第八章 因縁の決着と新たな旅立ち 02
「さすがに信じてもらえなかったんだろうか?」
「でも、事実なので虚偽の報告をするわけには――」
「だよね。飛んで帰ってきたわけだし」
「あたしらの成果なしにならないよね? 剣も折れたから新品買うのにけっこうお金いるとおもうんだけどさぁ。成功報酬出ないとか無理なんだけど」
しばらく待っていたら、バルガスさんが十数名のギルドの職員を連れて戻ってきた。
「待たせてすまない。君たちのことは疑っていないが、事は重大だ。ご足労をかけるが先ほどのレオン殿の発言を確認させてもらいたい。そのためこれからギルドから人員を派遣させてもらうため、案内をしてほしい」
「俺の報告が事実と認定されたらどうなりますか?」
「『星影の羅針盤』の今回の依頼、特Aランクの功績としてギルドに記録させてもらう。そして、Sランクを付与し、報酬も破格のものを用意しよう。う」
「なら、急ぎましょう」
「馬車を用意してある。それを使ってくれたまえ」
俺たちはすぐに執務室を後にすると、馬車に乗り込み、ギルドの職員たちを連れて例の遺跡が着陸した場所へと案内した。
実物を見たギルド職員たちは、皆が驚き、同時に俺たちへ賞賛の言葉を送ってくれた。
街に戻り、諸々の手続きを終えてギルドを出ると、夕日が街を茜色に染めていた。
「いやー、特Aランクだって! これでまた美味しいものが食べられるわね!」
セシリアは上機嫌で伸びをする。
「ええ。ですが、それに伴い、今後はさらに困難な依頼が増えるでしょう。気を引き締めないと。それに遺跡の調査も追加されましたし」
リリアは、嬉しさの中にも冷静さを失わない。
「……もっと、強くならないとアタシは弱い」
ミーナも、新たな決意をその瞳に宿している。
俺たちは大きな仕事をやり遂げたことで、一段と実力を増し、お互いにさらなる信頼の絆を深め合うことができたと思ってる。
「はっ!? レオン、そう言えば!」
急に何かを思い出したように俺の名をセシリアが呼んできた。
「どうした?」
「アレは、アレ。アレの話するの忘れてたんじゃない?」
「何の話?」
「あ!? アレだ!」
ミーナも何かを思い出したようで、俺のポケットを指差していた。
ポケット……。ポケット……。
あっ!? 例の遺跡を動かす黒い結晶体! 他のことに気を取られてて報告するの忘れてた!
俺は慌ててポケットに手を入れた。
しかし、ポケットに突っ込んだ指先に、冷たく滑らかな感触が伝わってくるはずだった。
「……あれ? ない……かもしれない」
何度探ってみてもポケットの中は、空っぽだった。
俺は立ち止まり、慌てて他のポケットも探る。
上着の内ポケット、ズボンのポケット、ベルトにつけた小さなポーチ。
どこを探しても、あの黒光りする手のひらサイズに縮んだ結晶体は見当たらない。
「どうしたの、レオン? あの結晶体は? はっ! まさか!?」
セシリアが何が起きたのか察したように顔色を変える。
「ちょっと、落としたかもしれない」
「ま、まずいじゃん。アレがないと遺跡が動かせないよね?」
「レオンさん、ほ、本当に落としたんですか?」
いつ失くした? さっき遺跡に案内した時か? それとも、もっと前に?
最後にその存在を確認したのはいつだったか、記憶が曖意だ。
あの黒い結晶体、俺の鑑定スキルでも詳細だけは、なぜか霞がかかったように見えなかった。
ただ、禍々しいほどの魔力を秘めていることだけは分かっている。
その得体の知れない物体が、今、俺の手元から消えてしまっていた。
「とりあえず、冒険者ギルドに報告をしておかないと。あれが誰かの手に渡ってしまったら悪いことが起きる気がしてならないんだ」
「たしかに、遺跡を動かせるほどの魔力を発生させますしね。すぐに探してもらう方がいいかもしれません」
「なら、急いでギルドに戻らないと!」
「アタシは先に探しておくから!」
「すまない、みんな……」
仲間たちは落とした黒い結晶体を探してくれると言ってくれたが、夕闇が迫る空を見上げながら、胸騒ぎが大きくなっていくのを感じていた。
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