第3話 何よりも大切なもの

 冬期テスト前日。

「本日は~!」

 やたらテンションの高い織姫が叫んだ。

「お泊まり勉強会!」

「ちょっと、アパートなんだから声落としなさい!」

 ビシッ、と頭にチョップする菜央。

「あうう、身長縮む。でも言うとおりだ、ごめんなひゃい」

 そう言って頭を押さえる織姫だった。

「菜央はどの教科が苦手?」

 頭を押さえながら、首を傾げた織姫が言う。

「数学かな……」

「数学かー、方程式覚えれば簡単だよ?」

「あんたには簡単かも知れないけど、一般人には難問なの」

「なるほどなるほど」

 そう言う織姫は既にパジャマ姿だった。

 ピンクでフリルが付いた。可愛らしいパジャマ。

「あんたいつもそんな女の子な格好で寝てるんだよね?」

 菜央が聞くと。

「女の子? 私は女の子だけど?」

 意味を理解していない織姫が頭に?マークを浮かべた。

「いや……もういいか」

 織姫に説明するのが面倒だと感じた菜央は話を切った。

「それよりここを教えてよ」

「ここか、これはね……」

 そうして二人のお泊まり勉強会は進んでいった。

「織姫は何を復習してるの?」

「んー、英語」

 そう言いながら、何の迷いもなくサラサラと英文を書く織姫。

「さてと、私はこれでばっちし!」

 そう言ってグッドのポーズを織姫はとった。

「はや…‥まだ九時半だけど?」

「え? もうそろそろ寝なきゃ」

「ちょ、ちょっと待って?」

「ん?」

 菜央はこめかみに手を当てていった。

「今日は織姫が誘ってくれたんだよね」

「うん」

「勉強教えてくれるって」

「うん」

「なのにもうそろそろ寝るの?」

「うん」

 うん、の三連続。

「あたしの勉強こっから一人になっちゃうんだけど……」

「え、あっ、そうだった!」

 しまった、と言う顔をする織姫。

「頑張って起きる」

「いや、無理に起きて明日のテストに支障が出たら悪いし……」

 どうするべきかと、菜央は悩んだ。

「あんた、強引に早起きさせても大丈夫?」

「いつもだったら7時に起きるけど、何時?」

「…‥5時」

「無理そう」

 もう一練り考える菜央。

「まあこれだけ教えてくれたんだし。織姫には感謝するよ。後は自分で何とかする」

「それで本当に良いのかなぁ」

「大丈夫だって、苦手問題はある程度織姫のおかげで、理解出来たし」

「それじゃあ、先に寝ちゃうよ?」

「うん、ちゃんと歯磨きしてからね」

「はーい」

 そう言うと、織姫はトテトテと歩いてバスルームの中に入っていった。

 そうして歯磨きも終えた織姫は。

「こっちで菜央は寝てね~」

「ん? あぁ、ソファーね」

「違うよ~、こっちこっち」

 教科書を見ていて織姫の事を見ていなかった菜央が顔を上げた。

「ここ~」

 そう言って、ベッドの壁の外側を織姫はポンポン叩いていた。

「一緒に寝るって?」

「駄目~?」

「駄目じゃないけど……それだと織姫狭いんじゃないの?」

「私は半分もあれば充分! あ、菜央が狭いのか……」

「いや、ソファーよりはちゃんと寝れると思うから」

「じゃあお先におやすみなさい」

「おやすみ~」

 そう言って織姫は布団を被り、菜央は教科書を持ち直した。


「もう1時か……」

 時計を見た菜央が一人小さく呟いた。

「さすがにそろそろ寝ようかな……」

 そう言って、菜央はバスルームの洗面台を借りて歯磨きした。

「織姫。お邪魔するね……織姫?」

 なんだか様子がおかしい。菜央はそう思った。

「ごめ……なさ……ん……」

 苦しそうな顔で寝言を言う織姫。その額には汗が流れていた。

「まさか……」

 はっ、と原因を把握した菜央。

「織姫……」

 苦しそうな織姫の横に寝転がって、その小さな身体を菜央は軽く抱きしめた。

「大丈夫。あたしが居るから、落ち着いて」

 そう小さく囁きながら。織姫の身体を抱き続けた。

「ん……ぅ」

 菜央が改めて顔を覗くと、織姫はだいぶ落ち着いた様子だった。

「うなされてずっと寝不足……だから朝弱いのか」

 推測ながらも、菜央は事態を把握した。

「あんたはもう誰からも『あんなこと』されないから」

 そう言って、菜央は部屋の電気を消すと、織姫を守るように隣で寝た。


 ジリリリリリ。

「うわぁ!」

 朝の7時になった、目覚まし時計の音の大きさに驚いて、菜央は飛び起きた。

「うるさいなぁ! これもうとめないと近所迷惑じゃん!」

 そう言って菜央は目覚まし時計を叩いて止めた。

「むにゅ?」

「あんた……これをいつも聞いてて起きないの?」

「ふぁ~、えーっと、一度起きて止めてる」

 事情は把握したが、二度寝は良くない。

「ほら、7時に起きるんだから布団から出る!」

「嫌ぁ~、7時20分までは布団でウトウトするの~」

「それやってるからたまに寝坊するのか!」

 ツッコミをいれる菜央だった。

「ほら、起きなさい」

「みゅ~」

 そう言って、菜央の膝に頭を乗せる織姫。

「膝枕。眠気には勝てそうにない、おやしゅみ~」

「勝手にやって何言ってるの!?」

 そう言って菜央は、織姫の頭をぐいと持ち上げた。

「起きなさい~」

「あと……20分」

「あたしが居る限りはそうは行かないから!」

 菜央は織姫を正座の体勢にさせる。

「ほら、早く目を開けて」

「私は大丈夫だぁ、先にいけぇ」

「なんにも大丈夫じゃないから! テスト!」

「テス……そうか今日はテストの日か」

 電源がガチャリとオンになったように、織姫は起きた。

「やっと起きたか……これだけで5分使っちゃってるよ」

「面目ねぇ」

 そう言うと二人はベッドから降りた。

「織姫はいつも朝食……コンビニかー」

「菜央は家で食べたり、コンビニで買ったりだっけ」

 大きく欠伸をしながら織姫は言った。

「まあ歯磨き洗顔、その後そのグチャグチャな髪の毛整えてあげるから」

「はーい」

 そう言って、二人は身支度をそれぞれ整え始めた。

「さて、家を出るまでまだだいぶあるし、その髪の癖を今日こそ」

「癖毛もあるから全部は無理だよ?」

「それは分かってる。とりあえず座って」

 菜央に指示された織姫は学習机の椅子に腰を降ろした。

「いだだ!」

 前に引き続き、また織姫が声をあげた。

「頑固すぎるねこれ……」

 そう言って、菜央は自分が持ってきたバックから秘密兵器を取り出した。

「じゃん、寝癖直しのスプレー」

「透明な水じゃないの?」

「一見そう見えるけど、ちゃんとした整髪料だよ」

 そう言って、シュッシュと織姫の長い髪にそれをかける。

「あ、案の定楽に櫛が通る」

「痛くない。あるなら最初から使ってくれれば良かったのに」

「いや、微かだけど匂いもあるし、この後ドライヤーで乾かさないといけないから」

「そこまでやってる時間あるの~?」

「あるから、安心しなさい」

 そう言って黙々と寝癖を直して行く菜央。

「さて、後はドライヤー、洗面台にあったの持ってきて良い?」

「良いよ」

 菜央は許可を得ると、織姫のドライヤーを持ってきた。

 ブオーン。と熱い風が出る。

「なんか威力弱いね。あたしのお古今度あげるよ」

「ホント? そのドライヤーはお亡くなりになる寸前なのです」


 そんなやり取りをして数分。

「はい、おしまい」

「どれどれ」

 織姫は立ち上がって、玄関前にある全身鏡の方へと向かった。

「あ、ホントだー。いつもよりサラサラ」

 首を左右に振って、織姫は確かめた。

「それくらいだとウェーブかけてるみたいで、可愛い感じじゃん」

「菜央は髪伸ばさないの?」

「あたしは似合わないと思うし、それに走るときに長いと邪魔だしね」

「陸上部の助っ人たまにやってるもんね、これ気に入った。お値段お安いなら私自分で買うよ~」

「あぁ、安いよ」

 そうして制服にも着替え終えた二人は玄関を出る。

「むむっ」

 織姫が怪訝な顔で左右を見渡す。

「どしたの?」

「スキャンダルを狙ったパパラッチがいないか確認中」

「誰の……」

「私と菜央、見られたら新聞の一面に……」

「載りません」

 そう言って軽くチョップをかます。

「ふえ~」

「友達の家に泊まるくらい。誰でもやるでしょう」

「そうだけど、菜央ノリ悪いよ~」

 ちょっとだけ不満そうな顔をする織姫だった。

「鍵も閉めたし、出発するよ」

「む~、は~い」

 そう言って二人は歩き出し、そしていつものコンビニへ。

「今日の朝食はがっつり食べたいな、さてどれにするか」

 菜央は陳列された商品を見る。

 織姫はと、目を遣ると。既にジュースといつも通りあんまんを買っていた。

「んじゃ、あたしはこれ」

 そう言って、菜央はハラペーニョブリトーをとった。

「お待たせ」

 そう言うと、織姫は。

「むにゃぎょにょ」

 口にあんまんを含んだ状態で返事を返していた。

「行儀悪いから飲み込んでからにしなさい」

「……ごくん。はーい」

「じゃあ食べながら行こうか」

 そう言って、菜央と織姫は歩き出し、菜央も自分の買った物を開けた。

「何それ~?」

「ん? ブリトー、美味しいよ」

「一口貰います」

「ちょ、これは……」

 菜央の制止も聞かずに、織姫は一口食べてしまった。

「!? 辛ぁ~!」

「やはり超甘党の織姫には無理な食べ物だったか……」

 織姫はペットボトルを開けると、急いで飲み出した。

 そうして結構な量を飲んで。

「それは一生食べない! あんまん食べる!」

 そう言ってお口直しにあんまんを頬張った。

「あははっ、子供なんだから」

「子供じゃないよ! 高校生!」

「分かってるって」

 二人は楽しく話ながら、学校へ向かって行った。

 そして、学校に着いた二人は下駄箱に靴を入れ、サンダルを手に取る。

「いやー、緊張してきた」

 菜央がそう言うと。

「緊張すると結果出せないよ? リラックスリラックス」

 こういうときだけ大人だなと、菜央は思ったが言わないことにした。

 教室に着いた二人。周りを見ると、教科書やノートと睨めっこしている生徒ばかり。

「あたしもまだ時間あるし、勉強しよ」

「私は……一応?」

 そう言って二人はそれぞれ別の教科書を開いた。

 しばらくすると予鈴が鳴る。

「ここまでか~、赤点は無いと思うけど、不安だなぁ」

「昨日頑張ってたし、菜央も良い結果出せるよ」

「何様のつもりだ……」

「織姫様です♪」

 そうして、担任教師が入ってきて、説明を一応一通りした。

 最後に一言。

「このテストが終わったら、近い内に修学旅行だ。赤点を取っていけなくなることがない様に」

 そう言って、担任教師は出て行った。

「修学旅行か」

「どうしたの急に?」

 菜央の呟きに織姫が反応する。

「いや、もう高校生活も折り返しに来てしまっているんだな、と思ってさ」

「まぁそうだね」

「織姫は進学?」

「う~ん、まだ考えてないや」

 織姫の学力なら有名国立大学も容易いだろう。だが何故だか織姫はまだ考えていないと言った。

 そんな織姫の答えに疑問を抱きつつ、菜央は。

「あたしは、一応進学予定」

 と伝えた。

「どこの大学?」

 教科書からふと目を離すと、織姫がぐいっと菜央の方を覗いていた。

「えっと……詳しくは決めてないけど、あたしの学力でも行ける大学かな」

「じゃあ私もそこ行く~」

「はい?」

「菜央と同じ大学行く」

 菜央は、この子は一体何を言っているのだろうと思った。

「いやいや、織姫の学力ならもっと良い場所あるって」

「えー、私には菜央がいるのが一番なんだけど……」

「そんな単純な理由で、将来に関わることは決めちゃ駄目だって」

「……単純?」

 織姫が言う。その声は微かに震えていた。

「織姫?」

「単純なんかじゃないよ!」

 いきなり大声で叫び、立ち上がる織姫。

 何事かと、クラス中の目線が織姫と菜央に向けられた。

「お、落ち着いて!」

「私は、織姫は、単純な理由で決めてないもん!」

 いつの間にか、織姫は大粒の涙を流していた。

「ご、ごめん。織姫なりの考えがあるんだろうけど、ちょっと分からなくて……」

 そう言って、そっと織姫の涙を取り出したティッシュで菜央は拭おうとした。

「っ!」

 しかし、その手を織姫は振り払う。

「あ、あんたいきなりどうしちゃったの?」

「知らない!」

 ゴシゴシと両手で目を拭いて。織姫は席に向き直ってしまった。

「……ごめん」

 菜央は小さくそう言った。

 そして、タイミング悪く、チャイムが鳴ってしまった。

 織姫は俯きながら、菜央は罪悪感に苛まれながら、試験を行った。


 そうして、一日目のテストが終わり。

「今日は、午後時間あるしさ、ちょっと気分転換にゲーセン行く?」

「……行かない」

「朝のこと、まだ……怒ってる?」

「……」

 織姫の無言。

 気まずさでたまらず、菜央は自身の短い髪を触る。

「じゃあ、織姫の家行って、遊ぼ……」

 織姫は菜央が話している最中にもかかわらず。教科書をバックに詰めて、そそくさと教室を出て行った。

「単純じゃない……か」

 一人残された菜央は、そこの理由がどうしても分からなくて、織姫を追いかける事が出来なかった。

 そうして、二日目。

 菜央は織姫の住んでいる部屋のチャイムを、思い切って押してみた。

 しかし、中からは物音一つ聞こえない。

「……織姫、あたしのせいなんだけど、一体どうしたんだろう」

 不安に包まれながら、菜央は自身も遅刻しないように、学校へと重い足で向かった。

「あ……」

 教室に着くと、織姫がいた。

 しかし、その姿は縮こまっていて、いつもより気弱に見える。

 更に髪の毛はボサボサで、全く手入れされているとは思えない。

「織姫」

「……何?」

「昨日は、さ……無神経なこと言ってごめん」

「何が」

「え?」

「何が無神経だったか分かっているの?」

 織姫の言葉に、菜央は無言を返すことしか出来なかった。

「分かってないなら、いいよ」

「え、いいよって……」

 菜央はヒヤッとする。

「もう、菜央なんか友達でもなんでもない」

 ズキッ、心が酷く痛んだ。

「織……姫……」

 菜央はたまらず泣きそうになって、それをぐっと堪えた。

「あたしは」

 気を持ち直して、菜央は言った。

「あたしは織姫の事、今でも親友だと思っているよ。だから絶対諦めない」

「……」

 織姫は無言だった。しかし、菜央はそれに負けない。

「必ず理由を見つけてみせる。テスト赤点になったって構わない。あたしは織姫と仲良くしたい」

「なんで」

 織姫が言う。

「なんでそこまで言ってくれて……分からないのかな」

「どういう事?」

 織姫は一緒の大学に行きたい。そう言った。それの理由を菜央は必死に考える。そうして、はっと気が付いた。

「織姫って、あたしのこと……」

 そこまで言って、菜央はここが教室で、周りに声が聞こえている事を思いだした。それだけ、夢中だった。

「あたしの考えてること、ここでは言えない。だけど、織姫の家に行けば言える。だから行っても良い?」

「……良いよ」

 それだけ言って、その日のテストが始まった。

 そして、テストの後。

 織姫に先導されて、無言で菜央はその後について行った。

「おじゃまします」

 そう言って、菜央は織姫の部屋に入った。

「……っ」

 織姫が、崩れ落ちる。

「織姫!?」

 菜央は急いで織姫の元へと駆け寄った。

「ぐすっ……うえぇ……」

 織姫は大声で泣き出した。

 そんな織姫を後ろから抱きしめて、菜央は言った。

「あたし馬鹿だからさ間違えた答えなのかも知れない。けれども言うね」

「うん……」

「織姫は、あたしの事。好きなんでしょ。だから、ずっと一緒に居たくて、大学も一緒が良いって言った。違う?」

「そう……だよ」

 当たっていた。

「あたしの、何処が良いの? あたしは女だよ?」

「私の事、助けてくれて。いつも一緒に居てくれて。それで、気が付いたら好きになっていたの。私にとって、性別なんて関係無いの。好きなものは、好きなの」

「そう……だったんだ」

 菜央は優しく、織姫の涙を、袖で拭った。

「それに対しての返事。あたしもして良いかな?」

「うん」

「最初はさ、守ってあげなきゃって思ってた。けど、一緒に居るに連れて、織姫と過ごす時間が一番の楽しみになっていったの。笑っている織姫。ちょっと不機嫌な織姫。辛い物食べてひぃひぃ言ってる織姫。勉強がすごい織姫。それを含めて」

 菜央は大きく息を吸い込んで、言った。

「あたしも、織姫のことが好き」

 菜央が言うと、織姫は振り向いて。

「菜央っ!」

 そうやって名前を叫んで、菜央の胸に飛び込んだ。

 そうして、また泣き出す。

「ごめんね。あたしから言えずに、傷付けちゃったよね。ごめん」

「私は……我儘だしマイペースだし、ずっと菜央の足を引っ張ってばかりで、そんな私が嫌だよ」

「良いの、私はそう言うのを含めて。織姫の事が好きだからさ」

 そう言って、織姫のぐしゃぐしゃの頭をそっと撫でた。

「ごめんなさい……」

 織姫が謝る。

「そうじゃないでしょ」

 菜央が言った。

「いつも通りの謝り方、あるでしょ?」

「……ごめんなひゃい」

「よろしい」

 そう言って、菜央が微笑むと。

「えへへ」

 織姫の顔にも笑顔が戻った。

「あたし達さ」

 頬を赤く染めた菜央が。

「もう、恋人同士、だよね」

 そう言った。

「そ、そうだね」

 織姫も、頬を赤く染める。

「……」

「……」

 無言の二人。

「し、しばらくはいつも通りって事で」

「そうしよう!」

 菜央の提案に、織姫は乗った。

「それと、あんたさ」

「どうしたの?」

「いや、昨日あんまり眠れてないんじゃないかと思って」

「ごめんなひゃい。菜央の言うとおりです」

 菜央は小さく息を吐くと。

「ほら」

 そう言って、自身の膝に織姫の頭を乗せた。

「え? どういうこと?」

「膝枕、昨日の朝したがってたでしょ、だからさ」

「えへへ、じゃあお言葉に甘えて」

「あと、そのぐしゃぐしゃの髪も後でなおすから」

「……うん」

 小さく返事をしたと思ったら、あっという間に織姫は眠りについた。

「まっさか最初の恋人が女の子なんて、好きだから勢いで言ったけど。これから一緒に色々乗り越えようね、織姫」

 そう言って、すやすやと安心した寝顔で寝ている織姫の頭を、菜央はそっと撫でた。

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