第一章 追放と出会い 02
夕闇が濃くなった通りは、冷たい風が吹き抜けていた。
身体の芯まで冷え切っていくようだ。
バックパックの紐を握りしめる手に力が入らない。
(俺は……これから、どうすればいいんだ……?)
頼れる仲間も、帰る場所もない。ただ、この規格外の【鑑定スキル】だけが、俺に残された全て。
だが、この力は、本当に呪いなのだろうか。いや、そうではないはずだ。
今はまだ、深い絶望の底にいる。だが、心のどこかで、小さな、本当に小さな灯火が揺らめいているのを感じていた。
いつか、この力で誰かを本当に救える日が来るかもしれない。俺の価値を、本当に理解してくれる仲間に出会えるかもしれない。
そんな淡い期待を抱きながら、俺は当てもなく、重い足取りで夜の街を彷徨い始めた。
腹の虫が、ぐう、と情けない音を立てた。
空腹と疲労は、容赦なく精神を削っていく。
ふと見上げると、路地の奥に、くたびれた看板を掲げた安酒場の灯りが見えた。
「……」
もう、何も考える気力もなかった。吸い寄せられるように、その古びた木の扉に手をかける。
ギィ、と軋む音を立てて開いた扉の向こうには、予想通りの喧騒と、むせ返るような人々の熱気が渦巻いていた。カウンターの隅に空いている席を見つけ、俺はふらふらとそこに腰を下ろす。
「一番安いエールと、黒パンを……」
ほとんど声にならないような注文を終え、テーブルに突っ伏した。
どれくらいそうしていただろうか。
不意に、店の一角が騒がしくなったのに気づいた。
「だから! あたしの剣の腕が未熟だって言うのかい!?」
凛とした、しかし怒気を含んだ少女の声。
顔を上げると、三人の少女が、数人の柄の悪い男たちに絡まれているのが見えた。
その瞬間、俺の瞳に、いつものように情報が流れ込んできた。
黒髪で、強い意志を宿した青い瞳の少女。
――鑑定対象:セシリア――
【スキル】剣術Lv.5(才能S+)……
眼鏡をかけた、知的な雰囲気の少女。
――鑑定対象:リリア――
【スキル】魔法理論知識Lv.EX(才能S)……
小柄で、鋭い目つきをした黒っぽい装束の少女。
――鑑定対象:ミーナ――
【スキル】隠密Lv.A(才能S)……
彼女たちのステータスと、秘められた圧倒的な才能の輝き。そして、その【状態】に共通して表示される「不遇」「焦り」「不信」の文字。
それは、まるで鏡を見ているかのようだった。
俺と同じ、世間から正当な評価を受けられず、才能を持て余している者たち。
男たちの一人が、下卑た笑みを浮かべ、セシリアに手を伸ばそうとしている。
まずい。
考えるより先に、身体が動いていた。
「あ、あの……!」
追放されたばかりの俺に、何ができるというのか。
だが、この出会いを、この才能の輝きを、見過ごすことだけはできなかった。
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