接近
1
side瑞綺
あれから2週間。
12月に控える大学受験のため、安静のついでに学校が終わったら家に籠り、猛勉強していた。
黒崎愁と春都さんとは、あれっきり何も無い。
週2で行っていたジークンドーもとりあえず休み。
肩は傷がまだ残るものの治ってきているから、今日から行こうか迷っている。
「おっはよー!みずきーーー!」
『おはよ。莉紗』
学校へ向かう途中いつも通り、友達の莉紗と合流。
「受験嫌だあああああ!!!」
『それ昨日も聞いた』
いや毎日聞いている。
勉強嫌いな莉紗の叫びに、へらっと笑いながら返す私。
「瑞綺は今日も女神みたいに綺麗ですなー!そのくせ勉強もできちゃって、ついでに強くって、嫁にしたいよー!!!」
莉紗の明るい声に、登校中の生徒たちがこっちを見る。
私と違い、可愛い莉紗は注目されやすい。
『声がでかいんだよ。また見られてんぞ。嫁って…なあ、彼氏いんだろ』
呆れながら言う。
「誰を嫁にしたいって?」
「ゲ。たっちゃん」
莉紗の頭にチョップをしながら現れたのは、莉紗の彼氏の佐伯竜也。
「おはよう、莉紗。おはよう、瑞綺。2人揃うとさらに目立つね」
『おはよ』
「たっちゃんーーー受験嫌だよおおおおお」
先ほど私に浴びせていた叫びを、竜也に向ける莉紗。
「はいはい。今日も勉強見てやるから、あと少し頑張ろうな」
脇腹に抱きつく莉紗の肩を、ポンポンとしながら
笑顔で励ます竜也。
カップルのお手本って感じの2人。
私には……無理だ。
クラスが同じ私たちはそのまま3人で教室まで歩いて行く。
この2人は太陽と太陽って感じで、周りからの注目度も高く、私はとても気まずい。
「瑞綺も早く彼氏作って、クリスマスはダブルデートしようよ!!!ね!たっちゃん!」
「瑞綺のレベルに合う男なんてこの世に存在するのか?それはもう最強な男じゃないとなー」
「んー、2組の那須君とか!?どう?どう?」
「あいつは筋肉バカなだけだからな、だめだな」
勝手に私の彼氏を探す2人を横目に、教室へ入る。
彼氏…か。
恋愛とかよくわからない。そういう感情が沸く相手に会ったことがないから。
でも2人を見ていると微笑ましくて、羨ましい…とは少しだけ思ったりもする。
「瑞綺さ、私たちにするみたいに笑えば他の男子なんてイチコロなのにー!」
莉紗に前言われた言葉をふと思い出す。
莉紗と竜也には、友達だからか自然と笑えているらしい。
他の人とはあまり喋る機会が無さすぎて、笑う状況に無い。と、莉紗に言えば、おはよう、ニコッてすれば良いんだよ!と返されたので自分には無理だとすぐに笑顔に対する興味を失った。
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