Netherworld ― 最後の狩人の道

ロケットゴースト

第1A話 – ハンターになりたい! (パート1)

主人公は、モンスターの起源と、現在存在する五つの地域について語り始める。


ノル・タケダ

この世界には、生命と死の均衡を保つ二つの力が、太古から存在していた。

人間は皆、自分の“オーラ”を通してその循環の一部となっている。

――だが、五百年前、その循環は突然断ち切られた。


大国同士が戦争を始め、五年間にわたって最強の兵器をぶつけ合い、世界の覇権を奪おうとした。

そして、ある日を境にすべてが変わった。

二つの力の均衡が崩れ、“闇”が世界を呑み込み、死者を蘇らせ、今も原因不明の奇妙な変異を引き起こすようになったのだ。


戦争が続いたことで国々は弱り果て、世界は瞬く間に蹂躙された。

しかし年月が経つにつれ、モンスターを狩り、奪われた都市を取り戻すための組織が生まれた。


あれから四百年――。

母さんがサズマ侵攻で亡くなってから、俺たち家族は別の町へ移り住んだ。

あの日のことはほとんど覚えていないが、父さんの話では、俺たちを救ってくれたのは“ダイヤ”ランクの狩人だったらしい。


それ以来、俺の頭にあるのはただ一つ。

――いつか、あの人たちみたいになりたい。

世界最強の狩人、十人の“ダイヤ”の一員に。


そして今日、ついに組織の入隊試験を受けるチャンスがきた。

この日のために学院で死ぬほど努力してきた。絶対に無駄にはしない。


(主人公の部屋。窓から街の景色が見える。「Rottenrow」と書かれた黒いシルエットのポスターが壁にあり、“最高の狩人が生まれる場所”と添えられている。)


(場面転換。午前6時。ノルが胸を躍らせながら食堂に入る。テーブルでは姉が朝食をとり、父は奥のキッチンで準備をしている。)


■ 朝のシーン(食堂)


タケダ・オユキ(姉)

あら、今日はずいぶん早起きじゃない。兄さんがそんなことできるなんて思わなかったわ。


ノル・タケダ

今日は大事な日だからな。遅れてチャンスを逃すわけにはいかない。


(父が皿を二つ持って現れ、その一皿をノルに渡す。)


タケダ・マコト(父)

おはよう、ノル……。本当に試験を受けに行くつもりなんだな。

一年くらい待ってもいいんじゃないか? そのほうが準備もできるし、安心だ。


ノル・タケダ

父さん、その話はもうしただろ。

過去二年間は選抜で落ちたけど……今年こそはいける気がするんだ。

ずっと努力してきたし、今なら必ずやり遂げられる。


タケダ・マコト(父)

(深く息を吸う)……止めるつもりはない。お前の母さんなら、お前の決意を尊重しただろう。

ただ……気持ちの整理がまだつかないだけだ。

愛する家族が、いつ命を落とすか分からない世界で生きるなんて、誰だって怖い。

……でも、気をつけて行け。


ノル・タケダ

分かってるよ、父さん。大丈夫だ。

いつか必ず、一流のハンターになった俺を見せるから。


タケダ・マコト(父)

ああ。……さあ、食べて駅に向かおう。


(場面転換。駅。人はまばら。)


タケダ・オユキ(姉)

(ノルの背中を押しながら)

ほらほら兄さん、早く電車に乗って!

早く行けば行くほど、私が兄さんの部屋をもらえるんだから。


ノル・タケダ

(オユキの頭を軽く小突く)

この下心丸出しのチビめ。

そういう理由で、俺がハンター組織に入るのを応援してたのかよ。


(父が近づいてくる。)


タケダ・マコト(父)

ほら、これが切符だ。

“名声地区”か……面白い場所らしいぞ。

街の中央にある博物館には、歴代の有名ハンターの遺産が展示されているとか。


ノル・タケダ

聞いたことあるよ。

その場所は、そこで生まれた組織屈指のハンターを称えて建てられたんだって。


タケダ・オユキ(姉)

あれはただの伝説よ、ノル。

展示してある像や武器も全部レプリカだし、しかも像の顔すら彫られてないんだから。


(ノル、むっとした表情)


タケダ・マコト(父)

まあ、とにかく試験を受けられるだけでも十分だ。

全力を尽くせば……いつか父さんみたいに有名になれるかもしれんぞ?


ノル・タケダ

(照れたように)

いやいや、この時代に建築家がそんなに有名ってことはないでしょ。


タケダ・マコト(父)

私はただの建築家じゃない。

“あの”建築家だぞ。

組織でもそう言ってみろ、きっと一瞬で友達ができるはずだ。


ノル・タケダ

ああ……はいはい。

じゃあ、そろそろ行くよ。


タケダ・オユキ(姉)

(ぎゅっと抱きしめる)

頑張ってね、兄さん……寂しくなるわ。


ノル・タケダ

俺もだよ、オユキ。


(ノルが電車に乗る。ドアが閉まり、電車が動き出す。ノルが窓から手を振る。)


タケダ・オユキ(姉)

よし、行ったわね。(手をパンパンと払う)


タケダ・マコト(父)

さて……名声地区のこと、どうしてそんなに詳しいんだ?

(ジロッとにらむ)

父さん、あそこに旅行なんて一度も連れて行ってないはずだが。


(オユキ、不安そうな顔)


(電車が街中を走り抜ける映像。やがて街の外れの巨大な壁。その内側には緑の草原と点在する木々。外側には荒れ果てた都市跡と乾いた大地、枯れた木々が広がっている。)


(場面転換。名声地区の駅に到着。)


ノル・タケダ

(スーツケースを持って降りる)

ようやく着いた……。ガイドはどこにいるんだ?

手紙には“駅で迎えに来る者がいる”って書いてあったはずだけど。


(周囲を歩き、公共トイレを見つけて入る)


ノル・タケダ

まだ来てないみたいだな。……少しだけ観光でもしてみるか。


(個室のドアの下からガスが流れ込む。もくもくとガスが漏れ出し、個室の扉に何かがぶつかる音。視界が真っ暗になる。)


(ノルは建物の外に並べられたベッドの上で目を覚ます。他にも数人が眠ったり起きたりしている。周囲には石造りの装飾、木々、遠くには戦闘用の塔が見える。)


ノル・タケダ

ここは……? 最後に覚えてるのはトイレに入ったところまでだ。

(建物の看板を見る)

「管理局」!?ってことは……ここが組織の入口なのか?

でもどうやってここに……。中で説明してくれるといいけど。


(中に入り、列に並ぶ。前には2人いる。)


受付

次の方ー。


ノル・タケダ

わあ……本当にハンターの組織だとしたら、試験を受ける人は思ったより少ないんだな。


受付

次の方ー。


ノル・タケダ

(周りを見渡す)

でも来てる人たち……皆、雰囲気だけで強者ってわかる。背筋がゾクッとする……。


受付

次の方ー。


ノル・タケダ

おはようございます、すみません。ここって……。


受付

(遮る)

受験者パスをご提示ください。


ノル・タケダ

受験者パス? あ……手紙のことか。はい、どうぞ。


(受付がホログラム画面の端末で名前を照合し、組織の公式印章をスキャンする。)


ノル・タケダ

(ワクワクしながら)

じゃあ、本当にここがハンター組織なんだ!

ところで……どうやってここに来たのか教えてもらえません?

その……全然覚えてなくて。(苦笑)


受付

はい、確認できました。

奥の廊下をまっすぐ進んで左手、ポータル1番・緑色です。

こちらが腕用バンドとサバイバルキットになります。


ノル・タケダ

(心の声)

……完全にスルーされた。(不満)


受付

次の方ー。


(ノルは指示された部屋へ向かう)


ノル・タケダ

これは……腕輪とアームバンド?……ってことは、もう試験が始まってるってことか?(真剣)


(部屋に入ると、上部に番号が振られた三つのポータルが整然と並んでいる。)


ノル・タケダ

アカデミーで習ったポータルだ……!数秒で別の場所へ転送されるっていう装置。実物を見るのは初めてだ……!(興奮)


ノル・タケダ

よし、行くぞっ!


(勢いよくポータルに飛び込むが、そのまま壁に激突する。)


ノル・タケダ

いてて……そうだ、中央で数秒待たないと作動しないんだった。


(今度はゆっくりとポータルに入り、姿が消える。)


(小さな聖域のような場所に転送される。扉を開けると、木造の大きな建物や小屋、石畳の道、数人が作業に従事している落ち着いた光景が広がる。)


ノル・タケダ

ここは……見たことのある村とは全然違う。人は少ないけど、どこか静かで、空気が澄んでる。


(村の中を歩き始める)


――「おいっ!待てってば!!」


ファクロ(フクロウ)

やあ、遅れてすまない。君がノル・タケダだな?

私はファクロだ。よろしく。


ノル・タケダ

初めまして、ファクロさん。それで……ここで何が起きてるのか、説明してくれるんですよね?


ファクロ(フクロウ)

まあ、そんなところだ。俺は君の“ハンターガイド”。ついて来い。歩きながら話す。


(村を抜け、草原から茂みの多い森へ向かう)


ファクロ(フクロウ)

試験にはガイドハンターの同行が義務なんだ。まずは、管理棟でもらった装備の使い方を教えてやる。


その腕のバンドだが……あれはハンター組織の身分証だ。色と刺繍でランクが分かる。

君は志願者だから、白で刺繍なし。


(ノル、内側の模様に気づく)


ノル・タケダ

じゃあ、この内側の模様は……?


ファクロ(フクロウ)

君の所属国の紋章だ。


ノル・タケダ

ああ、アカデミーで習いました。四大国家が“終焉のオーブ”を守り、世界の均衡を保っているって。


ファクロ(フクロウ)

ほうほう、クラスの秀才ってやつか。

俺は……まあ、問題児の側だったがな。

……と、話が逸れた。


国の紋章はこうだ。

エゴランドはライオン、スランダーはヘビ、カルマはシカ、ロッテンローはパンダ。


さて、サバイバルキットの説明に戻るぞ——


(突然、動きを止め、茂みをにらむ)


ノル・タケダ

ファクロさん?どうしたんですか?


ファクロ(フクロウ)

……静かに。あの茂みを見ろ。


(茂みから何かが姿を現す)


ノル・タケダ

うさぎ?かわいいけど……何か問題でも?


(気づくとファクロの姿が消えている)


ノル・タケダ

えっ!?ファクロさん?どこに——(小声)


(うさぎを見る)


ファクロ(フクロウ)

「ホォーーッ、ホォォーーーッ!」


(ファクロが木々の間から急降下し、脚でウサギを捕獲してそのまま消える)


(すぐ隣に戻ってくる)


ファクロ(フクロウ)

ほら、捕まえた。今日の夕飯だ。


ノル・タケダ

……うさぎって、普段から食べてるんですか?


ファクロ(フクロウ)

たまにな。ここはウサギが多い。

ただ、夜は危険だからあまり来ねぇ。

さ、歩きながら続けるぞ。


ノル・タケダ

はい。


ファクロ(フクロウ)

サバイバルキットだが——バンドの画面に触ると、中身のパネルが表示される。まあ、“インベントリ”だと思えばいい。


中には、生存に必要な最低限の道具が入ってる。

剣、ツルハシ、斧、クワ……全部、君のだ。


ノル・タケダ

え、ちょっと待って。全部……木製じゃないですか。これ、本当に切れるんですか?


(剣を取り出す)


ファクロ(フクロウ)

(剣を取り上げ、ノルの手のひらをスッと切る)


ノル・タケダ

いっ……!


ファクロ(フクロウ)

ほら、切れる。文句はないな?(剣を返すことなく放り捨てる)


水のボトルが三本、赤の“ヒネロ”が二本、青の“シーラント”が二本。

赤は高温・気圧・有毒ガスへの耐性を補う。

青は傷に使えば、高速で治る。

だが、使いすぎには上限がある。


ファクロ(フクロウ)

質問は?


ノル・タケダ

いえ……全部分かりやすかったです。


ファクロ(フクロウ)

(胸を張る)だろ?教えるのだけは得意なんだよ、俺。

……さて、着いたぞ。


(森の奥、光が差し込む円形の開けた場所)


ノル・タケダ

ここは……どこです?


ファクロ(フクロウ)

知らん。指示は“村からできるだけ遠くへ連れ出せ”だけだったからな。


ノル・タケダ

……えっ?


ファクロ(フクロウ)

試験開始だ、坊主。

運がよければ——夜明けまで生き残れる。


じゃあな。


(ファクロ、音もなく森の奥へ消える)

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