぞ、と言おうとした俺の胸ぐらを掴み、唇を寄せた彼女。


『お母さん、夜勤なんだ』


そう言った彼女は、俺の唇に噛み付いた。

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