第21話 あきらの焦燥
「……っ、瑞葉!!」
教室の前で、あきらは膝をついた。
瑞葉は倒れている。
目は閉じたまま、まるで深い眠りに落ちているようだった。
けれどその顔は、
苦しそうで——
何かと必死に戦っているように見えた。
「先生!!
瑞葉が……瑞葉が倒れました!!」
声が震えているのが自分でも分かる。
先生と数人の生徒が駆け寄り、
瑞葉の身体を安全な位置へ移動させる。
「保健室を呼んでくる!
あきら、そっちは頼む!」
「ああ……!」
あきらは瑞葉の手をそっと握る。
指先は冷たく、
けれど微かに震えていた。
「……瑞葉……
どこにいるんだよ……」
その瞬間——
あきらの胸が、強く痛んだ。
「っ……!」
呼吸が乱れ、
額に汗が滲む。
(まただ……
さっきと同じ……
胸が……引っ張られるみたいに……)
瑞葉が苦しそうに眉を寄せた。
まるで痛みが“繋がっている”かのようだった。
「あきら!!」
教室の外から、友達が駆けこんできた。
「おい、やばいって……!
ニュース見ろ!」
スマホの画面にはニュース速報が並んでいる。
────────
【速報】
関東全域で“地鳴り”の報告相次ぐ
原因不明の微振動が複数観測点で同時発生
───────
あきらの背筋が震えた。
「……地鳴り……?」
友達が青ざめた顔で言う。
「しかも……
これ、さっき瑞葉ちゃんが倒れた“時間”と
ほぼ同じなんだよ……」
心臓が嫌な音を立てる。
(まさか……
関係してる……?
そんなわけ……いや……)
胸の痛みがさらに強まった。
「っ……瑞葉……!」
あきらは瑞葉の手を握りしめた。
その時だった。
瑞葉の唇が、かすかに動いた。
「……っ……ぁ……」
声にはならない。
けれど確かに、何かを呼んでいる。
(戻ってこい……!
頼む……戻ってきてくれ……!!)
その願いが胸の奥で爆ぜるように響いた瞬間——
——光が弾けた。
瑞葉の指先から、淡い光がこぼれた。
「……っ!?
今……光ったよな……!?」
友達が後ずさる。
あきらは震える声で呟いた。
「瑞葉……
何が起きてるんだよ……
どこに行ったんだよ……」
光はすぐに消えた。
だが、その瞬間——
瑞葉の頬には
**ひとすじの涙** が伝っていた。
あきらの胸が締めつけられる。
「……泣いてる……
誰と……会ってるんだ……?」
その時、ニュースの音声が教室に流れ込む。
────────
【速報】
原因不明の異常揺動が拡大中。
専門家は「大地が悲鳴をあげている可能性」と警告。
────────
あきらは息を呑んだ。
(大地が……悲鳴……?)
胸がまた強く脈打つ。
瑞葉の涙。
光。
胸の痛み。
地鳴り。
悲鳴。
全部がひとつの線で繋がる気がした。
あきらは瑞葉の手を握りしめたまま、
必死に叫ぶ。
「瑞葉……!
どこにいてもいい……
どこにいてもいいから……
戻ってこい……!!」
その瞬間、
瑞葉の指がかすかに動いた。
あきらの胸も、
同じ場所が熱く震えた。
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