3

『だから、1対3の1が偶然、黒崎ってやつの方だったって言ってんの。もし1があんたらだったら、あんたらを助けてたって言って「おまえ馬鹿なのか?」


私の説明を遮って、そう罵り髪から手を離した男。


やっと解放され、自由に動かせる顔で部屋を見渡す。

暗い部屋に、あるのは私たちがいる2つのソファと真ん中のテーブル。明るくするはずの電気はなぜか薄く光るだけ。


「名前は」

『みずき』


調べたなら名前くらい知ってんだろ、と思いながらも、解放されていた足を寝ていた状態から動かしソファに座り名乗る。


「俺らのことは?知ってんのか?」


私の話を信じたのか、1人掛けのソファに戻り足を組む男。


『全く。なにも』

「東郷連合若頭、東郷要だ。よろしくな瑞綺、ちゃん?」


そう言いニヤリと笑みを浮かべた、要という男。


「さて、おまえをどうすっかなあ……なあ?」

『帰らせろよ』

「黒崎潰す駒にしようと思ってたんだけどよお、関係無いならいらねえか」

『こ、ま…』

「美人なうえ強いんならウチに入れたいけどなあ、俺の女にするのもかなり有りだ……なあ?」

『はぁ……』


帰りたい。これからどうなるんだろうか。

お母さんをまた心配させてしまうことへの罪悪感が、気持ちを落ち込ませる。


ーーバタッ


「要さん!失礼します、…っ黒崎が」


突然ドアが開き、男の声がする。


「ああ、はえーな。お出ましか。通せ」

「はい」

「お迎えだ、瑞綺ちゃん」


焦る様子もなく、ニヤリとこちらを見る。


『お迎えって……黒崎愁が?』

「やっぱあいつのことは知ってるんだな。賭けで連絡したんだよ」

『か、け?』

「おまえが黒崎のところのやつだったら、人質にできるかも、っていう賭け」


ギラつく目。

金髪のせいでライオンに見えてくる迫力。


「まあ、一般人ってことは賭けも無し。でも迎えにきたってことは……な?」


ーーバタッッッ


先ほどより強く開けられたドア。


「……東郷」


私の後ろで、知った低い声が響く。


「久しぶりだなあ?黒崎。頭が自ら来るとは、なあ?」

「こいつに仲間を助けられた。だからだ」


愁の顔は背を向けているため見えないが、無機質な低い声から表情が想像できる。


「ふっ…まあ、いい。もうちょっと遊んでいたかったが、残念だ。連れてけ」

『…え、帰っていいの、か?』


予想より早い展開に戸惑う。


「なんだあ?俺と遊びたくなったか?いいぜ、おまえがそう望むなら、たっぷり遊んでやる、瑞き「手錠を外せ」


またギラリとした目を私に向けている要に、低い声が被さる。

愁が私の腕を掴み立たせ、手錠のついた手を要の方に向ける。

必然的に愁の胸の前に顔がいく体勢に、少しドキりとする私の心臓。


「ちっ」


要の舌打ちとともに、チャリンと投げられた鍵。

それを器用に使い、愁によって私の両手は解放された。



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