#05 探せ! 三枚刃!

 

 目が覚めるとそこは大河の浅瀬だった。

 

 いつの間にか夜は明けて、辺りには清浄な光の気配が満ちている。

 

「た、助かったのか……?」

 

 身体を確認するも目立った傷は無い。

 

「骨も内臓も無事……奇跡だ……」

 

 その時だった。

 

 リルが呻き声をあげ、同時にそれは男の身体にも異常を知らせる。

 

 まさか……ガキが怪我を……?

 

「お、おい! 大丈夫か⁉ どこか怪我したのか⁉」

 

「ち……」

 

「血⁉ どこだ見せろ! てめえが死んだら俺も死ぬんだぞ⁉」

 

 必死にリルを確認しようとする佐倉だったが、顔にへばりついたリルの全身を確認することは出来なかった。

 

 しかし佐倉は確信する。自身の腹に感じる痛み。

 

 どこか内臓に痛手を……

 

「おい! 何とか言え!」

 

「うんち……」

 

 空気が凍る。

 

 思考が猛スピードで駆け巡る。

 

 男の顔が青褪める。

 

「てめえまさかぁあああああ⁉」

 

「ご主人……も、漏れそうです……ここでしても?」

 

「駄ぁあああ目に決まってんだろうがぁあああああ‼‼‼」

 

「う……怒鳴り声が下腹に……」

 

「待て、待ってくれ! 何とかする……! 剃り残し・・・・の状態異常はどうやって解除できる⁉」

 

「ステータス画面から……アイテムボックスを……」

 

「よし……‼ 分かった‼ ステータス、おーーーぷんっ☆」

 

「ウインクを忘れないで……」

 

 

 ばちこーん☆

 

 恥ずかしがっている場合ではない。

 

 死線をくぐった後に、顔面ウン爆なんてあってたまるか‼

 

 死線をくぐってなくても無しだ‼

 

 って、どこにあんだよ⁉ アイテムボックス‼

 

 アイテムボックスを探すうちに10カウントが切れて画面は消えてしまった。

 

「なんだこのクソ仕様‼ アイテムボックスねえじゃねえか⁉」

 

「画面の右下に……」

 

「くそクソ糞っ……!」

 

「そんなに糞を呼ばないで……」

 

「ぬああああああ! ステータス、おーーーぷんっ☆」

 

 ばちこーん☆

 

「あった! なんだこの小せえ字は⁉ 闇金の但し書きか⁉」

 

 アイテムボックスに触れると、佐倉の所持するアイテムが一覧で表示された。

 

 カウントはやはり10秒。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 アイテムボックス

 

 ・血濡れのマルボロ(呪)

 ・命のジッポ(SSR)

 ・トカレフの弾(ゴミ)

 ・破れた高級スーツ(E)

 ・破れた高級シャツ(E)

 ・濡れて臭い革靴(E)

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「見るまでもねえじゃねえかよぉおおお⁉」

 

「思い出しました……三枚刃! 〝深剃り三枚刃〟があれば解除できるはずです……うぅ……ちょっとおならを出して圧を軽減しても……?」

 

「却下だ‼ その三枚刃はどこにある⁉」

 

「町のドラッグストアで買えるはずです……」

 

 リルは川下を指さして言う。

 

 そこには確かに小さな町が見えた。

 

「よし……! そこまで我慢しろ! 死んでも耐えろ! 絶対だぞ⁉」

 

「ど、努力しますぅうう……」

 

 こうして佐倉はヘトヘトな身体に鞭をうち、街に続く林道を全速で駆けだした。

 

 

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