第2話 バスジャックに噛みついて

 御主人様の腕をひっかいて流血させてしまったニャン吉は、慙愧の念にさいなまれ家を飛び出す。


 家を飛び出したニャン吉は土砂降りの雨の中、バタフライで瀬戸内海を渡って本土へ移動した。


 なにかに導かれるがままバスに乗り込んだニャン吉。彼は、同時にバスジャックと乗り合わせた。

「手を上げろ」などと脅すが、乗客は一斉に中指を立ててバスジャックへ挑発。怒り心頭のバスジャックは銃を乱射する。それが命取りになった。


 弾丸の一発がニャン吉の尻尾を掠めた。この恐るべき猫の尾に弾丸が当たって血が滲んだ。スッと立ち上がった白猫は、虚ろな目でバスジャックを見ながら歩み寄っていく。

「猫は邪魔じゃ!」

『……静かにせえ!』

 ニャン吉はまず弁慶の泣き所へ強烈な水面蹴りを当てた。バスジャックの両足はバギバギっと音を立てて骨が折れた。それもそのはずで、50kgはあるであろう酸素ボンベを天井まで蹴り上げられる脚力があるのだから。


 まさか猫ごときに足の骨を折られるとは思いもよらず、なぜ倒れたのか理解できていないバスジャックの銃を持つ腕にニャン吉、とどめの噛みつき。

「いいいーーたっっ!」

『痛いか! 痛いか! そりゃ痛いじゃろ!』

 バスジャックの腕から血が吹き出し、みるみる辺りを真っ赤に染めていく。


 それからニャン吉は、警察にも乗客にも噛みついて病院送りにした。


 彼はトボトボと歩きながら、血のついた手を見て自分の力の凄まじさを思い知る。

『こりゃ、本気で戦ったらいけんの。皆殺しにしてしまうわ』

 ほとんど無意識にその足で観音にある空港から飛行機に乗るとハイジャックに遭遇。こいつらは、以前関門海峡でしとめたテロ組織である「テロリズム・ハラスメント」の下部組織「空気読無スカイ・ハラスメント」である。もちろん容赦なく血祭りにする。


 アルゼンチンに到着すると、そこでも「テロリズム・ハラスメント」の下部組織「荒野豆腐アース・ハラスメント」を数百人、重体にして病院送り。警察もまとめて病院送り。まさに馬鹿の一つ覚えである。


 ある港へ行き船に乗り込むニャン吉。船に揺られて旅をしているとだんだんと寒くなってきた。最初の頃は気にせず船員の食事をぶんどって食べたり、船員におやつをもらったりしていた。だが、あまりの寒さに何が起きているのか気になり、甲板へ飛び出して周囲を見るとそこは……。


『……はあ!?』

 ブワッと凍りつくような寒風が顔に吹き付け髭が凍りついた。青い空、青い海、そして、真っ白な大地と流氷。


 ニャン吉はその辺の船員のズボンの裾を引っ張った。

『ここはどこや……』

「オー、キャット」

 そこは白銀の世界が広がっていた。


『次回「昭和基地でマーキング」』

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