7

「大胆な返事をどーも」


大きな体にすっぽりと私を収め、耳元で言う愁に、さらに耳まで熱くなるのを感じた。


ーーードッドッドッドッ


心臓は爆発寸前。


ーーーああ。死ぬかも。


ギリギリの状態の私から体を離し、海見よーぜ、と余裕の愁は暗闇に目を移した。


『っっ。う、うん』


らしくもない返事をし、愁の隣で波打つ海を眺めた。

上着を車に置いてきてしまいブルッと震えた私に、もう戻るか、と手を引き車に向かう大きな背中。


「家まで送る」


そう言ってエンジンをつけようとした愁を私は遮る。


『つ、付き合うってことなのか?』


俺の女、という聞き慣れない言葉に、私はそう聞くしかなかった。


「ああ」

『っ!…そ、そうなのか、わかっ、た』


ハッキリとした返事に動揺している私に、愁が付けていたシートベルトを外し、体を近付ける。


『……っっ』

「なんだよ、付き合うってのが不満か」

『ち、違くて…こういうの初めてで、どうすればいいかわかんなくて』


目を合わせられなくて視線を下に落とした私に、さらに顔を寄せ…キスをした。


『!!』


すぐに離れた唇が開く。


「慣れろ」


そう言い、また唇を寄せる愁の肩を両手でグシャリと掴み若干の抵抗をしたが、その力は弱く簡単にくっ付けられた唇。


『…っん…っ』


食べるようなキスの連続に、自然と声が漏れる。


『んんっ…ちょ…っしゅ、うっ』


息が苦しくなり必死に声を出す。


ドンドンと大きな胸板を叩くと、ゆっくり離れた唇。


「…ふっ、慣れろ」


そう口角を上げた彼は、シートに体を戻し車を走らせた。


『……はぁ』


息を整える私。

慣れろ?だと?これに?

死ぬ。


「今そんなんで大丈夫か?次はお前死ぬんじゃねえの?」


余裕そうな声が聞こえて、この先何が待っているかをただでさえギリギリな頭で考える。


『……次?』


考えても無理だった私は聞くしかなかった。


「付き合ってりゃ、手も繋ぐしキスもするしセックスもするだろ。次、お前死ぬかもな」

『………』


セックス、と言う言葉に目に光が消え、俯く私。


「ん?どうした」

『……っあ、ああ別に』


俯いて震えた声を出した私に、勘違いした言葉がかかる。


「初めてのやつにそんな強引なことすぐにはしないから安心しろ」


"初めて"じゃ無かったとしたら…。


『……経験はある』

「あ?…お前初めてってさっき」

『付き合うのもキスをするのも初めて、だ』

「なんの経験だよ」


思い出したくない記憶が…蘇り始める。


『……セックス』

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