#25 ハーレクイン
どうなってやがる⁉
このダンジョン……まるで方向感が効かねえ⁉
何度も同じ場所を逃げ回りながら佐倉は息を切らしていた。
どの方角に走っても、最終的には同じ噴水の前に来てしてまうのだ。
背後からは単調な動きでガーディアンが追い続けてくる。
それで否応なく逃げるのだが、きりが無い。
「くそが⁉ こっちの体力には限度ってもんがあんだよ‼」
荒い息を吐きながら佐倉が叫ぶとリルが地面を指さして言う。
「ご主人! また罠です! 前方五時の方角!」
「意味わかってねえだろ⁉ 五時は斜め後ろのことだよ!」
「じゃあ三時!」
「三時は右真横だ!」
その時佐倉の足元で石畳がガコン……と音を立てた。
「え⁉ ここ⁉ じゃなかった……だ、だから言ったんですぅ(´;ω;`)」
「嘘つけ! 分かってなかっただろ⁉ うおっ⁉」
佐倉が慌ててその場を飛び退くと、無数の矢が石畳に当たって火花を散らした。
無限ループに追っ手。そしてこの罠である。
罠の精度は幸い高くなく、発動までのタイムラグがあるので避けるのは不可能ではない。
それでも万が一罠にかかれば、追っ手から逃走するのは不可能になるだろう。
「これがハーレクインの庭か……厄介なうえに、目的地もクリア条件もわかんねえんじゃ打つ手がねえ……!」
「だいたいダンジョンはボスの討伐がクリア条件ですよ? そんなことも知らずによくノコノコ入って来たもんですね!」
「てめえはお荷物にしかなってねえんだから、せめて慎ましくしろや⁉」
その時だった。
佐倉は鋭い殺気を感じて視線を上げる。
荒れ果てた庭園に生える曲がりくねった木の上に一人の少女が腰かけ、怪しい笑みを浮かべていた。
「あはぁ? やっと気づいた。 ようこそ僕の庭へ」
ミニスカゴスロリ少女は、見せつけるように白い足を伸ばし、真っ赤な唇に指を這わす。
目の下にはクマともアイシャドウとも見分けがつかない黒い影が張り付いている。
紺のリボンでツインテールにした髪は紫紺に輝き、整った顔立ちといいプロポーションといい美しさは申し分ない。
しかしその声は、どこからどう聞いても男のそれで、それもオカマの粘着質を帯びていた。
「うふぅ? ゾクゾクするでしょ? アタシの生おみ足を見て、フル●起待ったなしって感じでしょ?」
違う意味で佐倉の背中に悪寒が走る。
こいつ……ヤバいヤツだ……!
そんな佐倉の首に抱き着きながら、リルが威勢よく声を上げた。
「ふんだ! ご主人をユーワクしようって腹ですね⁉ リルも負けてないんだから⁉ スキル……‼ 発動……‼」
光がリルを包み、ミニスカニーハイの絶対領域が姿を現す。
「見せればいいってもんじゃねえんだよ! このビッチモドキが⁉」
「おだまんなさいロリビッチ‼ どっちがそのお兄さんをフル勃●させるか、尋常に勝負よ⁉」
狂気満つ……それってこういうことなのか……⁉
間違いなく充満し始めた狂気の気配に、佐倉はぶるりと身体を震わせるのだった。
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