7
「僕は桜木春都。瑞綺ちゃんの隣の人は…「黒崎愁だ」…この県に拠点を置いている黒崎連合会に入ってる。今日瑞綺ちゃんが助けたのは、僕たちの仲間の嵐っていう子。最近風邪引いたって言っていたから、弱ってるところを敵対してる奴らに狙われたんだと思う」
落ち着いた声で説明してくれる春都さん。
…でも、
『…黒崎連合って?ジークンドーのグループの名前か?』
ジークンドークラブにも似たような名前が付いている。だから同じような感じか?
「……ジークンドー…?へ???」
「ヤクザだ」
戸惑っている春都さんを置いて、隣にいる愁という男が口を開く。
『や、やくざ……。あなたたちは、ヤクザだと』
「そういうことだ。お前はヤクザ同士の喧嘩に巻き込まれた」
松山さんが言っていた、危ない人とはこういうことだったのか。
『私、これからどうなりますか?』
「瑞綺ちゃん、なんか…落ち着いてるね。そうだね、これから…とりあえずは家まで安全に送るよ。連絡先、渡しておくから何かあったらすぐ連絡ちょうだい?いいね?」
『何かあったら?』
「念のためだよ。受け取って?」
信号が赤になり停車した瞬間、運転席からメモを渡してきた春都さん。
「瑞綺ちゃん、ジークンドーやってるの?」
『はい、主に空手ですけど』
「あーなるほど、だから奴らを倒せたんだ、凄いね」
『凄い……ありがとうございます』
「僕ら剣道しかしたことないからなー」
そう言いながら春都さんはアクセルを再び踏み始める。
落ち着いたテンポの良い会話で少し和らいだ顔も、隣からの嫌いなタバコの匂いで、どんどん眉間に皺がよっていく。
「お前、ちょっとは笑えねえのか。なんでそんなしかめっつらなんだ」
愁がこっちを見ずにぶっきらぼうに語りかける。
『笑える状況じゃねえだろどう見ても。嫌いなんだタバコの匂いが』
春都さんに対してギリギリ敬語で話せていた口調も、イライラしてボロが出ていく。
「あ?誰にそんな口きいてんだ」
『知らねえよ。そっちこそお前とか言ってくんな気分悪い』
「おいてめえ「まあまあ。愁、歳下にそんなムキになるなって。ごめんね、瑞綺ちゃん。こいつウチではかなり偉い方だからこんななの」
「おい、こんなってなんだ」
「あ、ここかな?瑞稀ちゃん着いたよ」
「はぁ…」
言い合いが始まろうとした時、ちょうど家に着いたらしい。
春都さんが車から降りて後部座席のドアを開ける。
『ありがとうございます』
私はささっと降りて頭を下げる。
「こちらこそ、嵐を助けてくれてありがとうね」
春都さんも私に合わせて頭を下げる。
「風邪引くなよ」
やっと私の顔を見て喋った愁が渡してきたのは、ジャケット。
ーーードキリ
『目』
「あ?」
『あんたの目綺麗だな』
「「……」」
『なんだよ2人して固まって。じゃあ、これで』
私を見ている2人を置いて、ジャケットを羽織りながらエントランスに入る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます