乱
1
side瑞綺
『はぁ』
「ちょっと瑞綺ー!受験終わったのになにため息ついてんの??遊ぼ遊ぼ!!」
放課後の教室でボーッとする私に、莉紗の可愛い声が聞こえる。
『あぁ、いや。なんでもない。今日あいつは?』
「たっちゃん生徒会の用事なんだってー。引き継ぎって言ってたから終わる時間不明なの」
莉紗と竜也も同じ日に受験が終わり、毎日デートする!とはしゃいでいたのに、今日はそうでは無いらしい。
「ね!行きたかったカフェがあるの!瑞綺と一緒に行きたいの!!」
上目遣いで言う莉紗の頭をポンポンし、わかった、と返事し、立ち上がる。
よっしゃ、とガッツポーズをする莉紗の手が腕に絡まる。
本当、可愛いな。
愁も、こういう女の子が好きなのだろうか。
だとしたら……正反対だ。
莉紗が行きたいと言っていたカフェに着き、私はブラックコーヒーを頼む。
「相変わらず甘いの苦手なんだー」
『そっちこそ相変わらず激甘好きだな』
正反対の私たちは、だからこそ仲が良いのだろう。
周りに視線を感じるが、莉紗がいるせいだろうと思い、目の前の黒い液体をちびちびと飲む。
それから竜也の愚痴や、愚痴…少しの惚気と…愚痴を聞き、帰ろうかと席を立ちお会計を済ます。
お店を出て歩き出そうとした私たちに、声がかかった。
「ねえ、あなた」
振り返ると、背の高い綺麗な女性が1人…と強面の男が2人。
『私、たち…ですか』
「春妃、瑞綺…さんよね?」
『あぁ、はい』
まさかの、フルネームに悪い予感が働く。
「黒崎愁と、どういう関係?」
あぁ。やっぱり。
『どういう、とは』
凄む3人に、莉紗を背中に隠した私は冷静に目を見て返す。
「この前、あなたと愁がキスしているのを色んな人が見たって噂なんだけど」
『噂…?』
「そう。探れば黒崎の幹部があなたの周りにうろちょろしてるのを知って。あなたみたいなガキが愁に何の用かなって」
落ち着いた喋り声の中に不自然に混ざる、ガキ、という言葉に、眉をひそめる。
『とくに、用なんて。噂なのでしょう?勘違いでは?』
嫌悪を女性の表情から感じ、嘘をつく。
「勘違いですって?舐めないで。まああなたみたいな明らかに歳下なガキなんて愁が相手をするはずないけど……キスをするなんて良い度胸ね」
刺々しいな。
『それだけか?』
「へ?」
『言いたいことはそれだけかと聞いている』
冷静に冷静に……。
「なんなのあんた?私を誰だか知ってて口を効いてるの?後悔するわよ。高校生のくせに愁に近付くからいけないの」
あぁ。面倒。
綺麗な顔が崩れていく女性は、まだ続ける。
「いい?ガキ、愁には楓さんがいるの。それに歳下は抱かないのよ。あなたには一生無理ってこと。わかる?わかったら関わらないで」
『全然言ってることがわかりません、丁寧にもう一度最初っから「ふざけないでよっ!」
表情を変えず煽る私に手を振りかざす彼女。
先に手を出してもらったほうがいい。
正当防衛でやり返しても問題無くなる。
私にとって嫌な言葉だらけだったけれど、頭の中は至って冷静。
彼女の手がこちらに届くのを待っている、と。
ーパシッ
「おい、てめえ。ウチの姐さんに何の用だ」
目の前には、見たことのある長髪の男。
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