無明
麒麟
第一話 夜明
2000年9月24日
奈良県のとある田舎で私は産声を挙げた。
田舎といっても、家から歩いて1分でコンビニがあるし、目の前には定食屋、本屋などがあり、5分ほど歩けばスーパーがあった。
不便は全くしなかった。中途半端な田舎。
「Qちゃん」こと高橋尚子選手がシドニーオリンピックで金メダルを獲得した日と全く同じ日に、私は誕生した。
この話は、祖母が私が物心ついた時から口癖のように言っていた。
「高橋尚子が金メダル取った日にあんたが生まれたんや。」
そう嬉しそうに語る祖母の瞳は私の命が尽きるまで忘れないだろう。
その頃は、祖母の愛情を感じていたと思う。
しかしそれは、きっと愛情ではなく
自己愛、理想、夢、盲目、洗脳。
そんな風な言葉が当てはまるだろう。
そんな幼少期だった。
当時の記憶はほとんどないが、覚えていることが2つある。
一つは、タンスの角に頭をぶつけて大泣きしている私。
父と母が何か言っていたような気はするが、そこまでは覚えていない。
もう一つは祖母の記憶。
祖母は、書道教室の先生だった。
とても厳格で、厳しい人だった。
幼少期、私は左利きだった。
書道教室の先生だった祖母はそれが気に食わなかった。
だから、私を右利きに強制した。
その記憶が嫌な記憶だとは思わない。
ただ、妙な違和感はあった。
それだけだった。
今思えば、それは祖母のエゴと自己愛の象徴だったのかもしれない。
最近は、そんなことをふとした時に思う。
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