この話は、全体で、三部作となっています。
最初から、ジックリと読めば、この話の題名にもなっている、「ボタンの掛け違い」の意味が良く、理解出来た筈です。
私は、読む順番を、少し間違えていたようです。
読んでいて、何処までが、事実で、創作なのかは、良く分かりません。
しかし、他の二部作のレビューでも書きましたが、実に、淡々と書いてあり、また、その真に迫った記述に、この私は、語るべき言葉を持っていません。
ただ、ある作家が言っていたように記憶していますが、
「人間は、誰でも、一作は小説を書ける、それは、自分の人生を書く事だ」との言葉が、甦るのです。
この作品の題名の「ボタンの掛け違い」は、この私にも、物凄く当てはまる言葉です。
イヤ、もしかしたら、読者の皆さんにも、大なり小なり、当てはまるのでは無いのでしょうか?
ともかく、少しでも多くの人に、読んで欲しい作品です。
静かな語り口の中に、時代の空気と個人史が丁寧に織り込まれていて、読み進めるほどに厚みが増していく作品だと感じました。
派手な事件や誇張された感情表現に頼らず、仕事、家族、人との距離感といった要素を淡々と積み重ねていくことで、主人公の輪郭が自然に立ち上がってきます。
特に印象的なのは、固有名詞や風景描写の使い方が過剰にならず、「その時代を生きていた感覚」を読者に委ねてくる点です。説明されるのではなく、思い出を隣で聞いているような読後感がありました。
人生の節目や選択が描かれているにもかかわらず、どこか抑制が効いていて、感情を押しつけてこない。その距離感が心地よく、先の展開も自然に追いたくなります。
これから主人公がどんな違和感や決断に向き合っていくのか、続きを楽しみにしています。