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『え、ここ、は?』
愁は先にスタスタと門の中へ入って行ってしまったので、近くにいた春都さんの隣へ行く。
「黒崎組の本家ってとこかな。さ、どうぞ」
本家って何だ?
聞きたかったが、どうぞと言われてしまい愁が行った道を追う。
「「「お疲れ様です」」」
!?
前にいた愁にビシッとお辞儀をする和装の男たち。
愁は慣れたように、ああと言い玄関に入って行く。
「瑞綺ちゃん?大丈夫?寒いから入ろうか」
『あ、ああ』
優しい声で春都さんが言い、一緒に中へ足を進める。
通された部屋は、12畳くらいの和室。
「瑞綺ちゃん、ここで待っててくれる?着替えて来るから」
『え?ちょっ』
私の声が届かないうちに戸が閉められてしまい、広い部屋に1人になる。
お母さんは夜勤と言っていたっけ。連絡はいいか。
真ん中に長いテーブルと、座布団数枚あるが、座る気になれずウロウロしていると、戸が開き着物に身を包んだ男が入ってきた。
『……愁』
「悪いな、急に連れてきちまって」
一度見たことはあったが、普段のスーツ姿からは感じられない別格のオーラが、謝る彼など耳に入らない私の体を硬直させる。
「おい、固まってんぞ。座れ。奴らが来る」
私の腰に手を置き、座る位置に誘導する彼にさっきまでの言い合いは何だったのかと思わざるを得ない。
「失礼します」
私が座ったタイミングで春都さんが入って来た。
お、着物だ。
真っ黒な愁の着物に対し、春都さんは差し色にシルバーが映えている。
ポケーッとその姿を見ていると、失礼します、と声の後に数人男が入って来た。
1人は知っている。嵐という男だ。
「座れ」
愁の低い声と共に、はっ、と揃えた声で全員が各位置に座る。
「忙しいのに悪いな。さっさと終わらせる」
反対側に座る男たちの視線が痛い。
そっと俯く私に
「春妃瑞綺。前も言ったが、嵐を助けて東郷に狙われてる」
私の名前を言う愁に、少しだけ心臓が跳ねる。
「聞いていた通りの美人さんですね」
「千隼、辞めろ」
赤髪の男、千隼がへらっと言った言葉に、春都さんが低い声を出す。
「嵐ちゃん助けてくれた子!やっと会えた!嬉しいなあ」
「光、はしゃがない」
金髪の男、光がパアッと明るい表情でこちらを見る。
「この女が?嵐を?嘘だろ。騙されてんだろウチの若」
「凛太郎、冗談は外で言え」
長髪の男、凛太郎が睨みを効かせる。
「瑞綺さん!ほんっとうにありがとうございました!!!」
ああ、嵐しかまともな奴がいないのか…?
「瑞綺は俺の女だ、守れ。できないなら…死ね」
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