母親視点
あの日から数日後。病室にいた男女はつぼみちゃんの部屋に来ていた。
「つぼみちゃんが眠ってからもう一週間も経ったんだね」
「あぁ」
私の夫である堅治はいつもこうだ。けど、今はただ悲しい、虚しい、後悔みたいな色んな負の感情が溢れるばかりだ。
ごめんね、つぼみちゃん。
ガタッ
「つぼみの日記だ」
夫は呟くように言った。そしてただじっと見つめていた。少しずつパラパラとその日記をめくり始めた。そして、私に手渡してきた。
内容は
⚪︎月⚪︎日
今日もママとパパは私を見てくれなかった。
少し寂しいな。
褒めてくれるのは嬉しいんだけど、私を見て言ってはくれない。
私を見て欲しかったな。
⚪︎月⚪︎日
今日はママとパパは「行ってきます」って言ってくれた。
嬉しい。
明日も早く起きよう。
⚪︎月⚪︎日
今日から一ヶ月ママとパパは出張だったみたい。
お手伝いさんが教えてくれた。
お手伝いさんも優しいけど、ママとパパが恋しいな。
⚪︎月⚪︎日
私、末期癌なんだって。
今日、学校で倒れて病院に行ったんだけど、そう言われちゃった。
でもね、ママとパパには心配かけたくないし、悲しまれたくない。
だから、学校の先生と病院の先生にお願いして言わないって約束してくれた。
もう少ししたら家から出て行こうと思う。
そしたら
『そしたら』のところら辺には涙が乾いた跡があった。やっぱり辛かったんだと思う。私にも夫にもきてもらってるお手伝いさんにも言わないなんて。ものすごい覚悟したんだね。ごめんね。
夫がハンカチで頬を撫でた。
気づかなかったけど、涙が出ていたらしい。
つぼみちゃんの日記 @makoto_yuzuki
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