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『は?嫌だったならそう言えよ』
やはり勘違いなことを思ってしまう子供の私は、さっきのお姉さんには簡単にさせてたくせに、と睨み返す。
「嫌なわけねえだろ。急に何だって話だ」
『したくなったからしたんだ、悪いかよ』
「っ…はぁ。お前……怖」
『あ??』
怖いとは何だ怖いとは。
好きな人からのキスが怖いってか?
すれ違いのイライラを放つ2人に声がかかる。
「愁!…と、瑞綺ちゃん、久しぶり。受験お疲れ様」
春都さんだと分かり、優しいお疲れ様、という言葉に力が抜ける。
「何してんの、探したよ。瑞綺ちゃん待つって言うからてっきり表にいると思ったのに」
『…待つ?』
「そうそう、こいつね昨日からソワソワしっぱなしで「春都、うるせぇ」
「仕事抜けて車出したの俺ね。仲良く車に戻って来ると思いきや、こんなところで何してんだ」
呆れながら言う春都に、私の肩から手を離しポケットに手を突っ込む愁。
『え、あの、どういう…』
状況?と2人を交互に見る私に、行くぞと愁が歩き出す。
私と春都さんを置き、さっさと前を歩く愁。
「1週間我慢してたんだ。甘えさせてあげて?ね?」
『……は?』
春都さんが、ごめん着いてきて、と耳打ちで言うので重い足を進めた。
「『……』」
「…君たちさあ、"恋人"同士になったんだよね?」
車が発進しても口も効かず窓の外を見つめるだけの2人に、運転席から呆れた声。
ーーー"恋人"
『な、なんで春都さんが知って…』
「ここ1週間の愁を見てたら分かるよ。誰でも」
「あ?」
春都さんは、やれやれ、と続ける。
「瑞綺ちゃんの見張りは毎日行くし、姿見えるとニヤニヤするし…さあ?」
ね?誰でも分かるでしょ?と心無しか楽しそうな春都さん。
「お前、あとで覚えてろよ」
低い声の方を見れば、足を組み、頬杖をつきながら窓の外を眺める彼。
表情が見たくて、そっと近付き肩に手を置く。
『毎日…見張り?…ニヤニヤ?……へえ』
「!?」
そんな私に驚き、やっとこちらを見た。
「だ、ま、れ」
そう言った顔は、少しだけ緩んでいて。
『会いたかったんなら連絡くらいしろよ』
「受験は邪魔できねえだろ」
『今日の話だ。きょ、う』
「会いに行ったら、てめえが変な行動起こしたんだろうが。あの初々しさはどこへ行った。あ?」
『変だと?恋人同士がしたら変なのか?あのセクシーなお姉さんは良いのに?意味わかんねえ』
「…ああ?なんのこ「ごめんね、話し合いの最中。着いたよ」
距離が近いほど喧嘩腰になる私たちに、苦笑しながら春都が振り向く。
「ちっ」
2人が降りたので、急いで降りる、と目の前にはマンションではなく…でかい屋敷。
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