近未来、完全自動運転が普及した社会で、主人公はトラックドライバーという職を失う。
大型自動車を運転できるということ以外に目立った特技の無い主人公は、収入の道を断たれるが、彼にはどうしてもそれなりの収入がある仕事が必要だった。
何故なら、彼には命の次と呼べるほど大切にしている往年の名車があったから。
そんなストーリーの短編です。
この作品、根底に人間のロマン主義を感じられます。
古くてエンジンをかけるのも面倒な車を愛する主人公。
自宅に金目の物は置いていないのに、フィギュアをコレクションして生きがいにしている男。
どちらも、その道に詳しくない人間にしてみれば、価値を見出せない趣味ではあるのでしょう。
けれど、合理性のカタマリであるAIが台頭する世の中に於いて、その不合理さは人間らしさの現れとして輝いて見えます。
だからでしょう。ラストでの主人公の新たな職を知ると、ああ、そうだよね、と納得してしまいました。
後味の良いお話です。ご一読を。
うむ、これはよいです。夏目漱一郎さんの贈る、旧車好きのための、男の物語。
何しろ、女性が一切出てきません。車を偏愛する男と、フィギュアを偏愛する男だけです。が、これが心地よい。己の趣味に注ぎ込む情熱が「何もそこまで……」と思いつつも清々しいです。
もちろん一番の見せ場は、カーチェイス。大事なフィギュアを盗まれた友人のために、逃走するアルファイア(現代の最新式)を追跡する70年型ハコスカGTR! (これ都会の話じゃないのか?)と疑問を感じつつ登場する峠道! 池〇さとしかよ!
最後は善行が奏功して、主人公の人生の危機も救われ、みんな幸せ大団円。
割合ニッチな分野の小説で、読み手を選ぶとは思いますが、旧車好きにはクリティカルヒットする、男の子の小説です。
わたくしはお勧めしますよ!