墨塗りの呪い
憑弥山イタク
はしがき
愚人たる軍人故に
軽々しくも、御国の為にと身命をば擲ち。簡素たる装甲さえも己の死場とし、一つ一つ、一人一人、次から次へと海蘊へと還らん。
若者共の身命とて、大人にしてみれば風前の灯火につき、容易く消え、また新たなる火を灯しけん。
如何にして散り逝き、如何にして身命を賭し、如何なる痛みを知り、如何な想いを叫んだものか。命の灯火をば眺めんが為、燭台の前に立ちし者共には、到底理解など出来る筈もなかろうに。
何たる愚行。故に米兵とて、若者咲かせし大輪をば、気狂いの所業、或いは火中の蝿と揶揄しけり。外つ國の者共にさえ愚行と評された暁には、我等帝国軍人とは御国の恥へと成り下がる。
御国の為に死ねよとて。其れ即ち、身命撃鉄を以て叩きし、悪逆非道の至りである。
米兵即ち鬼畜と呼びし、愚図なる日本国の者共よ。果たして鏡に映りし己の形相をば鑑みし頃、其処へ映るは人なる形相であろうか。
人類史とは争いの歴史にて然り。
斯く云う私とて愚人の端くれ。赦し給えなど、云える筈も無し。
また明日にも、私は若き兵へ、御国の為と云う名目をば盾にし、最低なる指示をばせしむる也。日毎に愚人と比肩し、私もいつしか、揶揄される側へと身を落さん。
願わくば、若き者共よ。特攻命じし此の私をば恨みて、敵国の一人とて、決して恨むこと無かれ。
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