水羽の思惑と……

(仙頭水羽)


「水羽さん! どうして譲ってくれたんですか?」

「水羽さん、何で?」


 今週はしなかったけど及川さんへの報告会のあと、真希と透子が私の部屋を訪れた。

 二人とも、心底疑問、といった表情。


 そりゃそう。

 及川さんは最愛の男性で、世界で一番格好いい男性。

 少し裸を見てもらうだけで私は果て、快感の渦に飲まれたくらい及川さんには魅力が詰まっている。


 そんな男性からのご褒美を譲るだなんて、絶対にあり得ないことだ。


 事実、新たにリクエストしたいご褒美は山ほどあって、想像するだけでも甘い快感に身が蕩けそうになるし、あそこは欲しがってどろどろとして勝手に閉まる。


 気がおかしくなりそうなくらいに及川さんのご褒美を求める疼きに、体は燃え上がりそうになるくらい火照るが、ここは耐え忍んで譲るのが正解なのだ。


「いやードラマで観た沙耶香に感化されちゃってさー。私も、友情というやつを大切にしたかったんだよ」


 私の言葉に「沙耶香さん!!」と感激して、瞳を煌めかせる二人には悪いが、全くの嘘だ。


 友情とは、むしろ正反対の理由。


 このまま私がご褒美にありつき、及川さんを独占することは理想だが、現実的ではない。


 及川さんという餌を私が貪り続ければ、飢えた性獣どもが不満を募らせ、やがて私を排除する方向へとシフトするだろう。


 今は徒党を組まれてしまえば抗う力がないので、排除され、餌を奪われてありつけなくなるくらいなら、餌を共に食らうことが大切なのだ。


 また真希と透子の二人を指名することによって、徒党を組みやすい二人に仲間意識を植え付けることも目的。


 裸を見てもらえた夜から、視界が広がり、周囲がよく見えるようになって気づいたことがある。


 私に比べるまでもないが、沙耶香の及川さんへの想いは大きくて昏い。

 いずれ独占しようとするかもしれないので、その際には排除する必要がある。

 よってこの二人にもご褒美の味を覚えさせ、沙耶香の横暴を許さぬ感情を育みつつ、私を仲間だと思わせておきたかった。


 以上、二つ。

 私が二人に譲った理由はそれだけだ。


「まあ、私は前回出来たし、今回は二人がリクエストしなよ」

「水羽さん、本当にありがとうございます!」

「いいって、いいって」

「恩に着る〜」

「あはは。じゃあ今度逆に、二人が出来たって時が来たら、そんときは私も混ぜてよ」


 透子と真希が「勿論!」と強く頷いたのを見て、私は内心ほくそ笑んだのだった。



 ***


 午前0時を回ってすぐ。

 ドアのノックが響いて、俺は食い気味に答えてしまった。


 若干の緊張感があった。

 前回水羽の件があったせいだ。


 裸を見て欲しいとのご褒美。

 俺にとっては過激すぎて、しかもただの裸ではなく、俺を求める淫美な女体だった。

 

 今回もそれに近しい要求をされるのではないか、と間近に迫って緊張していたわけである。


「し、失礼します」

「こんばんは……」


 入ってきた二人を見て、緊張が高まる。

 服装は、シルエットが大きなパーカーに、下は……見えない。

 透子の運動で引き締まったしなやかな美脚と、真希のほっそりとした生脚があらわになっている。

 二人とも表情は既に、興奮の色が浮かんでいて、心臓が痛いほどの鼓動を打ち始めた。


 唾が喉に流れ込んだが、いやいや、と内心首を振る。


 ご褒美は二人。

 自らの痴態を親友に見られたくないというのが普通。

 過激なお願いをして引かれたくないだろうし、早々変なリクエストは来ないだろう。


 胸に安堵が落ちると、俺は一息ついて二人に声をかけた。


「こんばんは。ご褒美のリクエストは決まった?」


 尋ねると、二人は顔を見合わせ、頷き合い、そして俺に頭を下げた。


「「おにロリプレイで、私たちにマッサージしてください!!」」


 しばらく理解できなくて固まった。

 だが理解できると、肩の力がすんと抜けた。


 相当変なのが、来ちゃった……。


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