2
『はぁ…』
学校が終わり、今日も1人でクラブに向かう。
昨日のことがあったからか、人通りの多い道に足を進め通り遠回りしながらクラブに向かう。
「…ずき?みーずーき」
『!?』
ボーッと歩いていた私の肩に手が置かれる。
警戒心が強まっていた私は、その手を掴み捻り上げて、振り返る。
「いてててててっ。なんだよ、やる気か?」
痛いと声を出す男を確認すると、知った顔。
『旬』
「久々に会ってこれ?ツンツン度が増してんなあ。俺は寂しかったって言うのに」
『あ、あぁ。わ、悪い』
パッと手を離す私に、手首をグリグリ回しむくれるこの男は、須藤旬。
同じジークンドークラブに通う大学生。
「2週間も何してたんだよ。風邪?インフル?」
そう言いながら歩き始めたので、私も合わせて隣を歩く。
休んでいた理由は知らないらしい。
言ってないからそれもそうか。
教官だけには怪我した、とだけ連絡していた。
『まあそんなとこ。なんだよそんなに私が恋しかったのか?』
意地悪な顔を旬に向け、ニカッと笑う。
「瑞綺の方こそ、どうせ俺と会えなくて寂しくて泣いてたんだろ」
腰を屈め私の顔を覗き込みながら髪をクシャッとする旬を、受け入れる。
『はいはい。泣いてた泣いてた』
私も旬の頭に手を伸ばしポンポンと、棒読みで慰め少し遅くなった足を早める。
旬は21歳。
私がクラブに入った時にはすでにいたから、ずっと兄のような存在で仲良くしている。
「勉強は?順調?」
『どうだろ』
「受かれば俺と同じ大学かーー、後輩な瑞綺もまあ悪くない」
私が受ける九条大学の学生である旬は、マフラーに口を埋め続ける。
「無理すんなよー、そんで絶対受かれよ?」
どっだよ、と笑う私の肩に旬は手を伸ばし、肩を組む体制に。
『おっっも』
「俺勉強付き合うよ?」
『うざそうだから大丈夫』
「酷いなあ、こう見えても真面目なんだけどなあ」
こんなやりとりも慣れたもので、数週間ぶりに日常が戻ってきたと実感する。
「お!お前らーこんな夕方からイチャイチャすんなー」
「染谷さーーん、瑞綺が冷たいーー」
クラブの入り口から教官が顔が覗き、旬が私から離れ中に入って行く。
「久しぶりだな瑞綺」
『今日からまたよろしく頼む』
「よっしゃ!バッキバキにしごいたるからな!早く着替えろー5分後には始まるぞー」
『ういー』
怪我には触れてこない教官に、ホッとし、久々の運動の時間を楽しんだ。
…その流れを、愁が見ていたとも知らずに。
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