第17話 頼っていいよ
「それで、あれはなんだったのですか?」
「えっと、マナポーションが作れなくて、それでも、どうにかアリアさんの力になりたいと思った結果?」
「気持ちは本当に嬉しいのですが、そうではなくて、どうやって作ったのですか?」
「えっと、飴を作って、飴の強度を上げて、その中に魔力を込めて、唾液で飴が溶けるようにした」
「なるほど、強引なやり方ですが、魔力回復に関しては問題ありませんし...よくそんなものを作れましたね」
「まぁ...ただマナポーションが作れなかっただけなんだけどね...」
本当にこの一言に尽きる。
マナポーションの作り方は分かったものの、魔力の流し方など、未だに分からない点は多い。
その為、この回復の仕方にした。
しかし、燃費自体はかなり悪い。
自分の魔力を貯めとくだけなので、作れる数に、制限がある...あれ?
(今日食べさせた飴で、アリアさんの魔力は全回復...というか、過回復した...俺の魔力総量はシンシアも言っていた通り少ない...)
「ま、アリアさんが使えるならいいか」
「ナガトさんは使えないのですか?」
「使えるけど、あんまり回復しないんだよね。まぁ、魔力が減るってことあんまりないから大丈夫だけど」
「え?」
「どうしたの?」
「それだと、私の魔力量よりもナガトさんの魔力量の方が多い事になりますよ?それに、魔力が減らないんですか?」
「魔力量は分からないけど、魔力はほとんど減らない...使ったらすぐに自然回復して満タンになるんだよね」
補助魔法もゼロエアも、魔力を消費してはいるのだが、自然回復する少しの魔力で補填できるものだった。
MP1しか使わないお得技的な感覚で打てる。
しかし、アリアさんは信じられないようなものを見る目で、俺の事を見つめていた。
「それ、凄い事ですよ。永遠と魔法を撃ち続けられるなら、消耗戦で圧倒的な結果を残せます。魔力量が少なくても、それであれば、問題なんてありませんよ...ナガトさんは、特別な人ですね」
「あー、そっか。魔力尽きるまで撃ち続けたら勝てるのか...目立たない?」
「あ...確かに」
「ピンチの時だけ、そうする事にしようか。目を付けられると自分達より上の人から叩かれるわけだし」
「ですね。過剰な力は見せないに限ります」
うん、やっぱり派手に目立つのは止めた方がいいらしい。
俺も目立つタイプじゃないし、全く問題はない。
これがAクラスならば、力を誇示しても良いのかもしれないが、シンシアみたいなのが居てもおかしくない。
バトルジャンキーはどの世界でもいる。
「結局...ナガトさんに頼りっぱなしですね」
「どしたの?」
「いえ、部屋の掃除やお料理、その他多くの事をナガトさんはしてくれますが...私は何も出来ていないなと」
「そう?俺に色々教えてくれるし、魔法の練習もしてるでしょ?」
「まだ学園で戦ったのは2回ですが、私は何も出来ませんでした」
こんな弱気なアリアさんは珍しい...と思う。
頼ってくる時に、弱気...というか、申し訳なさそうにはしているけど、大抵こういう落ち込み方はしない。
なんというか、存在意義を失っているような感じだった。
「それを言ったら、俺もでしょ」
「ですが、それ以外も考えたら...」
「強い相手とばかりだもん。仕方ないよ。ほら、同じ伯爵家相手なら、アリアさんが1番強いよ」
「でも、私は!」
涙を流して、大きな声を出したアリアさんを俺は抱きしめていた。
あの日、初めて相談してきた日があった。
その時もずっと悩みこんで、やっと言えた...みたいな感じだった。
今回もそうなんだと思う。
今回はいつも相談出来ていた俺には、頼れない状況だった。
「大丈夫だよ、アリアさん。アリアさんはまだ子供なんだ。頼りたい時は頼ればいい。アリアさんが一人で立ち上がれるようになるまで、ずっと隣に居るよ」
「.....離れないで.......くれますか?」
「うん、いつでも不安になったらこうするよ。落ち着くまで、立ち直れるまで」
俺はアリアさんの頭をぽんぽんと優しく叩いていく。
落ち着けるように、ゆっくりと一定の感覚で...そうしていれば、少しづつ、アリアさんも落ち着いてきていた。
「...ありがとうございます」
「もう大丈夫なの?」
「はい、今日は大丈夫です。でも、もし、また...私が落ち込んだら、こうしてくれますか?」
「うん、もちろんだよ。前までと同じ、頼っていいんだよ」
「ありがとうございます...私、ナガトさんに会えて良かったです」
「俺もだよ。さ、明日も早いから寝ちゃおうか」
「はい、おやすみなさい。ナガトさん」
泣いた後だったから、少し目の赤いアリアさんは、俺に微笑みを向けながら、ベッドの方へ向かった。
本当に...立ち直りが早くて、尊敬できる。
悔しくて、悔しくて、たまらなかったんだろうけど、まだまだ成長期の子供。
ちゃんと見守らないと。
「そろそろ布団買わないとじゃないかなぁ...」
俺はベッドに入りながら、そんな事を考えていた。
俺も男である。現状に色々と思うことはある。
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