第27話 河本関奈と伊藤春風
俺達のクラスは壊滅的に仲が悪くそして全てがマジに壊滅的になっていた。
だがそんなクラスに一つの伊藤先生という名の教員という灯りが差し込んだ。
俺は目の前の河本を見る。
河本は不満そうな感じで俺達を見ていたがやがて視線を外してから弁当を食う。
そんな河本に伊藤先生が「河本さん」と話しかける。
「...何」
「いや。...そんなけったいな顔をしないで私達と仲良くしないかい?」
「私がアンタらに何をしたか知っているでしょうが。...それでソーシャルインクルージョンとかよく言える」
「私は君を恨むのが全てじゃないと言ったよ」
「...アンタおかしいよ。伊藤先生。アンタは私達を信じている様な言い方をしているけどさ」
「いや?げんに信じているよ?」
その言葉に河本は目を見開いた。
「アンタ...私達が変わると信じているつもり?」と聞く。
すると「坂本さんを見な。...坂本さんだって変わろうとしているんだよ?」と言う伊藤先生。
河本は「アイツは特別でしょうが」と話す。
「アタシは特別じゃねーよ」
「...坂本...」
「アタシは春風という友人が出来たから辞めた。アンタも変わろうと思うものさえあれば変われるよ。河本」
「...言葉で言うのは簡単だろうけど。現実はそうはいかない。アンタは特別だ」
「ならアタシがお前の世界を変えてやるよ」
河本は「...どうやって変えるのかな?」と聞く。
すると坂本は「お前の受けた過去をアタシ達で共有して考えるんだ」と答えた。
その言葉に河本は「...」となりながら坂本を眉を顰めてから見つめる。
それから「あっそ」と返事をする。
「アンタのあっそは良いって意味だ」
「...」
その言葉に河本は無言のまま「勝手にすれば」と素っ気なく返事をしてから弁当を黙々と食べる。
そんな姿を見ていると伊藤先生が「素直じゃないな」と苦笑いを浮かべた。
俺はそんな伊藤先生に「先生はこのクラスをどうしたいんですか?」と聞いてみる。
すると伊藤先生は「それは勿論。仲良く、だな」と笑みを浮かべる。
俺達は顔を見合わせてから「ですか」と言う。
「...私はあくまでこのクラスの人達が穏やかにそれも後悔無く卒業してもらうのが目標だ」
「...お姉ちゃん...」
「大きな目標だな」
すると伊藤先生に「それは無理だな」と声をかける奴が。
それは佐伯小太郎だった。
俺達を見ながら「既にクラスは壊滅的になっている。二分割されているんだ。それをどうにかするとは?」と話す。
伊藤先生は「君は佐伯くんだね」と言う。
佐伯は「ああ」と返事をした。
それから伊藤先生は「...既に確かに二分割はされてはいる。だがそれを上手く立て直すさ」と苦笑した。
佐伯は「どうやって?」と試す様に話した。
「私は臨床心理士とかでは無い素人だからなんとも言えないけど。...だけど私にはクラスを立て直す義務がある」
「...面白い人だ。だけどさ。それは無理だと思うぜ」
「佐伯」
「なんだい?坂本さん」
「私はアンタに謝る事はしない。だが...私はアンタとは分かり合いたい部分はある」
「...それは関奈を殴ったのを謝...」
すると河本が「私は坂本を恨んでない」と言った。
俺達も佐伯も驚愕しながら「え?」となる。
河本は顔を上げた。
それから坂本を見てから佐伯を見る河本。
「小太郎。私、恨みは確かにあるけど今日の講義を聞いて考えた部分もあった」
「関奈...」
「もう良いよ。私達はその部分については間違った事をしていた可能性もある」
「しかしそれで良いのか?」
「一度きりの高校生活を無駄にしたくない」
「...」
そんな河本の真剣な顔に佐伯は黙る。
それから「...分かった」とゆっくり返事をした。
そして佐伯は引き下がる。
そんな姿を見ていると「河本さん」と声がした。
関口が声をかけてきた。
「ありがとう。手を引いてくれて」
「私はアンタ達の為にやっている訳じゃない。あくまで自分の保身の為だから」
「だとしても大きな決断だとは思う」
「...鮫島の為でもない」
そんな会話をしていると「時間が無くなってきたな」と伊藤先生が笑みを浮かべた。
俺は時計を見ながら「次の時間の準備を...」と言う。
すると伊藤先生が「その必要はないぞ」と答える。
「次は自習だからな」
「え?」
「次の時間は現代文の橋本先生が休みで私自身時間を貰った」
「え?じゃあ何を?」
「次は自習だが...体育館に行くぞい」
「は?」
それから顔を俺達は見合わせる。
すると「体操服に着替えて集合」と伊藤先生は言った。
俺達は顔をまた見合わせてから「???」となる。
そして俺達は言われるがままに体操服に着替えてから体育館に向かって歩いた。
☆
「何をするんだよ?」
「よく聞いてくれたね。坂本さん。まあ簡単に言えば交流試合だ」
「...なる」
「春風は無理しなくて大丈夫だからな」
そして笛を持って髪をまとめ動きやすそうな服を着ている伊藤先生を見る。
リア充達は怠そうな感じだ。
河本と春風は見学。
それから試合分けが始まる。
面倒臭いがこれも全ては交流の為か。
☆伊藤春風サイド☆
横に体操座りしている河本をチラ見した。
それからゆっくり前でドッヂボールの試合をしている人達を見た。
雪穂を応援する。
そして2分ぐらい試合を観察していると唐突に「アンタさ」と横から声がした。
私は驚愕して横を見る。
此方は見てないが河本が私に話しかけてきていた。
「アンタは...自分の障がいをどう思ってんの?」
そう話す河本。
私は見開いて少し考えてから「ん。私は...この障がいはとても素晴らしいものだと思う」と返事をした。
河本は「...じゃあ私がやってきた事は」と聞く。
私は「許さないし良くない」と答えた。
河本はゆっくり私を見る。
「許さない、か。...まあ...」
「でも私は貴方とは仲良くなれる気がしている」
「...?」
「私は貴方とは仲間として。同志として今なら仲良く出来る気がする」
そんな言葉に河本は「...私なんかとか?」と鼻をハンと鳴らして言う。
私は「ん。そう」と頷いた。
河本は「...」となりながら前を向く。
その河本を見つつ手を差し出した。
河本は私の手を見る。
「何?」
「仲良くなる為のおまじない」
「!?」
「仲良くなろう」
河本は「...」となりながら恐る恐る差し出した小指を二度見してから「...はぁ」と溜息を吐いた。
それからゆっくり手を伸ばす。
「マジ子供臭い」と言いながらも小指で握リ返した。
私は微笑む。
河本もごく僅かながらに微笑んだ気がした。
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