攻め
1
side瑞綺
ーピピピッピピピッ
ーーぐわっ
ああ、全然眠れなかった。
昨日の出来事を思い出し、"恋とは"と検索するが、
昨夜の時点で検索欄は同じ文字で埋め尽くされていた。
つまり、堂々巡りしている私の脳内。
焼肉を約束し、連絡先を渡した。
……ヤクザの若頭と。
…そう。普通の学生なら話はもう少し簡単だった。
…ヤクザ。……あんまり良くは無いイメージ。
イメージで勝手に判断するのも良くは無いか。
受験よりも深く考える私は、学校へ向かう。
明らかに私の後ろを、遠くから着いてくる黒塗りの車。
黒崎のとこのだと思っておくしかない。
「みーずきちゃん!おっはよん!!」
『おはよ…莉紗』
「!?なにそのクマ!!?寝ずに勉強!?!?」
『そんなに酷い顔してるのか…私』
「うーんなんか。下手な化粧してるみたいよ!」
相変わらず可愛い明るい声で合流する莉紗に、やっと脳内がすっきりした。
莉紗にこのことを話そうか…いや、でもなあ。危ない系だもんなあ。
『莉紗たちってどっちから告ったんだっけ』
できるだけいつも通り、自然に聞いてみる。
「なにいきなり恋話?告白はねー、私から!」
とびきりの笑顔をこちらに向け答える莉紗に、女の私でもドキッとしてしまう。
『へえ、そうだったのかーー。ちなみになんて言ったの』
自然に自然に。
「んーっとー…2年前からずっと好きです!っだったかなあ」
「違うだろ?ずっと好きでした、付き合ってください。だろ?」
後ろから竜也の声。
「さすがたっちゃん!!記憶力良い!!」
振り向きながら、天才!と拍手する莉紗に、竜也はニコニコしている。
……おい。
できるか?私に。これが。
『なんか羨ましいなお前ら』
ボソッと声が出る。
「瑞綺!?熱あるんじゃないの!?」
「お前もやっっっと恋愛の良さがわかってきたか!おじちゃん嬉しいよー」
慌てて私の顔を覗き込む莉紗と、おじちゃんムーブの竜也に、だる、と言いスタスタと校門に入る。
そんなことよりも今は勉強、勉強。
昨日行くことができなかったクラブにも、今日こそは行きたい。
あそこに行って体を動かせば、パンクしそうなこの頭の中もさすがにスッキリするだろう。
1日中、ニヤニヤこちらを気にする莉紗と竜也に意識を向けないようにひたすらノートと睨めっこしていた私。
気付きたくはないが、恋…のようなものをしっかりと感じている。
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