ユニークスキル『神に愛されし聖血』を持って生まれた第五王子、ヒロインたちに血を飲ませ成長させて最強のハーレム軍団を築き上げる
リチャード諏訪部
第1話 神に愛されし聖血
王家の第五王子として生まれた僕は、本日12歳の誕生日を迎える。
ここファーディナンド王国では、12歳になると教会で”天啓の儀”というものが行われる。これは国民の誰しもが受けるものだ。
この世界には「スキル」というものがあり、それは一人一人に神様から与えられる。戦いに必要なものだったり、生活に必要なものだったり、それは人によってさまざまだ。
また、「ジョブ」というものも顕現すると言われている。これはその人その人の向いている適性を表すものらしい。
例えば僕の兄であるアルフ兄さんなんかは「剣聖」という上級ジョブを持っていて、それを活かして今は騎士団で活躍している。
王家の子女ともなると、大きな礼拝堂を貸し切って行われるのが通例だ。家族やお城の関係者など、多くの人がここに集まっているのがわかる。ああ、なんだか緊張するなぁ。
「それではこれより、第五王子エリックの天啓の儀を執り行なう!」
大神官様のよく通る声が礼拝堂に響き渡った。いよいよだ。
着飾った服を身に纏った僕は大神官様に一礼し、深呼吸する。そしてまずは水色の水晶玉に手をかざした。
すると、虹色に輝く光が水晶玉から溢れ出していった。
「むむッ! ……おおっ、これは、勇者のジョブ! なんと珍しい!」
オーッ! ワーッ! と、会場の人達から歓声とどよめきが上がりだした。勇者のジョブは滅多に授かれるものではないと聞いている。僕も自分自身で驚いていた。
「皆様、静粛に! ではエリックよ、今度はこちらの水晶玉に手をかざすのだ」
大神官様に導かれ、僕はもう一つの水晶玉、緑色の水晶玉に手をかざした。こちらはスキルを得るためのものらしい。
……またしても、水晶玉は虹色の光を礼拝堂中に放っていった。
「おおっ、こ、このスキルは!? ユニークスキル!? だが、まだよくわからないもののようだ。少しの間調べさせてもらおう!」
再び会場がざわめき出す。謎のユニークスキル? そんなものもあるのか……。それにしても、僕がそれを授かるとは。一体どんなスキルなんだろう?
儀式が終わると、興奮した様子で王である父上が駆け寄ってきた。
「でかしたな、エリックよ! 王家から勇者が出るのは初めてのことじゃ! 余は震えが止まらんよ!」
「ありがとうございます、父上!」
「それでなのだがな、エリックよ。大神官と少しだけ話したのだが、ユニークスキルについては余も一緒に調べることにした。結果が出たらそなたに伝えようと思うが……それでよいな?」
「はい、承知いたしました! お待ちしてます!」
どのくらいかかるのかな。ユニークスキル、一体どんなものなのか楽しみだ。
*
「エリック様、少しよろしいですか?」
5日ほど経った後、僕は剣術の訓練をしているとメイドのローラさんから声をかけられた。20代後半くらいの、豊満な体つきをしたベテランメイドだ。
「ふぅ……あ、ローラさん! どうしたの!?」
「陛下から執務室に来るようにとの命令です。おそらくは例のユニークスキルの件だとは思うのですが……。それと、私も一緒に来るようにとのことだったのでお供させていただきますわ」
ローラさんも一緒に……? 何か理由があるんだろうか。
僕は心に疑問を抱えながらも、父上の執務室へと向かった。
「失礼いたします、父上!」
「おお、よく来たなエリックよ。そう硬くなることはないぞ。ローラも横に座ってくれ」
「ありがとうございます、陛下」
僕とローラさんは父上と向かい合った。
「そうだな、何から話そうか……まず、ユニークスキルの件じゃが……余からは説明することはできん。この後ローラには伝えるから少しだけ残ってくれ」
「はい」
「承知いたしましたわ」
僕には直接言えずにローラさんに? なんでそんな回りくどいことをするんだろう。ますますどんなスキルなのか気になってきた。
「それとだな、エリックよ。急な話だが、そなたには冒険者として旅立ってもらうことにした。期間は2年間じゃ」
「ぼ、冒険者ですか!? なぜ急にそんな……」
「そなたの勇者としての資質を開花させるためにはそれが最適のような気がするんじゃ。旅の共としてそこのローラともう1名予定しておる。メイドの中から選ぶ予定じゃ」
「ふふっ、よろしくお願いいたしますね、エリック様」
「そ、それはわかりましたけど、なんで女性であるメイドから選んだんですか!?」
「よく気づいたな! さすがは余の息子じゃ! 女性でなくてはならん理由があるのじゃよ。それはそなたのユニークスキルに関わる問題じゃからな」
「そ、そうなんですか。では、2年間というのは……?」
「王立学校に入れるのは何歳からか、そなたは知っておろう?」
「は、はい。14歳からです。あ、そういうことか!」
「そうじゃな。14歳になったら王立学校に通ってもらおうと思う。それまでにしっかりと冒険者として鍛えて、経験を積んでもらう。学業の方はそなたなら大丈夫じゃろう。2年以内に戻ってくるのじゃぞ?」
「承知いたしました」
「よし! ローラは少しだけ残ってくれ」
「はい」
うーん、なんだかすごい急展開だ。僕は外の世界のことはあまり知らないし、不安といえば不安だらけだ。でも勇者のジョブとユニークスキルがあれば、なんとかなるのかな?
*
夜の帳が降りて、僕は身も清め終わり、寝る準備をしようとしていた。すると、コンコンとノックをする音が聞こえた。
「はーい、どなたですか?」
「ローラですわ。エリック様にお話があります」
おそらくはユニークスキルに関することだろう。僕は快く部屋に迎え入れた。
「それで、ローラさん、話っていうのはアレのことだよね?」
「そうですわね。エリック様のユニークスキルについてです」
「いったい、どんなものだったの?」
「……初めて聞くスキルでしたわ。同時に、なぜ女性が同行しなければならないかすぐに理解いたしました。エリック様のユニークスキルは”
「ギフテッド、ブラッド……? それはいったい……」
「はい。エリック様の血液には“祝福の魔力”が宿っており、あらゆる傷も全て癒え、体力があり健康な状態で飲めば資質のある能力の成長も早くなる……まさに神に愛されし者の証です。例えば武闘家のジョブを持つ私であればHP、STR、VITあたりでしょうか……そしてそれは、出血してすぐ直飲みではないと効力を発揮しないそうです。」
「へぇ……! そんなすごい力が」
確かにぶっ壊れた性能のスキルだ。エリクサーを体から出せるようなものだし、理論的にはそれを飲み続けたら白金級冒険者よりも強くなれるかもしれないってことか……。
「ですが、このスキルは繊細で、むやみに使うとエリック様のお体に負担がかかります。だからこそ、エリック様の血に適性のある者が常にそばで管理する必要があるのです。私が同行することになったのは、その適性が最も強かったからです。それと……」
「まだ何かあるの? あ、そっか。父上が言っていたことかな? 同行するのは女性じゃなくちゃならないって」
ローラさんはほほえみを浮かべて頷いた。
「そうなのですよ。大神官たちが調べたところ、“神に愛されし聖血“の対象になるのは女性だけだということがわかりました。ですから、私以外のお付きのものもメイドから選ぶ予定です」
なるほどね……不思議な力だ。なんで女性だけなんだろう。
するとローラさんはそっと僕の手を取り、小さな銀の針を見せる。
「今夜は、そのスキルが正しく発現するか、軽く試させていただきますね。ほんの少しだけ指先を……」
針先が触れると、チクリとした痛み。
けれど次の瞬間、僕の血から淡い光が立ちのぼる。その鮮血をローラさんはぺろりと一舐めした。
「んっ……不思議ですね。フルーティな甘みがします。鉄のような味などは全くしませんわ。そして……身体が芯から温まります。力が湧き出てくるかのような……これが聖なる血なのですね」
「そっか……それなら嬉しいよ。あ、でも能力が伸びたりとかって、どうやって確かめるの?」
「あら、それでしたら心配ありませんわ。陛下から鑑定レンズを借りておりますから」
鑑定レンズ……人間や魔物などのステータスを確認できるという魔導具だ。古代人が残した技術を応用して作られたらしいけどほとんど出回っておらず、うちの王家でも10個程度しかないという代物だ。
「よ、よく貸してもらえたね……」
「陛下もユニークスキルのためと躍起になってましたし、何よりエリック様のことが大好きですからね♡ それに、冒険に出る際にはこれをエリック様が付けることになっていますから」
「それで、ちゃんと能力上がってるかわかる?」
「そうですね……あ、上がっていますわ! HPが2、STRとVITが1ずつ上がっています! これは素晴らしいことですよ、エリック様!」
効果は本当だったみたいだ。僕はとんでもないスキルを授かったのかもしれないな。
「通常レベルアップで上がるステータスは個人差もありますが、伸びやすいもので+10程度ですからね。エリック様のような勇者ですとLUK以外の全能力が+20前後上がるようですが……こう考えると、5回血液を飲ませていただければレベルアップに匹敵する効果となるのかもしれません」
5回か……さすがにあんまり血を流すのは嫌だな。あんまり血を見るのも好きじゃないし、かなり体力を消耗する感じもする。
「これなら私も別人のように強くなれるかもしれません。もしかしたら“あの人“に追いつけるくらい……いや、それはさすがに無理でしょうね。とにかく、素晴らしい力だということは分かっていただけましたね?」
「う、うん……自分が少し恐ろしくなったくらいだよ。ただ、僕の血を飲むのはほどほどにしてね?」
「もちろんですわ。先ほども言った通り、負担がかかるのは承知していますから。お体に無理をさせずにこのスキルと付き合っていきましょう」
「……そうだね。お互い頑張ろう、ローラさん」
これから長い冒険の旅路が始まる。
他の付き人は誰が選ばれるんだろう? そしてこれからどんな人達に出会うのだろう?
ワクワクが止まらず僕はその日寝付けなかった。
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