初恋の喪失を描いた作品でありながら、ただの恋愛小説には収まらない深みがある物語でした。
帰国子女として異国で過ごした時間、父との根深い確執、支えてくれた人々の温もり、そして心の奥に残り続ける璃子への想い。そのすべてが、当時の音楽と結びつきながら語られていく構成がとても印象的です。曲名やアーティスト名が単なる時代背景ではなく、主人公が言葉にできなかった感情を代弁するように響いてくる。音楽が記憶を呼び起こし、後悔を照らし出し、過去と現在をつないでいくところに、この作品ならではの強い魅力を感じました。
特に胸に残ったのは、たった一言の「ボタンの掛け違い」が、二人の関係だけでなく、その後の人生にまで、消えない痼として残り続けるところです。若さゆえの不器用さ、嫉妬、自己肯定感の低さ、そして本当は大切にしたかったのに傷つけてしまった後悔。その痛みが、長い年月を経た語りによって、より切実に伝わってきました。
璃子との思い出は甘く美しいだけではなく、触れられなかった距離そのものが物語の核になっているように感じます。だからこそ、読後には失われた恋の切なさだけでなく、人が過去とどう向き合いながら生きていくのかという余韻が残りました。
音楽、青春、初恋、家族との確執、そして人生の後悔。そうしたものが静かに重なり合う、読み応えのある作品です。
ウーン、何と表現して言いのだろう……。
この作品ですが、多分、皆さんも、この私にも、何処かに通じる所の有る、青春時代の、淡い話なのだと思います。
それ以上に、この話には、嫌味が全く無いのです。
自慢話でも無く、ただ、青春時代の思い出を、淡々と、それでいて、極、丁寧に描いていて、読んでいて、心が洗われるとでもしか、表現のしようが有りません。
このような小説は、カクヨムでも、ほとんど無いのです。
普段は、「変態小説」しか書いていない、この私には、この話は余りに純粋過ぎるのです。
ですので、この私には、これ以上の、言葉が、出て来ません。
こう言うレビューは、多分、初めてでは無いのかと、思います。
イヤ、多分、極小数の人らにも、書いた記憶が有るような……。
とまれ、この話は、捨てがたい作品です。
それだけ言って、レビューを、させていただきます。
小学校を卒業した僕と璃子は、中学、高校と同じ学舎に通った。
けれど、再び同じクラスになることはなかった。
廊下ですれ違うたび、僕は無意識に璃子の横顔を探している。
ただ、彼女には他校に通うかつての同級生と付き合っている噂があった。
だから僕にとって、いつだって璃子は高嶺の花だった。
中学一年の秋、運動会に備えて学年競技のフォーク・ダンスを練習する機会が訪れる。
ワックスの匂いがこもる体育館に、ぎこちないステップの音と、あちこちから漏れる笑い声が響く。
男女が一列に並び、順番に相手を変えていく中で、璃子が僕の目の前に現れた。
♫ You are here and warm, but I could look away and you’d be gone