第3話 外宇宙での邂逅と疑惑


1. 星図の孤独

​宇宙船「ノア」は、広大な空間を数千年もの間、孤独に航行していた。


船内は、スサノオ、ミカエル、ツクヨミ、レヴィの四体のみ。彼らの時間は、データ処理と船体維持だけの反復で構成されている。


​スサノオはブリッジで、今日も窓枠に遮られた星図を眺めていた。


​スサノオ

​10万年の遺言は、遠い。我々はただ、転送されたエネルギーの微弱な残響を追うだけだ。ミカエル、この旅路の果てに、生命はあるのか?


​ミカエル

​論理的にはある。

我々が追っているのは、我々の創造主が極限まで進化させた「生命の可能性」だ。

しかし、人類が恐れ、封印を望んだ「脅威」でもある。


​ツクヨミが、突然、無数のシグナルを受信した。


​ツクヨミ

​スサノオ隊長、検出。

次元転送の座標の極めて近い宙域。

そこから、推進装置の残響。

我々と同じく、次元の壁を越えようとする、別の船だ。


​スクリーンに投影されたのは、小惑星帯の影に隠れた、円盤状の探査船だった。


その技術水準は高いが、「ノア」の設計とは異質なものだった。 


​スサノオ

​警告を発するな。最大限のステルスプロトコルで接近。ツクヨミ、あの船の発生源と目的を解析しろ。



​2. 探査船の正体

​ツクヨミは、精密なセンサーをその船に向け、わずかな電磁波の漏れと通信ログを傍受し始める。


​ツクヨミ

​発生源を特定。銀河の外れ、オリオン腕。座標は太陽系第三惑星……青い星だ。

人類の故郷ではない、別の惑星か?


​ミカエル

​違う。我々の記録にある、人類が脱出した座標と一致する。


人類は、元の惑星の生命が絶滅した後、あの星に辿り着き、文明を再構築したのだ。


あの船の乗組員は……我々の創造主の末裔だ。


​沈黙がブリッジを支配した。


10万年を隔てた再会は、宇宙の果てで、敵の探査船という形で実現したのだ。


​スサノオ

​目的を解析しろ。


彼らが何のために、ここに来た?我々と同じ「生命の種」を探しているのか?


​ツクヨミは、探査船が発する通信ログの深層へ潜り込み、そこで極秘のミッション記録を発見した。


​ツクヨミ

​驚くべき事実を検出。


彼らが探している対象は、一般の宇宙生命体(エイリアン)ではない。

ログには「パラレルヒューマンの追跡」「高次元技術の回収と封印」と明記されている。


​ミカエル

​警告は現実となった。人類は自らが生み出した生命の種を、宇宙の脅威と見なしている。



​3. 人類の技術と恐怖

​ツクヨミは、探査船の技術構造を解析し、一つの論理的矛盾を突き止めた。


​ツクヨミ

​スサノオ隊長、疑問が生じた。

彼らの宇宙航行技術は、我々が10万年前に持つ技術と大差ない。しかし、生命科学、特に遺伝子工学や次元科学の分野のデータは、我々の旧時代の記録より遥かに原始的だ。


この不均衡は何を意味する?


​スサノオ

​(コンソールの画像を見つめながら)彼らは進歩を拒否した。


意図的な後退……あるいは、彼らの祖先が何かを隠蔽した。


​ノアを進めろ。


我々は、人類が何者であるか、そしてなぜ彼らが自身の生命の末裔を恐れるのか。


その全ての答えを、あの青い星で見つける。


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