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『はぁ…』


学校が終わり、今日も1人でクラブに向かう。

昨日のことがあったからか、人通りの多い道に足を進め通り遠回りしながらクラブに向かう。


「…ずき?みーずーき」

『!?』


ボーッと歩いていた私の肩に手が置かれる。

警戒心が強まっていた私は、その手を掴み捻り上げて、振り返る。


「いてててててっ。なんだよ、やる気か?」


痛いと声を出す男を確認すると、知った顔。


『旬』

「久々に会ってこれ?ツンツン度が増してんなあ。俺は寂しかったって言うのに」

『あ、あぁ。わ、悪い』


パッと手を離す私に、手首をグリグリ回しむくれるこの男は、須藤旬。

同じジークンドークラブに通う大学生。


「2週間も何してたんだよ。風邪?インフル?」


そう言いながら歩き始めたので、私も合わせて隣を歩く。

休んでいた理由は知らないらしい。

言ってないからそれもそうか。

教官だけには怪我した、とだけ連絡していた。


『まあそんなとこ。なんだよそんなに私が恋しかったのか?』


意地悪な顔を旬に向け、ニカッと笑う。


「瑞綺の方こそ、どうせ俺と会えなくて寂しくて泣いてたんだろ」


腰を屈め私の顔を覗き込みながら髪をクシャッとする旬を、受け入れる。


『はいはい。泣いてた泣いてた』


私も旬の頭に手を伸ばしポンポンと、棒読みで慰め少し遅くなった足を早める。


旬は21歳。

私がクラブに入った時にはすでにいたから、ずっと兄のような存在で仲良くしている。


「勉強は?順調?」

『どうだろ』

「受かれば俺と同じ大学かーー、後輩な瑞綺もまあ悪くない」


私が受ける九条大学の学生である旬は、マフラーに口を埋め続ける。


「無理すんなよー、そんで絶対受かれよ?」


どっだよ、と笑う私の肩に旬は手を伸ばし、肩を組む体制に。


『おっっも』

「俺勉強付き合うよ?」

『うざそうだから大丈夫』

「酷いなあ、こう見えても真面目なんだけどなあ」


こんなやりとりも慣れたもので、数週間ぶりに日常が戻ってきたと実感する。


「お!お前らーこんな夕方からイチャイチャすんなー」

「染谷さーーん、瑞綺が冷たいーー」


クラブの入り口から教官が顔が覗き、旬が私から離れ中に入って行く。


「久しぶりだな瑞綺」

『今日からまたよろしく頼む』

「よっしゃ!バッキバキにしごいたるからな!早く着替えろー5分後には始まるぞー」

『ういー』


怪我には触れてこない教官に、ホッとし、久々の運動の時間を楽しんだ。




…その流れを、愁が見ていたとも知らずに。

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