魔法薬作り

マリとジェイドは魔法薬である羽生え薬を作ろうとしている


「まずはムーンウォーターをある分全部入れて…」


マリが大釜にムーンウォーターを注ぐ

ちなみにムーンウォーターは天然の水を月の光が当たる場所に一晩置くと得られる


「次にコガネハッカを刻んで鍋に投入して」


ジェイドが細かくコガネハッカを刻んで鍋に入れる

大釜からポコポコと音が出るようになった


「シルフの粉とユニコーンの角の粉をスプーンいっぱい入れる」


シルフの粉は白く、ユニコーンの粉は銀色にキラキラ輝いている。マリが大釜をかき混ぜると水色の光を放ち始めた


「いい感じですね!マンドレイクの種を3つ入れる」


ジェイドがマンドレイクの種を入れるど大釜が銀色の光を放ち、ボコボコの沸騰する音がした

大釜をそのまま1時間置いている間、2人は本を読んでいた


「そろそろいいかな」


マリが鍋を覗くと、銀色の綺麗な魔法薬が完成していた。2人は鍋から小瓶に移し、ラベルを貼る。この魔法薬は明日来る商人に売るのだ。ざっと500瓶分は出来た


「素晴らしい出来ですね…惚れ惚れします!」


ジェイドが小瓶を見て目を輝かせているとキュ…キュウっと何かの音がした


「あれ、もしかして」


マリが振り向くと後ろにいたのは

宙に浮いているフワッフワの毛玉…小さな目が2つ付いている。白と黒の2匹だ


「これってケダマスライムですよね?見たものに幸運を与えるっていう」


ジェイドは驚いている。幻樹の森でしか生息できない超スーパーレアスライムだからだ


「そうそう。この前、野いちごと野ベリーを取ってたらこの子達が居たから使い魔にしたの」


キュ…キュ…っと鳴きながらマリの頬にスリスリしている


「こんな貴重なレアスライムを使い魔に!?」


「名前はね、白い方はシロモで黒い方はクロモ」


「ほぼそのままの名前ですね…でも、かわいい…」


今度はジェイドの方にシロモとクロモが頬にスリスリし始めた


「ふふっ、くすぐったいです。こら、やめてくださいってば…ふふふっ」


「キュ…キュ…」


とても微笑ましい光景だ。そろそろマチも帰ってくるだろう。晩御飯を作ろう



午前中に狩ったダイヤウルフの肉が沢山ある。それでなにか作ろう


「まずはダイヤウルフの肉を包丁の背で叩き伸ばして、塩、コショウ、振り小麦粉を薄くまぶす。フライパンにバターを溶かして肉を焼く。」


「うう、美味しそうな匂いですね。あ、マチさんが帰ってきましたよ」


大量の本を抱えて帰ってきたマチ


「ただいま。ご主人、ジェイドさん。大量の魔導書と薬草の本があった」


「おかえり、沢山買ってきたね」


「あぁ、どれもこれも俺の興味を引く本だ」


ダイヤウルフの肉が黄金色になってきた。


「肉が焼けてきたら、フライパンにバターを溶かして、シルバーガーリックとワイン大さじ1入れて煮立てる。そして肉にかける。ハーブを添えたら完成!」


「あぁいい匂いだ」


マチのお腹がぐぅーっと鳴った


ダイヤウルフのソテー、そしてこの世界でよく食べられているパン【ポチカ】それともうひと品


「ベリロアのスープも作ろうかな」


この森付近で取れるベリロアという豆のスープ


「鍋にオリーブオイルを入れて熱し、角切りにしたゴールドオニオン、シックキャロットを加え炒める。そこに水と酒、ベリロアを加える。煮立ったらアクを取り、弱火でじっくり火を通して、野菜が柔らかくなったら、塩コショウで味を整える。そこに5種類のハーブも加えて完成!」


ダイヤウルフのソテー、ポチカ、ベリロアのスープ。全部揃った


「よし、食べようか。いただきまーす」


「ん、このソテー美味いな!ポチカとよく合う」


ダイヤウルフの肉はジューシーで、シルバーガーリックの味が効いている。ふかふかのポチカとの相性が抜群だ


「ベリロアのスープ、美味しいです。体の芯から温まりますね」


ダイヤウルフのソテーの味が濃い分、スープはシンプルな味付け。ハーブの香りもよく、これも合う


「うん、我ながらによく出来てる」


3人の会話が弾んだ。これで今夜はぐっすり眠れるだろう



次の日の朝


まだ日は昇って居ない内に3人とも起きてしまうのだ


「紅茶を入れるか」


マチが紅茶を入れてくれる。暖炉の焚き火がぱちぱちと鳴る。ヒューヒューと外から風の音がする。朝のこの時間がなんとも言えない癒しの時間だ


「大丈夫かな、風強いけど」


「あぁ、そうか。今日はあのドワーフが来るんだったな」


商人のドワーフ。幻樹の森までやってきてくれるのだ

そもそも幻樹の森は1度入ると永遠に出られなくなる。

方向感覚が失われるのだ。 マリの家にたどり着く道は知る人ぞ知るものだ


「いっぱい売れるといいですね」


ティーカップを両手に持ち、ふわふわのブランケットを羽織っているジェイド。


「キュ…キュ」


何かの鳴き声がする。毛玉スライムのシロモとクロモだ


「あぁ、これが噂の毛玉スライムか」


マチが指で優しく撫でる


「そうそう、すごく人懐っこいの」


丸くふわふわなフォルムについつい目を奪われてしまう


「あれ、この子は今まで居ましたっけ?」


「クゥ…」


金色の毛玉スライムだ。これこそレア中のレアだ


「へぇ…珍しい。あなたも使い魔になる?」


「クゥ!キュッキュ」


嬉しそうなことは伝わってくる。魔獣を自身の使い魔にするには、魔力をお互いに少し交換し、魔獣が主の魔力を受け入れ、最後に魔獣に名前をつけてやる。


「よし、君の名前はモフコだ」


「キュゥ!」


「契約完了だね」


「使い魔がだんだん増えていくな」


空中でふわふわと浮遊している3匹の毛玉スライム。お互いに挨拶しているみたいだ


「金色となると、何やらすごい幸運を運んできそうですね」


「そうだよね、5000年以上生きている私でも初めて見るもの」


今日は何事にも上手く行きそう…そんな気がする





※けだまスライムは突然現れては消えてを繰り返す。幻樹の森にしか生息しない最高ランクのレアスライム。見たものに幸せを運ぶとも言われている



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