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side瑞綺


『お疲れ様でしたーーーー』


「あいよー」「おつーっす」「またねー」


週末2時間の稽古を終え、ロビーのソファに腰掛け水を流し込む。


ジークンドークラブに通い始めて13年。

"自分の身は自分で守れ"

そう両親に言われ無理矢理習わされたこれも、とある理由で火が付き、指導資格を取れるレベルまでに成長してしまった。


「瑞綺、お疲れ」

『どーも教官』

「この後飯でもいかがかな?」

『母の料理が家で待ってるんで、じゃ』

「相変わらずだねえ、君は」


私が教官と呼んだこの男。


ジークンドークラブの指導者である、染谷忍。

身長180cm越えの鍛えられた体格、キリッとした眉、鬱陶しそうな黒髪をかきあげ、嘘っぽい笑顔を顔に貼り付けた鬼教官。


じゃ、と言い扉に手をかけた私にまた声をかける。


「この街が最近物騒になったって聞いた。気をつけろよ」

『物騒って?熊?強盗?』

「んーーーーーなんていうか」

『なんだよ。詳しく知らないの?』

「危ない系」

『なんだそれ。じゃあ教官も気をつけないと。じゃね』

「……ぉお。そうだな…」


ーガチャン


何か言いたげな教官を残し、さっさとクラブを出る。


『うぉっ寒っっ』


11月に入ったばかりの季節。

さっきまで熱を帯びてた体が、風によって一気に冷めていく。


"今終わった、帰る"


手早にメールを送りながら、繁華街に向かって足を進める。

ここを通らないと家に帰れない。


それにしても寒すぎる。

ロングジャケットのポケットに手を入れ、早歩きで繁華街に入る。


22時をまわったここは、週末ということもあってかいつもより騒がしい。

それが嫌で、抜け道を通ろうと裏道に入った。



確実にアレに巻き込まれた原因は、この選択か。

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