6

「これからの話をしようか」


春都さんの急な落ち着いた声に背筋が伸びる。


「瑞綺ちゃんには、俺らに守られてもらう」

『……は?』

「東郷のやつ手荒でね。今回なんて生温い方だ。次は誰か殺されるかもしれない」


これは…今までに縁の無い危ない世界の話だ。

チラリと前に目を向けると、腕を組み鋭い目をした愁とバチっと目が合う。


ーーードキリ


心臓の音を誤魔化すように春都さんに話しかける。


『それって、いつまで?』

「どうだろう。瑞綺ちゃんの安全が確実に保証されるまで、かな」


婆ちゃんになっても守られている可能性も、無きにしも非ずってこと…なのか……?


「東郷はいずれ落ちる。それまでは俺らに囲まれておけ」


愁がタバコに火をつけ言う。

無意識に私の眉間に皺がよる。

すると、立ち上がった愁が窓の方へ行き外を見ながら煙を吹かす。


「瑞綺ちゃん、ごめんね。ここ禁煙じゃないんだ」


隣からボソッと耳打ちされた言葉。

私がタバコ嫌いだと覚えていてくれた春都さんに感謝の目を向ける。


『私、12月に受験があるんです。なにかあったら困るので、守ってくれるのは凄くありがたい』

「受験…大学の、だよね?」

『はい』

「瑞綺ちゃんがそう言ってくれるのなら喜んで守るよ」


ニコッと笑った顔を向けてくれる春都さん。


『ただ。プライベートには極力入ってこないでほしい、です』

「プライベート?」

『普通の高校生なので。友達と遊んで、デートして習い事して、勉強して、家に帰ってお母さんが作るご飯を食べる。日常は失いたく無い』


デートは余計だったか。


「…!?……そう、だよね。わかった。なるべくプライベートは干渉せずに護衛するよ」


ハキハキと言った私に、若干驚いている春都さんは、どうやら理解してくれたらしい。


……が、


「そうしたいのは山々なんだけど…うちの頭がねえ……瑞綺ちゃんのこと、気に入っちゃったみたいでねえ」

「…そうなんか!?若!?」


春都さんのニヤけ声に被さってきた、運転手逢沢さんの渋い声。


「ちっ。余計なことベラベラ喋ってんじゃねえ。話が終わったんなら家まで送ってやれ」


ソファにどすっと座りながらタバコの火を消し、春都さんを睨む愁。


「はいはい、今日のところは帰ろうか瑞綺ちゃん。てかさ、愁が送ってやれよ。時間まだあるだろ」

「あ?なんで俺が。逢沢、行け」

「おれぁ今から親父の手伝いですぜ、じゃ、失礼しやす。瑞綺さん、また」

「ちっ」

『あ、ありがとうございました』


テンポの速い会話についていくのがやっとで。

じゃ、と行って去っていく逢沢さんに、急いで立ち上がりお辞儀をする。

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