6
『あーーお腹いっぱい、ご馳走様でした』
「満足そうでなによりだ」
『愁も、だろ?』
デザートのシャーベットを食べ終わりお腹をさする私に、自分もかなりの量を食べたであろう愁が口角を上げながら言う。
「ほら」
クロークから私の上着を出した愁が、こちらに渡す。
『ありがと』
鞄を持つ反対の手でそれを受け取り、寒くも無いし着る必要ないか、と腕にかける。
お金は、と問う私に、気にするな、と歩き始めた愁の後を追う。
店を出て止まっている見慣れた車に向かい、後部座席のドアを開こうと腕を伸ばす手が、男の手によって静止された。
「助手席……乗れ」
『……え』
「いいから乗れ」
愁は私の手を引っ張り、助手席のドアを開き、乗れと急かす。
私は愁の強引さに負け、落ち着かない助手席に座る。
「どこか行きたいところあるか」
『んー……春都さんのBar、とか?』
運転席で携帯をいじる愁の問いに、特には無かったが、先ほどの会話で興味を持った場所を答える。
「あ?未成年だろ。ガキには早えーよ」
そう睨みを効かせ言う愁にムッとなり、じゃあ海、と適当に答える。
「海…な。了解」
まさかのOKの返事に、運転席に顔を向ける。
「…んだよ。少し時間かかるから寝とけ」
柔らかい表情でそう言い、私の頭に手を置く愁。
ーーーボッ
顔が赤くなったのが自分でもわかり、顔をバッと窓に向け、寝とく、と呟き外に目を移す。
そして安全運転の車の心地よい揺れに目を閉じた。
「……いたぞ。着いたぞ起きろ。瑞綺」
『んん』
「よくそんなに爆睡できるな」
まだ眠さの残る目を擦り声のする方を向くと、呆れ顔の愁が、降りろ、と言い外に出る。
!!海か…。
慌てて外へ飛び出し、見渡すと真っ暗な海が広がっていた。
『……綺麗』
月に照らされてキラキラと光る波に、思わず言葉が出る。
「砂浜まで行こうぜ」
そう言って私の手を掴み歩き出す愁に、鼓動が速くなる。
ーーーああ。どうしよう。止まらない。
波打ち際に並んで海を見つめる。
「…なあ、瑞綺」
『…ん?……!』
優しく私を呼ぶ声と裏腹に、手を掴む力が強まった。
ーーードクッドクッドクッ
「好きになっちまった」
『………ああ。……ん?え?』
「瑞綺」
突然の言葉に驚く私の名前を呼び、繋がれていた手は離れ、私の頬へ伸びる。
「……好きだ」
ーーードクッドクッドクッ
ああ、これが告白というものか。
「……瑞綺?」
固まって愁の目を見つめ続ける私に、目線を合わせる彼。
『あ、えっと…それはつまり……』
「俺の女になれ」
想定外の強引な言葉に、喉をゴクリと鳴らす。
『あのっ…』
「俺のこと、…嫌いか?」
困ったように言う愁に、違うと言いたくて息を吸い吐き出しながら言う。
『わ、たしも!好きだ!』
叫ぶに近い勢いで言った私に、愁の目が丸くなる。
…が、すぐに細まり、真っ赤な顔の私を抱きしめた。
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