8

『ただいまー』


ーバタバタバタバタッ


「瑞綺!!!」

『わっ!』


リビングから走ってきたお母さんに抱きしめられる。


「喧嘩って?!」

『ああ……クラブの奴らがまじな喧嘩始めちゃってさ、私がとめたんだ。それで…肩に思いっきり拳が入っちゃって……。教官、じゃなくて染谷が手当してくれた。だから大丈夫。ごめん、心配かけて』


考えていなかった言い訳を、高速で頭をフル回転させ思いついた言葉を並べる。


「……そういうことね。もう!心配したんだから!!はやくお風呂入ってご飯食べちゃって!温め直すから!」


完全に信じて安心の笑顔を向けるお母さんが、またバタバタとリビングへ消えていった。


『…ふーーー』


なんとか大丈夫そう、か。

時計を見れば0:00。

そりゃ心配するよな。


しばらくは大人しくしてようか。


あの男……黒崎愁。

怖いし冷たいと感じていたけれど、最後に見せた目は…とても綺麗だった。




ーーー出会いは、簡単に、突然、予告無しに訪れた。

色恋沙汰なんてものは小学校で終わった鈍感で男勝りな私に、目を付けたのは、鋭い目をもつ狼。

喰われるのは時間の問題。

もうすぐ2人は惹かれあい、



ーーー落ちる。


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