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「僕は桜木春都。瑞綺ちゃんの隣の人は…「黒崎愁だ」…この県に拠点を置いている黒崎連合会に入ってる。今日瑞綺ちゃんが助けたのは、僕たちの仲間の嵐っていう子。最近風邪引いたって言っていたから、弱ってるところを敵対してる奴らに狙われたんだと思う」


落ち着いた声で説明してくれる春都さん。

…でも、


『…黒崎連合って?ジークンドーのグループの名前か?』


ジークンドークラブにも似たような名前が付いている。だから同じような感じか?


「……ジークンドー…?へ???」

「ヤクザだ」


戸惑っている春都さんを置いて、隣にいる愁という男が口を開く。


『や、やくざ……。あなたたちは、ヤクザだと』

「そういうことだ。お前はヤクザ同士の喧嘩に巻き込まれた」


松山さんが言っていた、危ない人とはこういうことだったのか。


『私、これからどうなりますか?』

「瑞綺ちゃん、なんか…落ち着いてるね。そうだね、これから…とりあえずは家まで安全に送るよ。連絡先、渡しておくから何かあったらすぐ連絡ちょうだい?いいね?」

『何かあったら?』

「念のためだよ。受け取って?」


信号が赤になり停車した瞬間、運転席からメモを渡してきた春都さん。


「瑞綺ちゃん、ジークンドーやってるの?」

『はい、主に空手ですけど』

「あーなるほど、だから奴らを倒せたんだ、凄いね」

『凄い……ありがとうございます』

「僕ら剣道しかしたことないからなー」


そう言いながら春都さんはアクセルを再び踏み始める。


落ち着いたテンポの良い会話で少し和らいだ顔も、隣からの嫌いなタバコの匂いで、どんどん眉間に皺がよっていく。


「お前、ちょっとは笑えねえのか。なんでそんなしかめっつらなんだ」


愁がこっちを見ずにぶっきらぼうに語りかける。


『笑える状況じゃねえだろどう見ても。嫌いなんだタバコの匂いが』


春都さんに対してギリギリ敬語で話せていた口調も、イライラしてボロが出ていく。


「あ?誰にそんな口きいてんだ」

『知らねえよ。そっちこそお前とか言ってくんな気分悪い』

「おいてめえ「まあまあ。愁、歳下にそんなムキになるなって。ごめんね、瑞綺ちゃん。こいつウチではかなり偉い方だからこんななの」

「おい、こんなってなんだ」

「あ、ここかな?瑞稀ちゃん着いたよ」

「はぁ…」


言い合いが始まろうとした時、ちょうど家に着いたらしい。

春都さんが車から降りて後部座席のドアを開ける。


『ありがとうございます』


私はささっと降りて頭を下げる。


「こちらこそ、嵐を助けてくれてありがとうね」


春都さんも私に合わせて頭を下げる。


「風邪引くなよ」


やっと私の顔を見て喋った愁が渡してきたのは、ジャケット。


ーーードキリ


『目』

「あ?」

『あんたの目綺麗だな』

「「……」」

『なんだよ2人して固まって。じゃあ、これで』


私を見ている2人を置いて、ジャケットを羽織りながらエントランスに入る。


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