第21話 採取クエストは丁寧に

「まずは食料を揃えますか?」


「うーん、食べていくでもいいけど、どうする?」


「確かに、持ち物になるのも嫌ですね。でしたら、食べていきましょうか」


「何がいいかな?」


「沢山食べて動けなくなっては、元も子もないので、軽食にしましょう」


「了解」


 俺達は王都にあるサンドウィッチを買いつつ、薬草のある森へと向かった。


 前まではモンスターが居たらしいのだが、既に狩り尽くされたらしい。


「モンスターを倒した時に出てくる魔石を売った方がお金になるんですね。危険ですが、見極めれば、楽に稼げますもんね」


「だね。Fランクのモンスターとかだと本当に弱いからね」


 Fランクに該当するのは、ほぼ無害なスライムが主だ。


 もちろん、無害とはいえ、増えすぎれば食料を求めて畑を荒らすので、完全無害ではない。


「薬草というのは見た事はありますが、間違えることも多いらしいですね。ナガトさんはどうですか?」


「俺はリベルタス領の時に薬草採取はしてたよ。ポーション作りの材料集めとかで」


「なるほど、それなら安心出来ます。私はしたことが無いので、教えてください」


「うん、結構見分け出来ないからねぇ...見た目雑草だし」


「そこまで言いますか」


「でもさ、見た目雑草じゃない?」


「まぁ、否定はしません」


 薬草と言っているが、結局は草である。


 正直、そこまで見分けがつくものじゃないし、保存方法も面倒くさい。


 やらない人が多いのも納得の理由だ。


「ギルドの指定ではここでしょうか?」


「だね。他にもあるけど近いのはここらしいね」


「では、探しましょうか」


「おっけーい。ってここめっちゃあるじゃん」


「よく見るとこれも薬草ですね」


「あ、それ雑草」


「...聞かなかったことにしてください」


 アリアさんは、顔を真っ赤にして、拾い上げた雑草を地面に戻しだした。


 その様子が面白すぎて、少しの間、目を合わせられなかったが、とりあえず、薬草採取を開始した。


「薬草多すぎて動かなくていいの楽...」


「ですね。本当に雑草を刈っている気分です」


「どうする?なにか話す?」


「ですね。じゃあ、明日の事とかどうですか?」


「あー、いいね。休みだしなんかするかな」


 俺は明日のことを話しながら、薬草を採取し、切り口に水魔法で生け花的な感じにする。


 ついでに魔力を流しておいて、効力をキープ。


 こうしないと薬草がしなだれてしまう。


 そういえば、アリアさんはどうしているだろうか?


「アリアさん、そっちはどう?」


「結構集まりましたね」


「おー、それは良かった...って、アリアさん。水魔法かけないと」


「え?どういう事ですか?」


「ほら、最初に取った薬草あるでしょ?それがしなだれてきてるんだよ」


「それが普通では?見本を見せてもらいましたが、これくらいでしたよ?」


「ん、ほら」


 俺は自分が取った薬草を見せた。


 同じくらいの時間が経っても、新鮮なままの薬草。


 それに対して、アリアさんはかなり驚いた様子だった。


「ここまで鮮度を保てるもの何ですか?」


「まぁ、一応?水魔法を切り口のところに当て続けて、薬草を生きたままにしておくんだよ。あ、水の温度は低い方がいいよ」


「水魔法の温度調節なんて出来るんですか?」


「ん?一応出来るよ?冷たい水とお湯」


「...それ、凄い事...だと思います?使い所がありませんが」


「え?お風呂すぐに沸かせるよ?」


「だから、魔法は日常生活のために使うものではありません!」


 アリアさんからそうは言われたものの、俺からすれば魔法を使ってダンジョンへー、とかは嫌だ。


 戦うのが好きじゃないし、どうせなら平和に生きていきたい。


「まぁまぁ、落ち着いて」


「誰のせいだと?」


「さぁ?誰のせいでしょう」


「はい」


「これは?」


「水魔法で保存お願いします」


「はーい」


 ちょっと意地悪をし過ぎたようで、アリアさんから薬草を押し付けられてしまった。


 もちろん、これくらいなら問題は無いので、大人しく従おう。


「それにしても、どれだけ集めるんだろう」


「もちろん、ナガトさんが持てなくなるまでです」


「わぁ、それは大変」


 それから1時間ほど採取をし、俺が抱えきれなくなりそうになった為、終了となった。


 とりあえず、持ち続けるのは面倒なので、魔法を使わせてもらおう。


「よし、これでよし」


「水が...浮いてますね」


「うん、下に風魔法で層を作って入れ物みたいにしているんだ。これなら問題ないからね」


「本当に器用ですね。魔法の威力さえあれば、ナガトさんの右に出るものは居ませんよ」


「あはは、威力がダメダメだから出来る事だよ」


「それでも、才能はありますよ。一緒に頑張りましょう」


「うん、頑張るよ」


 俺達は楽しくギルドの受付の場所まで歩いていった。


 行きと同じく他愛もない会話である。


 だが、それが一番楽しい。


「俺、アリアさんに着いてきて良かった。のんびり暮らすだけじゃ、こんなに楽しめなかった」


「私もです。ナガトさんとじゃないとこの環境で過ごせません。ありがとうございます」


「お互い様だね。さ!目指せ、Aクラス!」


「はい!」

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