第14話・第一回イベント戦:各々の終わりと始まり

 お金が手に入り、国として機能しそうな新ブリテン国。少し休んでいるブリテンのプレイヤー以外の者達は荒れていた。


「やっっっっと終わったぁぁぁぁ」


 バスタパスタは結局特攻作戦をする羽目になり、それならさっさと任せればいいものをと文句を隠さない。仲間でありギルマスのドワーフ。『素敵ステーキ』はしょうがないという。


「実際わしらのポイントは高めだからなあ。後で文句言う奴もいる」


「しょうがないだろ。前進しながらポスモンスターのHP削ってんだ。貢献度は入る」


「女神があとから説明してくれたけど、王族把握してたならもう少しサポートして欲しかったよね」


 神殿に行って回復魔法を授かったエルフ薬師の『スイーツポテト』の言葉にそれなと思う。連携が結局うまくいかず、門が崩された。


「だいぶ壊されたし、被害が少ないのは即断即決したブリテン組だな」


「あそこは指揮していたのはアーサーというブリテン兎プレイヤーだからなあ」


「あと人魚は陸行動弱いから、突撃するならアーサーさんしかいないだろうし」


「おかげでトップ盗られてぶーたれて、彼奴ら俺らよりレベル低いのに、なんで突破できると思ってんだか」


「やめておけ、炎上するぞ」


「けっ」


 ともかくクランの方針を決める。


「ブリテン目指すぞ」


 バスタパスタの言葉にクラン『戦闘食堂』の皆は頷きあう。


「それしかないよね」


「だな」


「やっとお荷物から解放される………」


「結局図書館で働いて会員になれなかったなお前」


「魔法ビルドに組んでるのに魔法が無くて辛い」


 魔法使い候補『ピリ辛サラダ』はやっと魔法を覚える目星が付くと安堵する。まだ道は見つかってないが、本格的に移動して探す気だ。


 他にも魔法目的だったりして向かうだろうなと思う中、まずは紋章を受け取ってからか?と思ったが、バスタパスタが別にいいだろうといった。


「どうせアーサーんとこなら全部選べるんだから、アーサーとこで並んでも良いから受け取ればいい」


「それもそうじゃのう」


「いまからでも出発遅れるだけだしね」


「それじゃ移動するよ」


 これで『戦闘食堂』は、国がプレイヤーに課した借金返済というイベントを回避することができた。王国プレイヤーは全員が激怒して出ていくのだが後の話。


 ドワーフ国は宴会をしているが、結構荒れているところもある中で、一人のドワーフがプレイヤーに金を渡していた。


「これでお前さんらで一番安全な国に護衛してくれ」


「安全って、ここも安全だろ?」


「デリカシーが無い、連携もしない、壊れても直せばいいとかいって酒盛りする国はこりこりじゃわい」


 仕事はあるだろうが、今回の一軒でぐうたらな面を見て愛想をつかした者は何人もいる。ちょうどドワーフの職人が頼んでいる冒険者プレイヤー達もその一人だ。


 移動するならどこがいいか話し合い、ブリテン王国になると伝える。


「いま情報でブリテン兎のアーサーって奴が、女神様から渡される報酬蹴って、国庫金貯めて運用するらしいんだ」


「マジか? 確かお前さんらはスキルやアイテムを女神様から渡される、なら安い性能でも家宝ものだぞ」


「マジだよ。これで国として機能するはずだから移動する奴はかなりいるぞ」


「ちゃんとした国でわしのような頑固者も受け入れてくれるならブリテン兎の国でもいい。護衛頼む」


 こうして彼らも移動を開始。まずはエルフ国に出向き、探すことになると説明しながらドワーフの名匠『ドン・マスタ』は新天地へと向かう。


 エルフ国はといえば、普通にやり取りしていた。プレイヤーがいの一番で紋章を受け取れて、効果を他の人達と共有しているところ。


「緑の紋章は敏捷アップ、風耐性獲得。生産力アップらしいよ」


「物作りの紋章か。黄色はどんなんだろう?」


「ああ物作りだけど鍛冶は無いらしいから、黄色は鍛冶特化っぽい」


「なるほど」


「会長どうしますか?もう移動します?」


「一応王家の方々に連絡してからブリテンに移動します。今回の件で場所が分かれば良いけど」


「木々薙ぎ払われているから見つけやすいと思うけど」


 彼ら『モフモフ会』というクランは、テイマークランである。キャラクターの性能を上げつつ、従魔術スキルを確保してテイムしたいと集まった。


 リーダーである会長『メルル』はそれじゃ、一言王家に伝えて移動しますと宣言して、移動を開始。まずはシープウルフを確保したいと頑張るのであった。


 人魚王国は深海の中で瓦礫の山になり、まともだった王家の者達は愕然とした。


「なにが、なにがあったんじゃ」


 深海の王家は長男にすべてを託して、探索隊を結成して周りを調べていた。いずれ来る厄災のことや、未来の王である長男にすべてを託して。


 そして知った。長男全然話を聞いていなかったと!


「………」


 開いた口が塞がらない。確かにプレイヤーについては嫌悪感を持っていたが、王族なら隠せと言っておいた。時には苦渋を飲むのも仕方ないと伝えた。


 潔癖症であった長男。人魚以外信用しない。自分達だけが生き残る発案をしていた。反対する意見は無かった。深海の中では他の種族の助けなぞこない。


 だからこそ、戦力として人魚プレイヤーはよく考えて使えと伝えた。まさか奴隷と思っていたら言う事聞かず、キレて追い出したとは。


「託したのは、間違いだった………」


 女神の神託も無くなり、王族は瓦礫の山の前で嘆き悲しむのであった。

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